2014年3月20日、静岡市議会は2月定例会の最終日で本会議を開き市長提案の125件の議案を自民、公明、新政会(民主含む)、維新などの賛成により成立しました。日本共産党市議団は鈴木せつこ市議が反対討論に立ちました。(写真は反対討論に立つ鈴木せつこ市議)
私は、日本共産党市会議員団を代表し、議題となりました125件の議案のうち、以下の84件の議案に対し、反対討論を行います。
議案第25号、26年度一般会計予算、31号から33号、38号から42号、44号、47号、49号、51号から53号、55号から77号、84号、85号、87号から115号、117号から120号、122号、123号、126号、129号から133号、137号、138号、149号についてです。まず始めに、市長の施政方針について、評価を述べさせていただきます。
国は、4月から消費税率引き上げで、史上空前の大増税を国民に押し付け、社会保障の解体、暮らし関連予算を軒並み削減しようとしています。市長が景気回復の兆しと評価したアベノミクスでは、暮らしと経済はますます破綻しますが、本市は「世界に輝く静岡の実現」などと、足元の現実とかけ離れた目線で、市民の深刻な暮らしの実態を直視せずに、国と同様に負担増を押し付けようとし、住民の暮らしの厳しさ、苦しみを思いやる姿勢が欠落しています。
それでは以下、反対の理由を申し上げます。
第1に、収入減で暮らしにあえぐ市民に更なる負担を押し付けることです。1点目に消費税増税に伴う使用料、利用料の引き上げは、文化・スポーツ・暮らし関連の71の施設・事業に及びます。消費税率引き上げを公共施設利用料に転嫁しない自治体は、県内10市町あり「施設の活用促進と住民サービス向上のため」と説明しています。本市でも住民本位の判断が必要です。また、健康づくり・生きがいづくりにも貢献しているスポーツ施設・高齢者施設の負担増は、楽しみを奪うに等しい行為です。 特に、動物園、科学館、登呂博物館入場の子どもを、市内・市外で区別し有料にすることは、158万圏域とか、世界に羽ばたく静岡とか、言う割にはあまりに了見の狭い話です。なぜ、子どもさんを区別する必要があるのですか。子どもは社会の宝として、大きな心で育むのが行政の役割ではないのでしょうか。市内のこどもにカードを出すため多額な費用をかけてまで、他市と区別する恥ずべき有料化であり、今すぐ撤回すべきです。
2点目に高校授業料無償化制度に所得制限を導入することです。無償化制度は、社会全体の負担で高校生の学びを支え、将来の人材を育成するものです。これに、所得制限が導入されること自体が誤りであり、同じ教育を受けるのに、一部の生徒のみが授業料を払うのは、教育の場に差別を招くものです。また、これにより事務量も相当増え、新たな負担を伴います。
3点目に、国民健康保険料の最高限度額引き上げです。これに伴い、中間所得層の5割、2割、1割軽減が拡充され、5000人の保険料が軽減されることは前進面として評価していますが、限度額77万円から81万円への引き上げは所得600万円の世帯から対象となり、重い負担増となります。国の限度額引き上げ方針に黙々と従わずとも、市の裁量で負担軽減、負担増を抑えることは可能です。また、後期高齢者医療の保険料引き上げも年金減額の高齢者の暮らしを直撃します。
第2に、公立の保育園・幼稚園を認定こども園に移行する経費と事業計画策定経費が計上されている、子ども・子育て支援新制度の問題です。来年4月から本格実施ですが、保護者や保育関係者に多大な不安や混乱を招いています。この制度の問題点は、1つに、児童福祉法24条1項で市町村の責任による保育所保育と、2項の認定こども園と保護者との直接契約制度が並存すること。2つは、親の就労時間によって保育時間に上限が設定され、必要な保育が受けられなくなること。3つは、施設や事業が多様化することで、保育基準や保育条件に格差が持ち込まれること。4つは、保護者負担の増加です。本市は、高額な国基準の保育料に対し、市が補助をして保護者負担を軽減していますが、新制度ではその保障はありません。
5つは、新制度の導入に乗じて公立保育所の民営化、統廃合をすれば、公立の果たしている、子育て支援の地域の拠点がなくなり、職員配置基準など保育水準を保ってきた機能が失われます。保育の実施義務について、「市は責任を持って地域の保育需要に対応する、市の保育に関する責任が後退することはありません」と答弁しています。認定こども園に移行、民営化しても保育の実施責任を市が負うよう、今後も確認していきます。
市は新制度実施と同時に、公立保育園・幼稚園を認定こども園に移行する方針です。制度の全容が示されず、問題だらけの制度なのに、国言いなりで移行を急ぐ理由も必要もなく、待機児対策も保育園でやればいいのです。認定こども園への移行はやめるべきです。日本の大事な宝である子どもの発達と生命に係る制度設計だからこそ、拙速な対応は許されません。自治体は国の下請け機関ではありません。毅然として、子どもの発達を保障する制度になるよう、国に要望し、双方向で議論をつくす気概を示して欲しい。
第3に、静岡病院の地方独立行政法人への移行です。自治体病院をめぐる背景には、公立病院改革ガイドラインで経営効率化、再編・ネットワーク化、運営形態の見直しと、政府が自治体病院の運営に介入・干渉し、締め付けがあります。非公務員型にするという事は、自治体リストラの一環であり、全体の奉仕者が働き、支える病院でなくなるということで、公の役割の後退です。地方独立行政法人の問題点は、議会の関与が弱まり、住民からかけ離れた、財政面だけを重視する採算第一主義の運営に陥り、稼げる診療分野への傾斜や、不採算部門の切り捨て、労働条件の改悪などのおそれもあります。行政とは切り離して別の法人になるので、保健・福祉・医療を一体にした行政の推進が困難になることも予想されます。このように、多大な問題を抱える独法化はすべきではありません。
第4に、住民情報システム改修経費が計上されている社会保障・税番号制度の問題です。これはいわゆるマイナンバー制度と言われ、すべての国民に対して、社会保障と税の分野で原則不変の個人番号を付け、個人情報を容易に照合できる仕組をつくる制度です。政府はメリットとして、申請書類の簡素化、給付の供給調整をあげています。しかし、必要な情報はほとんど市役所のなかでそろうため、システムを使う必要はありません。むしろ、初期投資が3000億、維持費に数百億という巨大プロジェクトなのに、導入効果も費用対効果も示されていないことや、個人のプライバシーが容易に集積され、プライバシーの侵害や成りすましなどの犯罪が常態化するおそれがあります。個人のプライバシーが関係のない第三者によって集積され、その情報が売買されたり、不正利用されるなど犯罪が多発する、そんな気味の悪い社会を作っていいのでしょうか。一方で、社会保障の給付抑制や税・社会保険料の徴収強化の手段にされかねないものです。番号制度には、憲法が保障する基本的人権の侵害にも直結しかねない重大な問題が含まれています。
第5に、定員管理計画による正規職員の削減です。1次総で420人、2次総で122人正規職員を削減しました。政令市移行後膨大な業務量が増え、職員の抱える仕事も責任もますます重くなっています。自治体職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、災害が発生すれば直ぐに駆けつけ、住民の利益最優先で迅速に行動するという使命を負っています。目先の財政の効率化を重視するあまり、自治体職員はかけがえのない「住民の宝」ということを忘れてはいないでしょうか。また、専門的・継続性が求められる業務を、後輩に引き継いでいくには、年代ごとの職員層の厚みが必要です。職員削減によりその保障も危ぶまれ、住民と自治体にとってはマイナスです。
第6に、不要不急で必要のない歳入・支出があることです。国直轄道路事業負担金、清水港整備事業負担金、日本平山頂整備事業、下水道の受益者負担金、自衛官募集業務委託、国民保護計画に係る経費が計上されていることは認められません。
予算の使い道を暮らし、福祉優先に切りかえて、基礎自治体の本来の使命である住民福祉の増進という役割を本市がしっかり果たせるよう、わが議員団も全力を尽くすことをお誓いし、反対討論といたします。
2014年2月議会に提出された補正予算案の概要、議員団の質問、討論、提出した意見書、ニュースなどは以下のとおりです。
■ 提出された補正予算案の内容
■ 提出された当初予算案の内容
■ 質問・質疑・討論
◇平成25年度一般会計補正予算案と静岡市市民文化会館条例の一部改正の反対討論-山本明久市議
◇日本共産党市議団を代表して質問-市長の施政方針と政治姿勢についてなど6項目で質問-西谷博子市議
◇総括質問・市立病院の地方独立行政法人化、市民負担増、清水区の生涯学習交流館について-内田りゅうすけ市議
◇総括質問・消防の広域化の問題を中心に消防行政と教職員の働く実態と改善について質問-寺尾昭市議
◇総括質問・子ども・子育て支援新制度と平和行政について-鈴木せつ子市議
◇静岡市国民健康保険条例の一部改正についての提案理由説明-寺尾昭市議
◇消費税増税に伴う使用料・利用料の引き上げなど市民負担増と公立の保育所、幼稚園を認定こども園に移行、静岡病院の地方独立行政法人への移行などに反対する討論-鈴木せつ子市議
◇国民健康保険料の引き下げを求める請願に対して賛成の討論-山本明久市議
◇「子ども・子育て支援新制度についての意見書」と「保育士の人材確保を求める意見書」の2件の提案説明-寺尾昭市議
■ 提出した条例改正案と意見書