日本共産党の杉本 護です。3月の市議会選挙で初めて当選しました。よろしくお願いします。
まず、市民への公約実現に向けて、通告に従い、中小企業の振興策と中小企業振興基本条例の制定を求めて質問します。
最初に、中小企業の存在意義についてお聞きします。
当局でも御存じのとおり、本市の中小企業は企業数の99%を占め、従業員数でも9割近くを占めています。そして、家族経営の多い5人以下の小規模企業数は6割を超えています。これだけ見ても、本市における中小企業、小規模企業は、地域経済にとって重要な役割を担っています。
資料の1のとおり、2010年に閣議決定された中小企業憲章の前文では、「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と宣言し、基本理念は、「中小企業は、経済やくらしを支え、牽引する。創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える。意思決定の素早さや行動力、個性豊かな得意分野や多種多様な可能性を持つ。経営者は、企業家精神に溢れ、自らの才覚で事業を営みながら、家族のみならず従業員を守る責任を果たす。中小企業は、経営者と従業員が一体感を発揮し、一人ひとりの努力が目に見える形で成果に結びつき易い場である。中小企業は、社会の主役として地域社会と住民生活に貢献し、伝統技能や文化の継承に重要な機能を果たす。小規模企業の多くは家族経営形態を採り、地域社会の安定をもたらす。このように中小企業は、国家の財産ともいうべき存在である」と、このように声高らかにうたい上げています。私は、この憲章は中小企業の存在と役割を正確に捉えていると評価をしています。
そこで、質問の1点目は、中小企業の存在意義について本市の認識はどうか、お伺いいたします。
次に、自治体の責務についてです。
中小企業基本法や小規模企業振興基本法では、地方公共団体の責務として、基本理念や基本原則にのっとり、国と適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の「自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。」というふうにあります。
このように法律では自治体の責務が明確化されており、本市においても具体的施策が求められています。ちなみに責務を辞書で引くと、責任と義務、また果たさなければならない務めというふうにあり、大変重たい意味がある言葉です。
そこで、2点目は、このような責務について市はどのように考えているのか、お聞かせください。
これで1回目を終わります。
◯副市長(美濃部雄人君) 地域経済、地域社会における中小企業の存在意義についてお答えいたします。
平成26年の経済センサス基礎調査によれば、市内の3万6,000余りの事業所のうち、従業員300人以下の企業が99.5%を占め、また、市内の総従業員数約34万8,000人のうち86%がそこで働いています。そうしたことから、中小企業は数の上でも本市の雇用を生み出し、地域経済を支えています。
また、中小企業は、本市の基幹産業である三菱電機や小糸製作所など大手事業所へ部品を供給するサプライヤーとして本市経済を構造的にも支えています。さらに、駿河竹千筋細工や駿河ひな具、ひな人形といった伝統工芸やそれを礎とした家具や木製品、サンダルといった地場産業の担い手として、本市のものづくり産業の歴史と伝統を長きにわたり守ってきました。経済活動以外においても、中小企業は地元に密着した存在として防災活動に協力し、また、子供たちに体験学習の機会を提供するなど、さまざまな側面から地域社会に貢献しております。このようなことから、中小企業は地域を支える重要な存在であると認識しております。
中小企業の振興に関する市の責務についてでございますが、中小企業基本法及び小規模企業振興基本法では、地方公共団体は、「国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」と規定してます。
本市としても、中小企業が持続的に成長し、本市への愛着や信頼を抱きながら事業活動を継続していくことが地域経済の発展に欠かせないものであると認識しております。
そこで、3次総において世界・全国に挑戦する中小企業の振興を重要な政策の1つに掲げ、販路開拓への支援、新製品・新分野進出への支援、経営基盤・競争力の強化などに取り組んでいくこととしています。
〔11番杉本 護君登壇〕
◯11番(杉本 護君) 御答弁ありがとうございました。
私と同じような意見です。市も認めているとおり、中小企業は地域にとってはなくてはならない存在というふうになっています。ところで、本市の現状はどうなっているのでしょうか。市が第2次産業振興プランを作成する際に分析をした静岡市産業・経済の現状では、人口減、少子・高齢化、市内総生産額や事業所数の減少など、厳しい実態が示されています。
資料2にあるとおりに、2014年の経済センサス基礎調査では、企業数では若干の持ち直しが見られますが、建設業や従業員が5人以下の小企業の減少はまだ続いています。ことしの2月実施の市経済局商工部による静岡市景況調査では、1月から3月期のB.S.I.はマイナス6となっており、景気は悪化していると判断しています。住民の方からも静岡は元気がないように感じる、こういう声が多数寄せられ、これが市民の実感ではないでしょうか。
そこで、質問の1点目ですが、市は、現在、中小企業の支援策としてどのような事業を行っているか。また、小規模企業者を対象にした事業はどのようなものがあるか、お聞かせください。
次に、住宅・店舗リフォーム助成制度創設についてお聞きします。
共産党市議団は、過去に何度なく議会で住宅及び店舗のリフォーム助成制度創設を求めてきましたが、市は、個人の資産形成につながるなどと否定的で、経済波及効果の試算すらしないとの姿勢です。
住宅リフォーム助成制度は、資料3のとおり、全国商工団体連合会の調査で、昨年4月現在、全国600自治体以上に上っており、県内でも17自治体が実施、店舗リニューアル助成制度は55自治体と年々広がっています。なぜふえているんでしょうか。ぜひ考えていただきたいと思います。経済波及効果の点では、京都府与謝野町の住宅リフォーム助成制度の場合、工事費に対して1.61倍、補助金に対しては23.84倍という結果が出され、地域内循環型の経済対策としては抜群の結果を出しています。
そして、資産形成を問題にするのは、時代おくれの発想ではないでしょうか。耐震補強助成や住宅建設での税制や融資上の優遇措置、また賦課減税もある意味、資産形成にかかわると思います。いずれも政策課題実現のために行われています。この住宅リフォーム助成によって、市の産業振興プランにない多くの小規模な建設関連業者の直接的な仕事起こしとなり、地域経済の活性化につながります。そして、店舗リニューアル助成では、商店などの事業主自身、事業継続への意欲を引き出し、発展へとつながるものです。
ここで改めて地域経済対策として住宅リフォーム、あるいは店舗リニューアルの助成制度創設を提案しますが、考えをお聞かせください。これが2点目です。
3点目にお聞きしたいのは、市の発注工事などについてです。
私は、地域経済、地域循環型経済をつくる上で、また市内中小企業を育成する上で、市内の発注工事などは市内中小企業に優先発注するべきと考えます。そこで、幾つかの点を確認したいと思います。
1つ目は、市の発注する建設工事、物品調達、委託業務などについて、市内の中小企業に優先発注する仕組みはどのようになっているのか。
2つ目に、建設工事における市内中小企業の受注割合はどの程度になっているか。
3つ目としては、市外企業が受注した場合、下請に市内中小企業が優先される仕組みはあるのか、総合評価方式による契約で下請割合はどの程度か、また、下請契約は適正に行われているのか、この点をお聞かせください。
4点目として、中小企業振興基本条例制定についてです。
以下、条例と略して言わせていただきます。この問題は、10年以上前から共産党市議団として制定を求めてきました。他の会派も議会で質問に取り上げています。静岡県も条例を制定し、早速条例に基づき経営力向上に向けた工夫、改善を後押しする総額1億円の補助金制度を創設しています。私は、条例を制定することで、本市の部局の全体の施策において中小企業振興を意識するようになり、そして、外部の住民や企業に対し本市の姿勢を明確にするものと考えます。そして、市長や担当者がかわっても本市の姿勢が変わらないことを担保するものと考えています。
現在本市は、商業の振興やものづくり産業振興、オクシズ地域おこしなどの条例をもっていて、それぞれに大切な意義があります。しかし、やはり分野別の縦割り的なものになっています。中小企業の振興を考える際、産業だけではなく、教育、福祉、文化、都市計画や住宅などさまざまな政策とも関係を持っており、市全体のものとして捉えた施策を講じるには、やはり中小企業振興基本条例が必要と考えます。当局の2016年6月議会での平島議員への答弁では、中小企業家同友会との意見交換を行っている。静岡県及び他の政令指定都市の条例内容の精査を行い、その上で本市が条例を制定する必要性や有効性を検証していくと言っています。
それでは、この間どのような議論を重ね、現時点で条例制定についてどのように考えているかをお尋ねをして、2回目とします。
◯経済局長(赤堀文宣君) 中小企業の振興に関する3つの質問にお答えいたします。
まずは、中小企業の支援についてですが、本市では、小規模事業者を含む中小企業全体を対象に、創業期から成長・定着期といった企業のステージに応じた支援を行っております。まず、創業期においては、本市の産業支援機関である産学交流センターと清水産業・情報プラザにおいて創業セミナーや先輩創業者との交流会を開催し、創業意欲の醸成を図るとともに、中小企業診断士などの専門家による事業計画や資金計画についての相談や指導を行っております。また、施設内に創業者育成室を設置し、マネジャーによる伴走型の支援を行っており、育成室の入居者が市内で事業所を開設する際には、家賃に対する助成も実施しております。
次に、成長・定着期における支援ですが、販路開拓への支援、新製品開発、新分野進出への支援、経営基盤・競争力の強化の3つの柱による取り組みを行っております。
1つ目の販路開拓への支援では、大規模な産業展示会に出展する際の費用の助成、首都圏での地場産品のPRや販路の拡張、東アジアなどへの海外展開支援を実施しています。
2つ目の新製品開発・新分野進出への支援につきましては、企画から販路までを専門家が支援し、新たな土産物を創出する静岡おみやプロジェクトや地域資源を活用した産学共同研究等の事業を実施しております。平成28年度は静岡の抹茶を活用した缶詰会社による和風プリンの商品開発や、バラから抽出した香りエキスを活用したプラスチック製品製造会社の化粧品分野への進出など、53件の支援を行いました。
3つ目の経営基盤・競争力の強化では、生産性の向上に対して企業ニーズに対応した専門家の派遣や現場改善事業、また、企業の各ステージに応じた財政面での支援として運転資金や設備資金、経営改善に向けた資金に対する利子補給を行っております。特に小規模事業者の経営改善に向けた資金に対する利子補給は、平成28年度に471件の実績があり、多くの小規模事業者の皆さんに活用していただいております。
次に、住宅や店舗のリフォームに関する助成制度についてですが、現在、市民の皆さんが木造住宅の新築やリフォームをする際に、市内業者が施工することなどを条件に、市産材の柱や内装材を提供する柱・土台100本プレゼント事業を実施しております。この事業は、森林機能の維持増進を図るとともに、地産地消を促進する地域循環型の経済支援策であり、平成26年度調査では、7,000万円の助成により生産誘発効果が18億円増加するなど、経済波及効果についても極めて大きなものとなっています。
一方、清水地区の中心市街地では、民間事業者が主体となって空き家・空き店舗等の遊休不動産の新たな活用方法を考え、建物を再生するリノベーションの取り組みを通じ、当該エリアの価値を高めていく動きがあらわれています。
本市といたしましても、魅力あふれる個店の成長や地域のにぎわい創出に向けて、このような民間事業者の機運のさらなる醸成に努めていくことが重要であると考えております。
以上のことから、地域経済対策のみを目的として住宅や店舗のリフォームに関する助成制度については、現在のところ創設する考えはございません。
最後に、中小企業振興基本条例の検討状況についてですが、これまでに全国の自治体の条例制定状況の調査や、静岡県や他の政令指定都市などの条例や関連する施策の内容の精査などを行い、本市が条例を制定する必要性や有効性について整理しているところです。
◯財政局長(平沢克俊君) 私からは、3点の御質問にお答えいたします。
市内の中小企業に優先発注する仕組みにつきましては、まず、建設工事、物品調達及び委託業務等に関する入札参加者の選定基準において、中小企業に限らず、市内に本社、本店を有するものを市内業者と位置づけ、優先的に選定するように定めています。市内業者の9割以上が中小企業ですので、この制度によって市内中小企業の受注機会の確保に努めております。
次に、平成28年度の建設工事における市内中小企業の受注割合ですが、契約件数では全体745件のうち693件、約93%となっています。契約金額では約327億円のうち250億円、約76%が市内中小企業の受注となっています。なお、建設工事において優れた成績をおさめた技術者及び施工業者を市が表彰するとともに、表彰を受けた業者を総合評価方式の入札において加点対象とすることにより、建設技術の向上や適正な施工を推進し、建設業の育成を図っております。
最後に、市外業者が受注した場合の下請負に関する取り組みについてですが、まず、全ての建設工事受注者に対し、下請負だけでなく、資材購入についても市内業者を活用することを契約の際に文書で要請しています。また、総合評価方式の入札において、市内企業の施工割合を評価項目とし、市内業者との下請契約を加点対象とすることにより、市内業者が優先される仕組みとしております。この総合評価方式において市外業者が受注し、平成28年度に完成した21件の工事では、契約金額約51億円のうち下請金額は約18億円で、そのうち市内業者が下請受注した額は約13億円、割合にして約72%でした。なお、下請契約の工事内容や金額などについては、適正に履行されていることを市の工事監督員が確認をしております。
今後も継続して市内業者への優先発注を行い、受注機会の確保及び本市経済の活性化に努めてまいります。
〔11番杉本 護君登壇〕
◯11番(杉本 護君) 失礼しました、余りにもがっかりする答弁で。
さっきも述べましたとおりに、市内の中小・小規模の建設業者は、今でも年々減っています。そういう意味では、住宅リフォーム等、大変重要というふうに私は考えています。
そこで、最後の質問ですが、ここでは中小企業振興基本条例制定に向けての取り組み方について意見を述べて、2点について考えをお聞きします。
これまでも以前から求めていることですが、市の職員全体で取り組む中小企業対象の悉皆調査についてです。墨田区の例が古くから有名ですが、製造系の9,000事業所を当時の係長級以上の職員180人が区内に出て調査をしています。愛媛県の東温市も、詳細な内容のアンケートを訪問聞き取りで調査をしています。どちらも、そうした調査をもとに条例を制定しています。実態を正確につかむことが、生きた条例、生きた施策につながると思います。そして、墨田区の調査で学ぶことは、多くの自治体職員が現場に出て実際に中小企業者と対話することで、地域経済を元気にしていきたいという自治体側の意欲が伝わり、それに応えるように中小企業自身が頑張る意欲を引き出したことではないかと思っています。そうした中で、生きた条例となっています。
悉皆調査では、条例制定の目的だけではなく、常に実態把握として定期的にやっていただきたいのですが、この場では、まず、今後の条例づくりに向けてぜひ職員が参加をする悉皆調査をやっていただきたい。市としての考えを伺います。これが1点目です。
さらに、条例そのものを理念で終わらせず、実践的に活用できる条例とするために、悉皆調査項目の検討も含め条例制定に向けて幅広い分野のメンバーによる委員会を設け、検討を開始するべきと思いますが、市の考えを聞かせてください。これが2点目です。
今、安倍政権によるアベノミクスの経済対策の失敗で、大企業が潤っても労働者の賃金は上がらず、格差と貧困が広がるばかり、中間層も疲弊しています。個人消費の低迷が地域で経済活動をしている中小企業の経営を困難に陥れています。国民、中小企業を顧みない安倍政権のもとで、今こそ静岡市は地域の宝である中小企業の支援に本腰を入れるときではないでしょうか。こうした問題でこそ、市長のトップダウンの政治力を発揮してほしいというふうに思います。この中小企業振興基本条例制定に向けて、一歩でも静岡市が踏み出すことを期待をして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
◯経済局長(赤堀文宣君) 中小企業振興基本条例制定に関する2つの質問に対して一括してお答えいたします。
本市では平成28年度から静岡商工会議所や清水、由比、蒲原の各商工会、静岡県中小企業家同友会などの経済団体との勉強会や意見交換を行い、市内中小企業の実態把握に努めているところです。中小企業の振興につきましては、基本理念や行政、市民、事業者、それぞれの役割を明確化することが必要だと認識しており、そのために条例制定の有効性について引き続き検討してまいります。