◯11番(杉本 護君) おはようございます。
日本共産党の杉本 護です。通告に従い、質問します。
今回のテーマは、安心して暮らせるまちづくり、その中でも公共交通問題を中心に質問します。
今、日本全体で少子高齢化、人口減少が進展しています。そうしたもとで本市は、第3次総合計画で人口70万人維持を最大の目標として掲げ、さまざまな取り組みを行っているところですが、残念ながら人口減少に歯どめがかかっていません。私は、子供からお年寄りまで全世代が暮らしていく中で、住み続けたいと思えるまち、安心して暮らせるまち、こうしたまちづくりが人口減少対策になり、持続可能なまちになると思っています。そして、その土台に公共交通問題があると考えています。
さて、本市は、都市計画マスタープランのもと、集約連携型都市構造の実現に向け居住誘導を図る立地適正化計画と、市内全域の移動手段にかかわる地域公共交通網形成計画を一体のものとして取り組んでいます。8月にはパブリックコメントを行い、数多くの意見が寄せられ、市民の関心の高さがうかがえます。
立地適正化計画、いわゆるコンパクトシティについては昨年度の議会で質問し、市の考え方についてはお聞きしました。この計画では3つの区域を定めるとし、集約化拠点形成区域は既に示され、今回新たに、利便性の高い市街地形成区域とゆとりある市街地形成区域を示しています。市民からは、どういう根拠でこの3つの区域が設定されたのか、よくわからないとの声が出されています。
そこで、1つ目の質問ですが、立地適正化計画にある3つの形成区域は、それぞれどのような考え方で設定しているのか、伺います。
2つ目は、利便性の高い市街地形成区域やゆとりある市街地形成区域において、地域公共交通網形成計画では連携してどのようなことに取り組んでいくのか、伺います。
次に、地域公共交通網形成計画について、伺います。以下、形成計画と言います。
本市の進めている集約連携型都市構造は、コンパクトシティを公共交通のネットワークで結ぶことで初めて成り立ちます。コンパクトシティの考え方については私なりに意見がありますが、今回のテーマは公共交通ですから、言及は避けます。その上で、市民の移動手段である公共交通がしっかり機能しなければ、集約連携型都市構造などは机上の空論となり、移動手段を奪われた生活難民が大量に発生する暮らしづらいまちとなっていきます。
さらに、公共交通は、住民の単なる移動手段にとどまらないさまざまな役割を担っていると思います。そうした点から見て、現在の本市における公共交通には幾つもの課題があると思っています。今回出されている形成計画でそうした課題を解決する方向を示すことが重要と考えます。パブコメで市民に提示をしたものをお手元に資料として配布しましたから、ぜひごらんになってください。
そして、市長が提唱するSDGsは、誰ひとり取り残さない思想です。11番には住み続けられるまちづくりをとあり、そのターゲットの2つ目に、「2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、および高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。」とあります。ここをしっかりと受けとめることが必要であります。
そこで幾つか質問します。
1つ目は、公共交通が果たしている役割をどのようなものだと考えているのか。
2つ目は、本市の公共交通の現状について、どのような課題があると考えているのか。
3つ目は、そうしたもとで形成計画はどのようにしてつくられ、特徴は何か。
以上の点をお聞きして、1回目とします。
◯都市局長(片山幸久君) 立地適正化計画などに関する5つの質問にお答えいたします。
まず、立地適正化計画の3つの区域の設定の考え方ですが、現在改訂作業を進めている立地適正化計画では、都市機能や居住の適正な誘導を図るため、市街化区域内を3つの区域に分けています。
まず、集約化拠点形成区域は、多くの人がさまざまなサービスを利用できるよう、主要な鉄道駅や区役所を中心として、徒歩などで移動や回遊しやすいエリアを基本に、商業施設や医療施設などの配置状況も考慮した上で設定しています。
次に、利便性の高い市街地形成区域は、定住人口を確保し、住む人が便利に暮らせるよう、鉄道やバスの公共交通軸の沿線のエリアを基本に、土地利用の状況なども考慮した上で設定しています。
ゆとりある市街地形成区域は、郊外の良好な環境を守りながらゆとりある生活を楽しめるよう、利便性の高い市街地形成区域を取り囲むように設定しております。
次に、利便性の高い市街地形成区域やゆとりある市街地形成区域における地域公共交通網形成計画による連携した取り組みですが、都市計画マスタープランに掲げる集約連携型都市構造を実現するため、コンパクトなまちづくりを進める立地適正化計画と、それを支える交通ネットワークの形成を進める地域公共交通網形成計画は相互に連携した計画となっております。
利便性の高い市街地形成区域では、鉄道、バスの利用環境の改善や運行サービスの充実を図り、公共交通の利用促進に努めていきます。
また、ゆとりある市街地形成区域では、公共交通の効率化を図り、必要なバスの運行サービスの維持に努めるとともに、地域の実情に応じた公共交通の再編などを検討していきます。
次に、公共交通が果たしている役割についてですが、公共交通の役割は、主に通勤・通学などの基本的な社会活動や、病院、買い物など生活に必要なサービス施設を利用するための移動の手段です。また、子供や高齢者、障害のある方などが外出するための手段の1つでもあります。
さらに、公共交通を利用して外出する機会をふやすことによる健康増進や観光交流を推進し、まちのにぎわいを創出するなど、地域経済の活性化に必要なものでもあります。
このように公共交通は、市民の皆さんが健康で文化的な生活を送る上で重要なインフラとして、欠くことのできない大きな役割を担っているものと認識しております。
続きまして、本市の公共交通の現状について、どのような課題があるかでございますが、本市の公共交通の現状としては、人口減少、少子高齢化などに伴う路線バス利用者の減少やバスの運転士不足などにより、減便やバス路線廃止など公共交通のサービス水準の低下が生じております。このようなサービス水準の低下によりさらに利用者が減少し、公共交通の維持が困難になっていく可能性がございます。
こうしたことから、公共交通を持続させるためには、効率的な公共交通網の形成や公共交通の利用促進、運転士の確保などの課題があると考えております。
最後に、地域公共交通網形成計画がどのようにしてつくられ、特徴は何かについてですが、計画の作成に当たっては、基礎調査として公共交通の現状、社会情勢の変化の分析に加え、アンケート調査による市民ニーズの把握などを行い、この調査結果に基づき、目標や方針、実施施策などの検討を行っております。この検討に当たりましては、行政、交通管理者、専門家、自治会代表者とともに、バスやタクシーなどの公共交通事業者で組織する静岡市地域公共交通会議において議論し、計画を作成しているところでございます。
次に、本計画の特徴ですが、主に2つあると考えております。
1つ目は、公民連携のもと、交通事業者や市民の皆さんの意見を踏まえ、実施主体となる行政、交通事業者の役割を明確にすることで、実効性や有効性を高めた計画となっていることです。
2つ目は、大量輸送が可能で、定時性の高い鉄道を東西軸とし、鉄道駅を結節点に複数の運行ルートを持つ路線バスを南北軸に位置づけ、機動性の高いタクシーを組み合わせて利便性を高めるなど、公共交通相互の特性を生かしたネットワークの構築を目指す計画としたことでございます。
〔11番杉本 護君登壇〕
◯11番(杉本 護君) 2回目です。
ただいまの答弁で、公共交通の果たしている役割について、市民が健康で文化的な生活を送る上で欠くことのできないものと認識している、これについては共有できるものであり、これからの公共交通を同じ認識のもとで考え合う土台があることが確認できました。その一方、公共交通を持続させていく上での課題も幾つか見えてきたと思います。
この間、公共交通問題は毎議会でテーマとなるぐらい市政の重要な問題となっています。私は、形成計画の実施施策にも若干触れながら、とりわけバス交通の課題について質問を進めます。
1つ目は、バス交通利用者減少の問題です。
自家用自動車の普及による移動手段の変化、空き店舗などが次々と駐車場となり、車での移動の受け皿がふえていくことが拍車をかけています。そして、当局も認識しているように、バス利用者の減少がサービス水準の低下を生み、それがさらに利用者を減少させる負のスパイラルに陥っています。
その一方で、高齢者の運転免許返上など、公共交通が最後の移動手段として、その重要性は高まりを見せています。形成計画の実施施策は、公共交通全体として、一般利用者の利用促進に、タクシー料金に関する施策の検討、観光客の利用促進に、新交通及び循環バスの導入検討、さらに、免許返納制度の充実化などがさまざまうたわれ、今後検討が進められていくと思っていますし、期待もしているところです。
そこで質問ですが、バス交通の利用促進に向け、市はどんなことに取り組んでいるのか、お聞きします。
2つ目は、バス運転士不足の問題です。
今、全国的に労働力不足が言われています。運輸業ではバス、タクシーなど自動車運転の職業が特に不足して、重大問題です。運転士なしには公共交通は動きません。無人運転バスも走行実験が始まっていますが、子供やお年寄り、障害者などへのきめ細かなサービスは提供できません。運転士の確保は喫緊の課題と言えます。
昨年3月に休止となった安東循環線と小鹿線は、主に運転士不足が原因と言われていますが、代替路線が存在することも休止の要因と伺っています。城東町に住む足の弱い高齢の方に現状を聞いたところ、片道2,000円以上を払って、タクシーで移動している。お金がかかるので、用事はできるだけまとめて済ませ、なるべく出歩かないようにしているとのことでした。運行主体のしずてつジャストラインの前身である静岡鉄道の社史で、戦後を振り返り、みずからの社会的使命について、いかなる困難を伴っても、いかなる犠牲を払っても、地域社会に奉仕するのが交通事業の使命であると、当時の川井社長の一貫した経営理念をつづっています。こうした歴史を持つ事業者として、今こそその使命を果たすときではないでしょうか。
そこで質問ですが、バス運転士不足という課題に対して、市はどんなことに取り組んでいるのか。
また、安東循環線や小鹿線について、再開の見通しはどうなっているのか、お聞きします。
3つ目は、バス移動手段の確保と地域との連携の問題です。
地域公共交通の役割からすれば、そうした移動手段の確保は、国や自治体の責務であると思います。しかし、その地域に合った交通手段を考えるとき、地域住民の参加が不可欠です。地域のことを一番よく知っているのが地域住民です。地域の方々の意見や要望を反映させなければ、利便性の高い公共交通を確保することはできません。本市は現在、バス停まで300メートル以上ある地域を公共交通空白地域と見ていますが、地域には高齢者比率の高いところ、障害者などの福祉施設があるところなど特性があり、住民の意見を聞き、弾力的に対応すべきではないでしょうか。バス交通に対する住民からの意見・要望を待つことなく、積極的に地域に足を運び、実態を調べ、課題解決のために地域住民、運行事業者、自治体の3者がよく話し合うことが大切であり、そうした機会を本市が積極的に設けることが必要だと思います。
そこで質問です。
バス交通による地域の移動手段確保に向け、市はどのように取り組んでいるのか。また、地域の実情に応じた公共交通再編検討が示されていますが、どのように進めていくのか、お聞きします。
以上、2回目とします。
◯都市局長(片山幸久君) 地域公共交通網形成計画に係る3つの質問にお答えいたします。
バス交通の利用促進に向け、市はどんなことに取り組んでいるのかでございますが、本市では、バスの利用促進に向けバリアフリーへの対応として、超低床ノンステップバスの導入に対する交通事業者への支援のほか、利便性を高めるためのサイクル&バスライドの駐輪場整備、啓発事業としては、市内に転入される方へのバス路線図の配布や、交通事業者との共同によるバスフェスタの開催などに取り組んでおります。
現在作成している地域公共交通網形成計画では、通勤などに公共交通の利用を積極的に取り入れている企業の表彰制度や、交通事業者と商業施設が連携した企画乗車券などの利用促進策についても、民間事業者とともに取り組みを進めていくこととしております。
次に、バスの運転士不足に対する市の取り組みと安東循環線などの再開の見通しについてですが、本市では、バス事業者と連携して、自衛隊に対し、大型免許を所有している隊員の再就職先としての働きかけや、東京にある静岡市移住支援センターにおいて、移住後の転職先としてバス事業者の紹介をしております。さらに、今年度からは、大型免許を所有している消防職員などに再就職先として情報提供を行ってまいります。
次に、現在休止となっている安東循環線、小鹿線の再開について、事業者であるしずてつジャストラインからは、現時点ではこれら2路線の再開に向けた見通しは立っていないと聞いております。
最後に、バス交通による地域の移動手段確保に向けた市の取り組みと地域の実情に応じた進め方でございますが、本市における地域の交通手段確保については、バス路線廃止に伴う自主運行バスの運行や交通弱者の運送を行う地域交通弱者対策事業の支援など、地域の実情に応じて取り組んでおります。
この事例として両河内地区では、地域の皆さんとの積極的な話し合いにより、平成30年4月から地域住民で組織するNPO法人清流の里両河内が運行する「ココバス」事業が始まり、本年8月末までに延べ8,448人の利用があり、29年度同時期の5,540人に対して約5割増加し、多くの方に利用されております。
今後も、誰もが移動しやすい交通手段の維持・確保に向け、利用の目的や頻度、運行方法などについて、バス利用者や地域の皆さんとの意見交換や技術的支援を行いながら、地域の実情に応じたバス交通の実現に向けて取り組んでまいります。
〔11番杉本 護君登壇〕
◯11番(杉本 護君) 3回目は意見・要望です。
今回は、地域公共交通問題をテーマに質問しました。当局の答弁の中でも、今後、市民の暮らしを支える公共交通のあり方や課題解決で共有できるところもありました。しかし、例えば休止した路線への対応など、事業者任せの感が否めません。形成計画をつくる上で、さまざまな事業者と市民と協力して協議をしていると言っていますが、そういったところがほとんど現実では見えていない気がします。
その上で指摘したい点は、交通事業者、市民、静岡市の3者が連携をもっとできないかということです。御存じのとおり、静鉄のバスが10月1日から10路線に深夜バス運賃を設定し、9路線の運賃は2倍になります。静鉄のバスは紛れもなく公共交通です。その運行には社会的責任があるはずです。この深夜バス運賃の設定に関して本市は、新聞報道の数日前に決定事項を知らされただけだというふうに伺っています。今回、値上げと同時に最終バスの延長もするとしていますが、市民は運賃を2倍にしてまで延長を望んでいるのか、定かではありません。これでは、バス事業に関して事業者側の判断のみが先行し、ともに公共交通を育てていくという関係にはなっていないのではないでしょうか。事業者の立場、地域住民の意見、本市ができることなど、常に3者が協力し合う環境を本市が積極的にかかわり、つくっていく必要があると感じています。
いま1つは、バス運転士不足の問題です。
運転士確保の根本には、事業者による賃金や労働条件の改善があります。そこが改善されれば、運転士ももっとふえていくと私は思っています。しかし、それに加えて労働環境改善の観点で、道路整備の必要性もあるのではないかと思っています。バス運行路線の中には、非常に狭い道路があります。大型バスですから何かあったら即人命にかかわり、バスの運転士は神経をすり減らして走行しています。安全に走行できる、働く環境の改善として、バス路線道路を再点検し、道路整備を進めていく必要があると思います。
そして、公共交通の維持・整備にはそれなりの財源が必要です。この財政支出を公共交通網維持だけで見るのではなく市民が健康で文化的な生活を送るために必要な支出として、国の交付金なども積極的に活用し、財源を確保する必要があると思います。 お年寄りが、まちに出かけることが多くなることによって医療も減る、市全体の財政に寄与するという観点で、この公共交通網に対する財政支出を積極的に行う必要があると思っています。 また、公共交通問題は、民間でできないならば市営バスを運行するくらいの覚悟を持って今後取り組むべきではないでしょうか。この公共交通問題は、そうした市民の暮らしの根幹にかかわる問題として本市は捉えていく必要があると思います。 最後にこの点を指摘して、質問を終わります。