清水LNG火力発電所について

 日本共産党の望月賢一郎です。本日最後の質問になります。私は、JXTGエネルギー株式会社が建設を計画している清水LNG火力発電所について質問いたします。
 この発電所計画は、JR清水駅東口約400メートルの事業者所有地にタービン2基、総出力110万キロワットのLNG火力発電所を建設しようというものです。この発電所は、稼働いたしますと、そこから排出される排気ガスは、静岡市が持っております2つの清掃工場、これを合わせた11倍という巨大なものです。事業者は、当初、東燃ゼネラルでありましたが、本年4月にJX日鉱日石と合併し、現在、JXTGエネルギーとなっております。
 この計画の経緯は、2015年1月に計画が発表され、その直後、環境影響評価の配慮書が出されました。この配慮書については、地元住民もほとんど事態を飲み込めないうちに30日間の縦覧期間が終了いたしました。その後、環境影響評価書の方法書の段階にて、業者が市内2カ所で開いた説明会で、地元を中心とした住民の皆さんがこの計画を認知するに至ったものです。2015年8月に方法書が経済産業省に提出、認可され、事業計画は準備書の作成の段階となっており、来月には提出されるものと聞いております。この間、静岡市の環境影響評価条例の制定に伴い、環境影響評価の主体は静岡県から静岡市に移っております。今後は、静岡市の環境影響評価審査会で準備書の審査が始まります。もしこれが静岡市の環境影響評価を通り、経産省で認可をされれば、建設の計画は事実上スタートすることになります。
 前回、静岡県から経産省に提出された方法書には、静岡市長の意見書がついております。その中には、大気質の項目に以下の記述があります。「特に事業実施区域周辺の高層住宅に関して、当該建築物が風下となる風向で、ダウンドラフトが生じるような条件下では単純な濃度予測値を超える大きな値となることが推測されるなど、強い影響を受ける可能性があるため、大気の調査、予測及び評価に当たっては、通常の検討とは別に、この高層住宅への影響も考慮し評価した上で、適切な環境保全措置を検討すること」。また、附帯事項で、本事業の実施に当たっては、「住民に丁寧な説明を行うとともに、十分な検討を行い万全の対策が講じられることが望まれる」と、こういうことも記述されております。この市長意見を踏まえて質問をいたします。
 第1に、市長意見の提出からおよそ2年が経過した現時点で、清水駅周辺の高層マンションに窒素酸化物等の測定器が設置されていないことは、意見書の市長意見に反していると考えますが、市としてどのように捉えておりますか。
 2番目、本年1月に、当時の東燃ゼネラル和歌山工場で大規模な爆発・火災事故があり、付近の住民3,000人が一時避難いたしました。この事故に関して、静岡市としてどのような情報収集を行いましたか。
 3つ目、本市でこのような事故が起こった場合の対応はどのようになっていますか。
 以上、当局の回答を求めます。

◯環境局長(糟屋眞弘君) 高層マンションへの測定器の設置についてですが、環境影響評価方法書に関する市長意見では、「大気の調査、予測及び評価に当たっては、通常の検討とは別に、この高層住宅への影響も考慮し評価した上で、適切な環境保全措置を検討すること」と述べており、窒素酸化物等について高層マンションでの個別測定を求めたものではございません。
 したがいまして、高層マンションに窒素酸化物等の測定器が設置されていないことが、直ちに市長意見に反しているとは考えておりません。

◯危機管理統括監(荻野敏彦君) 危機管理に関する2つの御質問にお答えします。
 まず、東燃ゼネラル和歌山工場の事故に関して、どのように情報収集を行ったのかについてですが、この事故は、本市で清水LNG火力発電所の建設を計画している事業者の施設で発生したことから、事故後、報道資料の収集を行い、出火元が潤滑油製造設備であったこと、有田市が災害対策本部を設置し、住民へ避難指示を行ったことなどを把握しました。また、事業者から聞き取り調査を行い、報道内容の事実確認をするとともに、住民への避難指示は、LPGへの引火のおそれがあったため行われたこと、具体的な出火場所などを把握しました。
 なお、6月14日には事故原因、再発防止策、安全管理体制の見直しを含めた最終報告書が発表されております。
 次に、本市で同じような事故が起きたときの対応についてですが、清水LNG火力発電所が計画されている清水地区石油コンビナート等特別防災区域には、油などを保管する貯蔵タンクなどはありますが、東燃ゼネラル和歌山工場と同様の製油施設はないため、同じ原因による事故は想定されておりません。
 万が一、区域内で住民に被害を及ぼすと予想される事故があった場合には、本市は、静岡県が定めた静岡県石油コンビナート等防災計画に基づき対応を行います。具体的には、石油コンビナート等災害対策本部現地本部を設置し、災害対策上必要な広報、避難勧告または指示、住民安全対策などを実施してまいります。
  〔1番望月賢一郎君登壇〕

◯1番(望月賢一郎君) 静岡市としては、市長意見は設置を義務づけたものではないという答弁でした。しかし、地元の高層住宅の皆さんは、非常に不安を募らせております。駅前の高層マンション、マークス・ザ・タワーの皆さんは、事業者との直接交渉の中でも、観測器の設置を要望されたそうですが、東燃側は拒否したとのことです。同じ事業者である東燃ゼネラル和歌山工場の事故も、発電所の安全操業という点で付近の住民の皆さんは大変心配をしております。
 そこで、質問です。
 第1に、清水駅周辺の高層マンションの住民が要望している測定器の設置について、市が独自に設置する考えはありませんか。
 2番目、事業者は、市内十数カ所の観測点の数値をもとに、駅周辺の高層住宅については大気の数値シミュレーションで対応するとしています。この妥当性をどのように考えておりますか。
 3番目、発電所稼働後に窒素酸化物等の排出基準、これは排出場所つまり煙突のところで基準を超えた、こういう場合の対応について稼働を停止させますか。
 4番、市内11カ所の測定局で二酸化窒素、これは排出された窒素酸化物が紫外線などにより酸化されて生成いたします。この濃度が環境基準、すなわち人の健康を保持し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準、この環境基準を上回った場合、どのような対応をとるつもりですか。
 5番、現在計画されているLNG火力発電所について、南海トラフ大地震などの大規模災害に対して最大限の被害を想定してその対応を検討しているかどうか、これについて答弁を求めます。

◯環境局長(糟屋眞弘君) 清水天然ガス発電所建設計画に関する4点の御質問に一括してお答えをいたします。
 初めに、高層マンションに測定器を市が独自に設置することについてですが、現在、清水区においては清水区役所を初め5カ所に大気測定局を設置し、窒素酸化物等の濃度を常時監視しております。これらの測定局により、高層マンションを含めた周辺地域の窒素酸化物等の状況は監視できているものと考えておりますので、市が新たに測定器を設置する予定はありません。
 次に、事業者が行う大気の数値シミュレーションについてですが、これは、経済産業省が定める発電所アセス省令や改訂発電所に係る環境影響評価の手引等に基づき実施されるものであります。具体的にどのようなシミュレーションが実施されるかについては、今後、事業者から示される環境影響評価準備書の中で明らかにされることとなりますので、その結果については専門家で組織する本市の環境影響評価審査会等において、手法を含め妥当性を確認してまいります。
 次に、稼働後に排出基準値を超えた場合の市の対応についてですが、清水天然ガス発電所は大気汚染防止法のばい煙発生施設を有するため、稼働後は窒素酸化物等について排出基準が適用されます。稼働後に本市が行う立入検査の結果、施設に明らかな異常が認められた場合や排ガス測定の結果が大気汚染防止法の排出基準値を超えた場合には改善措置を求め、状況によっては改善命令や稼働の一時停止を行います。
 最後に、環境基準値を上回った場合の対応についてですが、環境基準値を上回っているかどうかは、1年間を通じて行った測定の結果をもって判断します。本市は、市内11カ所の大気測定局で二酸化窒素濃度を24時間毎日測定しており、昭和53年度に二酸化窒素の環境基準が改正されて以来、全ての測定局で環境基準値を下回っております。環境基準は、環境基本法に基づき人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として政府が定めた目標値であり、これを上回った場合には、市が原因を調査し、二酸化窒素濃度の低減に向けた取り組みを検討することとなります。

◯危機管理統括監(荻野敏彦君) LNG火力発電所について、最大限の被害を想定し事故に対応していくのかという御質問についてですが、現在、静岡県が主体となりまして石油コンビナートの防災アセスメントを実施しております。これは、石油コンビナートで発生する可能性のある災害について、東日本大震災の被害状況やこれにより得られた新たな知見も踏まえ、最大限の被害を想定し、石油コンビナート周辺も含めた地域の危険性を評価するものです。この結果を踏まえ、静岡県石油コンビナート等防災計画が見直されることとなります。
 今後、清水LNG火力発電所など新たな施設が建設された場合、必要に応じてアセスメント及び防災計画の見直しが行われます。本市では、これらの見直しの結果を踏まえ、適切に対応をしてまいります。
  〔1番望月賢一郎君登壇〕

◯1番(望月賢一郎君) 静岡市としては、測定器を独自に設置する予定はないということです。しかし、事業者が言う60メートルの煙突から秒速30メートルで噴出された排気ガスが高度300メートルまで上昇して、その後、均等に拡散をする。そして、その着地点は8キロメートル先となり、葵区の千代田小学校が最も高い濃度になる、こういう事業者の説明に多くの市民は納得するでしょうか。数値シミュレーションが正確かどうかは、高層マンションでの実測を行って検証をする必要があるのではないでしょうか。
 また、先ほど答弁がありましたように、窒素酸化物の排出が基準を超えた場合には、稼働を停止させるのは当然の話です。ただ、排出濃度は基準内であっても、燃やすガスの量が膨大であり、拡散がうまくいかない場合には、高濃度の地域が出てくる可能性があるということです。問題は市内の測定局で二酸化窒素などが環境基準を超えた場合です。環境局の説明では、環境基準を超えたことを判定するのに1年かかります。その後、この原因の特定に入るわけです。そして、この原因の特定というのが非常に困難なわけです。発電所の稼働後、環境基準を上回る数値が出ても、即座にこれが発電所によるものとは断定できない。道路事情等による自動車の排ガスの影響かもしれない。そのほか、地域内の他の事業所の排出量の増加によるものかもしれないということになるわけです。結果として原因の特定ができなければ、対策が打てないわけです。その間に二酸化窒素、これがぜんそくとの相関関係が非常に高いわけですから、この濃度が環境基準を上回り続ければ、子供や高齢者のぜんそく発症のリスクを高めることになります。特に高層マンションは、方法書で静岡市が指摘したように、特別に考慮されるべきです。地上の観測点以上に汚染物質にさらされる危険性が高いと市が指摘したとおりです。
 さらに、質問いたしました安全性の問題、これは挙げれば切りがありません。レベル2の巨大地震発生時の津波の問題、これに伴うLNGタンカー係留索の問題、地盤の液状化の問題や活断層のこともあります。
 今回この質問をしたのは、5月18日の市民団体と静岡市の話し合いの中で静岡市の危機管理の考え方として、大きな問題がある発言があったからです。こういったさまざまな問題に対して、監督すべき静岡市が真摯に向き合わなければどうなるか、先ほどの繰り返しになりますが、周辺マンションの住民の皆さんは非常に心配をしておられます。私が市議選の中で対話した方の中の何人かは、この発電所の建設計画が決まれば転居を検討するという方がおられました。4月29日の新聞報道によりますと、駅前の本郷地区、旧西友の跡地ですが、ここの再開発、これは民間企業が中心となって行う事業で、静岡市の中心市街地活性化計画にも位置づけられているものです。この計画について当該事業者、ちなみにこの事業者はその隣の新築マンションも手がけております。この事業者が低層階の商業施設については計画は進めるが、上層階のマンション部分については、計画の縮小あるいは撤回も含めて検討すると発表したとされています。これは、この地域でのマンション需要が今後余り見込めないという判断ではないでしょうか。発電所の計画が認可されれば、さらに大きな影響が予想されるのではないでしょうか。一般の方が3,000万円、4,000万円という一生に一度の買い物をするときに、目の前に巨大な発電所ができる、あるいはあることを考慮するというのは当然のことです。不安があれば、この地域での購入はしないということになるわけです。その結果、清水駅前の中心市街地が活性化どころか空洞化する、こういう危険が出てくるのではないでしょうか。
 田辺市長は、2月に行われたタウンミーティングでコンパクトシティということをおっしゃられています。清水の再生なしに静岡の発展なしとも言っております。我が党は反対ですが、この地域に区役所の移転を含む清水まちなかビジョンの構想もあります。コンパクトシティとは、そこに住む人がいて初めて成り立つものです。人々が集まり暮らすまちの必要条件は、安心・安全の確保です。であるならば、この計画に対する静岡市の対応が環境面、安全面においてしっかりしなければ、駅前地域に長期にわたって大きな影響をもたらす、このことを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。そもそも発電所の計画自体、市街地からわずか400メートルという立地に無理があります。どうやってもこの地域の安全・安心とは両立し得ないこの計画について、市長は環境影響評価の意見書で意見を述べることができます。この意見書は、市長の政治判断として非常に重要なインパクトを持ちます。ぜひ賢明なる判断をお願いいたします。
 日本共産党は、このような余りに市街地に近い巨大火力発電所について、計画の中止を求める市民の皆さんきょうもたくさんおいでになっています。この皆さんとともに、この計画の撤回に向けて今後も奮闘してまいります。安全・安心な静岡市をつくっていく、この決意を最後に述べまして、私の質問を終わります。