○寺尾昭
ことしも16号、19号、21号と相次いで台風の襲来を受けました。その特徴は大きさ、規模といいましょうか、強さという面で従来のものをはるかに上回っているということであります。
雨量は短時間で500ミリ、600ミリというのが常識になっておりまして、風速も60メートルを超え、さらには、竜巻によって家屋や農業施設へ大きな破壊をもたらすというようなことが頻繁に起こっております。各地に甚大な被害を及ぼしているわけであります。
専門家は、地球温暖化に伴う気候変動による影響で、今後1回の雨量は今までの1.3倍になる、それに伴い河川を流れる水量も1.4倍程度までふえることが予測されると指摘しております。この兆候は既に現在でも顕著であると言ってもいいわけです。
本市においては、道路、河川、農業などに被害を与え、この議会においても災害復旧予算が提案されています。また、台風による避難指示が出されまして、市民の避難行動も今回行われています。
きょうも何人かの方から防災対策ということで質問がありますが、私はことしの台風による市民の避難状況はどうであったのか、その検証と課題について質問したいと思います。
まず、市民への情報伝達についてであります。
情報伝達にはさまざまな手段があるわけであります。同報無線、災害用ラジオ、スマートフォン、パソコン、あるいはメディアもこの災害状況を優先的に報道するわけであります。
問題は、情報を受け取る側の市民はどうであったのか。市民はさまざまな場所に住んでおります。海岸、河川、山の中、斜面など、生活している場所やその環境・条件がみんな異なっており、災害の対応も異なってくるわけであります。情報を受け取った住民が避難すべきかどうかを判断することが難しかったことが、避難することから取り残されたという他県の事例も報道されておりました。
それぞれの環境・条件に応じた災害リスクに基づく情報伝達でなければ、効果を発揮しないということが言えるのではないかと思います。
そこで、質問ですが、住民が避難行動を起こすためには、住民が地域の災害リスクを正しく知ること、行政が地域の災害リスクを考慮した情報伝達を行うことが重要と考えるが、現在の取り組みはどうか、お伺いいたします。
次は、避難所等の課題であります。
今回、避難の指示があったので、避難所となっている近くの小学校に行ったけれども、実は校門の鍵がかかっていたというようなことがあった。そこで、学校に連絡をしてみたら、学校も電話に出なかったという状況があったと私のところにも連絡がありました。
また、小学校が避難所となっている体育館に避難したけれども、避難したはいいけれども、その後の情報がほとんどなかった。テレビも置かれていなかった。台風がどうなったのか、その後避難はしたけれどもわからなかったという状況があったということです。
そこで、質問いたします。
今回の台風19号では、どのような流れで風水害指定緊急避難場所を開設するようになったのか。災害時には避難者が情報を入手する手段が限られる。先ほど言いましたとおりですが、避難所に避難した方への情報伝達をどのような方法で行うのか、お伺いいたします。
また、避難所として指定されている小学校の体育館や多くの公共施設は段差の解消が行われておりません。トイレのバリアフリーなどもまだ不十分です。体育館によってはトイレそのものがない場所もあります。
そこで、避難所施設のバリアフリー対策をどのように進めていくのか、お伺いいたします。
次に、避難所に係る課題は今言いましたように少なくないわけですが、体育館など広い平面に、大勢の人が家族単位で雑魚寝をしている。新聞報道でもありました。一時的な避難で、自宅にも被害がないということであれば、比較的短時間で帰宅できることになりますが、避難が長期化する場合には避難所が生活の場となります。
そこで、問題になるのが、避難所のプライバシーをどうして守るか。これも新聞報道でありました。雑魚寝状態では乳幼児や子供たち、女性、高齢者、障害者などのプライバシーは事実上無視されると言いましょうか、放置されることになってしまいます。
そこで、質問です。避難が長期化した場合に、避難所のプライバシー保護が課題となりますが、市の取り組みはどうか、お伺いいたします。
次に、避難行動要支援者の避難支援についてです。
これまでも避難行動要支援者への対応について、私も質問してきたことがありました。今度の台風災害においても、避難ができないため自宅で命を落としてしまったお年寄りがいたという例が報道されております。せめて、2階に上がることができれば命は助かった。こういう状況もあったということです。
本市においても、障害者が避難するに当たって大変苦労されたことが、私たちのもとにも届いておりますし、これまでの教訓がどのように生かされたのかも問題であります。
風水害における避難行動要支援者の避難支援についてどのように取り組んでいるのか、お伺いして、1回目です。
◯副市長(美濃部雄人君) 私からは、住民が避難行動を起こすための情報伝達の取り組み状況についてお答えします。
災害時の情報伝達に際しまして、市当局では、まず土砂災害や浸水害などの地域の災害リスクを判断します。そして、被災のおそれのある学区や地区に避難勧告等を発表しており、同報無線などのさまざまな方法で警戒レベルや発生が懸念される災害の内容を含めて伝達しております。
また、平時から住民に対して、災害リスクを周知するための想定最大規模の洪水ハザードマップを作成しております。
国や県が管理する主要な9河川のうち、安倍川など5河川については既に作成が完了しており、興津川など残りの4河川についても更新を行い、年内に流域の世帯に配布いたします。そして、その後説明会を実施する予定です。
今回の台風19号の事例では、まず興津川の水位が急速に上がり、洪水発生の危険が高まりました。そこで、対象の地区に避難勧告を発表し、洪水災害発生のおそれがあることや避難場所を同報無線などで伝達しました。
それ以降も、降水量や安倍川、巴川などそれぞれの河川水位の状況を踏まえて、避難勧告を発表いたしました。
また、それとあわせて土砂災害や浸水害などの発生が高まったことや、災害リスクのある地域に対して避難が必要であるとの注意喚起を行いました。
今後も、住民への災害リスクの適時適切な周知や住民が災害リスクを認識しやすい情報伝達の実施に努めてまいります。
◯危機管理統括監(海野剛幹君) 避難所に関する4点の御質問にお答えします。
1点目の台風19号の際の指定緊急避難場所開設の流れについてですが、台風などの大雨により災害が発生するおそれがあると判断した場合は、気象予報等を踏まえて、避難情報の発表や指定緊急避難場所開設のタイミングの目安となるタイムラインを作成しています。
今回の台風でも、最接近の2日前に警戒本部を立ち上げ、タイムラインの作成を職員に周知し警戒態勢をとるとともに、中山間地域では前日から地区支部職員を配置するなど、風水害に対応するための準備を整えました。
台風の最接近当日には、台風の進み方や雨の降り方などを考慮して、タイムラインを急遽前倒しして対応することとし、直ちに地区支部職員に対し参集を指示し、指定緊急避難場所を開設いたしました。
なお、今回は市内でも甚大な被害が発生することが予想されたことから、事前の注意喚起を同報無線で流すなど、細心の対応をとりました。
2点目の避難所等に避難した方への情報伝達についてですが、まず、台風による土砂災害や浸水害など危険を避けるために、指定緊急避難場所に一時的に避難する場合には、地区支部拠点に配備されたラジオ、ポータブルテレビの活用のほか、地区支部職員からの情報提供による情報伝達をすることとなります。
また、短期的な避難の場合、スマートフォンなど個人の情報入手手段を使用することができますが、そのような手段を持たない方にとって、情報を得ることは安心を得ることにもつながることを念頭に、適時必要な情報伝達を行ってまいります。
さらに、地震、津波や洪水などで避難がある程度長期間となる場合には、避難者の生活の場として避難所を開設します。避難所では、避難者に情報を伝達するために掲示板等を設置し、支援物資の供給予定や生活再建に必要な情報を掲示するほか、必要に応じて大型テレビを配置するなどの対応をとり、被災者が一日も早く通常の生活を送ることができるよう必要な情報を提供してまいります。
3点目の避難所施設のバリアフリー対策をどのように進めるかについてですが、その対策のためには、必要なスペースの確保など施設ごとの制約や大規模なハード整備が必要になることから、施設改修にあわせてバリアフリー化を進めるとともに、要配慮者には、必要に応じて援助が可能となるよう共助として避難所内での生活を避難者相互に助け合う体制づくりに取り組んでまいります。
4点目の避難所でのプライバシー保護への取り組みについてですが、長期間にわたる避難生活のストレス低減のためにプライバシーへの配慮は重要と考えており、本市では、着がえや授乳の際などに使用するため、平成27年に市内132カ所の避難所に、それぞれ簡易テントを6張り配置しております。
平成30年7月豪雨では、避難所での間仕切りセットが注目されましたが、必要に応じて災害時の協力協定を締結している民間事業者から間仕切り等の提供を受けることとしております。
実例において、避難者の総意で間仕切りをしないという避難所もあったことから、一律に設置するのではなく、それぞれの避難所の要望に対応できる体制を整えてまいります。
○保健福祉長寿局長(羽根田信人君) 風水害における避難行動要支援者の避難支援についてどのように取り組んでいるのかについてですが、本市では、各地域において、要支援者の避難支援を進めることを目的に、具体的な避難支援方法などを掲載した避難行動要支援者避難支援マニュアルを平成24年度に作成しました。
このマニュアルについては、本年9月に改訂を行い、風水害時の対応方法や要支援者への接し方について内容を充実させたほか、要支援者の避難支援に熱心に取り組んでいる地域の事例を紹介しました。
改訂後のマニュアルには、各地域の実情や特性に応じた取り組みを進める中で活用できるよう、本年10月から11月までの間に各区で行われた自主防災連絡会や民生委員・児童委員協議会常任理事会の場で、自主防災組織や民生委員に配布し説明を行いました。
今回の台風19号が接近した際には、地域で生活している要支援者に対して、自主防災組織が個別に連絡をとり、事前避難の意向確認を行ったという事例や、みずから移動が困難な要支援者を自主防災組織が車を出して移送支援を行ったという事例の報告を受けており、本マニュアルに基づき、地域ごとに避難支援の取り組みを進めていただいております。
本市としましては、地域での要支援者の避難支援がさらに推進されるよう、実際に地域で行われた避難支援の取り組みを把握、検証し、他の地域にも拡大することで、実効性のある防災体制づくりを進めてまいりたいと考えております。
○寺尾昭
最近の被災の特徴に、河川の堤防決壊と溢水──あふれるわけですけれども──氾濫があります。ことしは長野県における千曲川、あるいは阿武隈川という堤防決壊による大水害が被害をもたらしました。
千曲川は河川の幅員が途中から狭隘になっていたことで水位が上がり、堤防決壊に結びついたと言われています。阿武隈川では、堤防決壊とあわせて大河川の水位が上がったため、支流からの流れがストップした。これが氾濫の原因だと言われております。いずれも、これまでに例を見ない豪雨が大災害をもたらしたものであり、今後の対策に生かしていかなければならないと言えると思います。
本市にも一級河川安倍川を初め、多くの中小河川があります。もし今回の被害があった地域と同じような豪雨があった場合に一体どうなっていたのか、不安が募るのは、これは市民共通の問題です。
とりわけ静岡市街地の安倍川が決壊することになったら、被害ははかり知れません。安倍川は国管理の一級河川であります。市の直接管理ではありませんけれども、最近の豪雨の水準に照らして、安倍川の堤防など河川施設について検証と点検が必要ではないか、改めて要望するものであります。
26日には、政府が12月にまとめる経済対策の一環として、河川の水位上昇を防ぐ工事への個別補助制度の創設など、防災・減災施策を進めることにしたという報道がありました。これらもしっかり活用していってほしいと思います。
そこで、質問ですが、台風19号を振り返って、他県での決壊を踏まえ、市街地における安倍川の現状はどうなっているのか、お伺いいたします。
時間が少なくなりました。あと要望を申し上げたいと思います。
これまでの河川管理の基準となっている雨量確率、50分の1とか100分の1とかありますけれども、この確率を見直す必要があるのではないかと私は思うんです。
気象・防災学者の知見に基づいて、新たな雨量の確率を見直しして 河川管理方策を検討していく必要があるんじゃないかと思います。
もちろん防災対策や避難対策等々のソフト対策もさらに強化していく必要があると思います。
安倍川については、改めて各地の河川で決壊が起こっている状況、甚大な被害をもたらしているという状況がありますので、これを教訓として、河川の堤防、それから、前にもちょっと申し上げたんですが、安倍川の河床が高くなっている。これが水位上昇をもたらしているということもあるわけで、この辺についてももう一度見直して、対策を強めていくことが必要ではないかということを要望いたしまして、質問を終わります。
96◯建設局長(松本 隆君) 安倍川の現状についてですが、安倍川の市街地を流れる区間は国土交通省が管理しております。
管理者は、50年に1回発生すると想定されている降雨を安全に流すことを目標とした河川整備計画に基づく河川改修に加え、防災・減災、国土強靱化の3か年緊急対策に基づき、堤防の強化、河道の掘削、樹木の伐採などを進めており、本市では期成同盟会を通じ、市議会、地元の皆さんと一体となって着実に整備が進むよう予算確保に向けた要望活動を行っております。
また、令和元年6月定例会で答弁しましたとおり、堤防などの施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものという考えから、国、県、市で静岡地域大規模氾濫減災協議会を組織し、逃げおくれる人をなくし、経済被害を最小化するなど、減災対策を一丸となって進めております。
その中で、安倍川の決壊を想定し、緊急時に閉鎖する市内13カ所の陸閘操作訓練など、国土交通省や建設業協会と連携し、減災対策に取り組んでおります。