◯杉本 護
通告に従って質問します。
初めに、静岡市中央卸売市場についてお聞きします。
昨年6月に、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律が成立し、来年6月に施行されます。
卸売市場法は、生鮮食料品等の取引の適正化、安定供給などを目的に1971年に制定、今回で3度目の大規模な改正となります。
本改正では、卸売市場の整備や運営への国の関与、責任を大きく後退させ、卸売業者の第三者販売の禁止、仲卸業者の直荷引きの禁止、卸売市場での商物一致の原則などが法規制から削除され、各市場の判断に委ねられます。
私は、この規制緩和で、今まで日本の農業・漁業生産と食生活を支えてきた卸売市場の機能が損なわれるのではないかと考えています。
そこで、伺います。卸売市場法の改正に関し、どのように受けとめているのか、お答えください。
さて、この卸売市場法の改正に伴って、静岡市中央卸売市場業務条例を全部改正する方向が示され、現在パブリックコメントで意見募集をしています。概要はお手元に配りましたとおりです。ぜひこれを見ながら質問を聞いてください。
国の法改正に向けた規制改革推進会議では、市場不要論が出るなど、徹底した規制緩和が議論されましたが、参議院での附帯決議は、規制改革推進会議等の意見は参考にするにとどめ、卸売市場が食品流通において重要な役割を果たしていることを前提に、生産者、流通業者、消費者等の意見や食品等の取引の実態を踏まえて行うことと卸売市場の役割を評価し、制度の運用・見直しは現場の実態を踏まえて行うことを強調しています。
現在の静岡市場は、集荷力の低下、特に青果部での著しい低下が問題になっていて、小売店などからは商品の種類も数量もなく、消費者のニーズに応えられないと卸売業者への不満が出され、その事態を解決できない市場開設者である静岡市に対して、指導する責任を果たしていないとの声が上がっています。この業務条例の改正がそうした現状を打開する方向になっているかが問われています。
そこで、質問です。この条例改正の方向性はどのようなものか、その効果をどのように見込んでいるのか、お答えください。
次に、静岡市中小企業・小規模企業振興条例についてお聞きします。
国においては、2014年10月に閣議決定した小規模企業振興基本計画を本年6月に第II期分として改正し、新たに5年間の計画を策定しました。この中で、2012年と2016年のデータを比較、この4年間で小規模企業のみが減少しており、高齢化と後継者不足により小規模企業の減少が加速すると見ています。
そして、こうした状況に置かれている小規模企業に対して、その活力を最大限に発揮し、成長発展するのみならず、事業を持続し、地域を支え続けることは、経済の好循環を全国津々浦々まで届けていくために必要不可欠と、存在の重要性を強調しています。
本市はこうした状況のもとで静岡市中小企業・小規模企業振興条例を制定し、本年4月1日に施行しました。
まず、お聞きしたいのは、2016年の本市の中小企業及び小規模企業の事業所数は2012年と比べてどのように推移しているのか。また、その状況から小規模企業の経営上の課題としてどのようなことが考えられるのか、お答えください。
以上、1回目とします。
経済局長(池田文信君) 中央卸売市場に関する2つの御質問と中小企業等に関する1つの御質問にお答えいたします。
まず、卸売市場法の改正をどのように受けとめているかについてですが、今回の法改正は、昭和46年4月の卸売市場法制定時から半世紀近くが経過し、生産者の減少、産地直送などによる市場外流通の増加、中食などの消費形態の多様化などの卸売市場を取り巻く環境の変化に対応することを目的としたものです。
この改正は、卸売市場を食品流通の核としつつ、コールドチェーン化やICTの活用による食品流通の合理化と生鮮食料品等の公正な取引の確保を促進するものであると受けとめております。
次に、条例改正の方向性とその効果についてですが、条例改正については、出荷者、消費者及び卸売・仲卸業者などの市場関係者等で構成する開設運営協議会において協議の上、流通の多様化に対応するため、次の3つの取り組みを進めていくこととして、現在パブリックコメントを実施しているところです。
1つ目は取引の活性化です。法における公正な取引の確保等を目的とした共通ルールのみを規定し、第三者販売や直荷引きの原則禁止など、その他の取引ルールによる規制は行わないこととし、取引の活性化を促進します。
2つ目は公正な取引環境の確保です。開設者である本市が適切な指導監督を行うための規定を整備するとともに、市と市場関係者が業務運営について調査審議する場を設置し、公正な取引の促進に努めます。
3つ目は業務の効率化です。書類の省略や廃止による申請方法の見直しなど、事務手続を簡素化することにより、事業者の業務の効率化を図ります。
公正な取引環境を維持しながら、時代の変化への柔軟かつ迅速な対応を可能とすることで、取引を活性化し、市場内の取引量の増加に取り組んでいきたいと考えています。
最後に、本市の中小企業及び小規模企業の事業所数と課題についてですが、経済センサスをもとに本市で推計した平成28年の中小企業数は約3万4,800社となっており、24年と比べ約1,400社減少しています。
そのうち小規模企業の数は──ちなみに小規模企業とは、従業員数が卸売、小売、サービス業で5人以下、製造業、その他の業種では20人以下の企業となっています。平成28年は約2万3,600社で、24年と比べ約1,600社減少しています。
これは、小規模企業のみが減少し、それ以外の企業が増加している状況であり、本市も全国と同じ傾向にあると言えます。
小規模企業はその規模から、一般的に人材や資金などの経営資源に制約があり、また、経済や社会の構造変化の影響を受けやすいと言われています。
本市や静岡商工会議所の景況調査においても、小規模企業の経営上の問題点として、従業員の確保、資金の調達、生産能力の向上、後継者の育成などが挙げられており、これらが事業活動を継続していく上での課題であると考えています。
◯杉本 護
2回目です。
静岡市場について引き続きお聞きします。
先ほどの答弁で業務条例を改正する方向性と効果が示されましたが、私は幾つか懸念する問題があります。
まず、業務条例の改正の方向では、第三者販売の禁止や直荷引きの禁止を廃止しました。そうなると、大手スーパーや外食産業との直接取引が拡大し、買い手の力が強くなり、買いたたきなどが起こって、市場での公正な価格形成ができなくなるのではないでしょうか。
従来は、市場において仲卸業者の目ききのもと、競りによって適正な価格形成がなされてきました。相対取引でも仲卸業者の評価機能が発揮され、相場を形成してきました。改正の方向では、このような仕組みが壊されていくように思います。
そこで、お聞きします。市場における価格形成をどのように担保していくのか、お答えください。
次に、商物一致の原則、この廃止により、商品は市場を通さない市場外での取引が拡大されます。これまで市場を通すことで商品管理がされ、静岡市の農産物などは全国的にも良質の物との評価をされているとのことです。
そこで、お聞きしますが、商物一致の原則の廃止に伴う直送品の品質管理はどのように行うのか、お答えください。
3つ目として、市場における商品売買の基本的な流れは、生産者から卸売業者へ、さらに仲卸業者、商業協同組合を通じて小売業者へとなっていて、それぞれが決済期日を設ける中で決済機能が有効に働き、各業者は安心して売買することができています。市場外ではこのようなルールはありません。
そこで、お聞きします。第三者販売や仲卸業者の直荷引きに伴う市場外の取引が増加すると、市場内での決済機能のリスクが増大していくのではないか、お答えください。
次に、静岡市中小企業・小規模企業振興条例についてですが、本条例は前文で地域社会が一体となって中小企業・小規模企業の重要性を共有し、その振興に取り組むために条例を制定したとあります。また、本年2月の議会でも、オール静岡市で取り組むことを当局は強調しています。小規模企業の減少が続く中、まさに本市の本気度が問われています。
そこで、2点伺います。
1点目は、中小企業・小規模企業に対する支援を全庁挙げて行うために、庁内及び庁外でどのような取り組みを行っているのか。
2点目は、小規模企業の経営課題の解決に効果が見込める取り組みはどのようなものがあるのか、お答えください。
以上で2回目の質問とします。
◯経済局長(池田文信君) 最初に、中央卸売市場に関する3つの質問にお答えします。
まず、市場における価格形成をどのように担保していくかについてですが、現在は卸売業者や仲卸業者が他市場における売買取引の結果をインターネットなどにより収集し、相場を把握することにより価格形成がなされ取引が行われています。
改正卸売市場法では、卸売の数量や価格などの売買取引の結果、次の卸売予定数量などの公表について、条例等に定めることが義務づけられます。
これにより、卸売業者や仲卸業者はこれまで以上に取引の相場を把握しやすくなることから、今後も価格形成は担保されるものと考えています。
次に、商物一致の原則の廃止に伴う直送品の品質管理についてですが、市場における直送品の取引とは、卸売業者は注文と決済のみを行い、商品は出荷者が小売店等の顧客に直接送る取引であり、物流コストの低減や注文から納品までの時間の短縮につながるものです。
本市場では、現在直送品の取引として冷凍食品などが扱われていますが、卸売業者みずからが商品のサンプルによる検品などを行っており、改正後についても現在と同様の品質管理が行われるものと考えています。
次に、第三者販売や仲卸業者の直荷引きの増加による売買決済リスクについてですが、第三者販売とは、卸売業者が同一市場内の仲卸業者や売買参加者ではなく、他市場の卸売業者や加工業者などの第三者に販売することです。また、仲卸業者の直荷引きとは、仲卸業者が市場内の卸売業者に限らず、産地や他の市場から直接集荷するものです。
このような市場外の取引により、卸売業者にとっては販売先の、また、仲卸業者にとっては仕入れ先の選択肢がふえることになります。
その一方、これまで代金決済が担保されていた代払いを介さない取引となることから、取引方法の選択については、それぞれの事業者みずからがリスクマネジメントを踏まえて行うべきものであると認識しています。
次に、中小企業等に関する2つの御質問にお答えします。
まず、中小企業・小規模企業に対する全庁挙げての支援についてですが、複数の局や外部の機関と連携し、さまざまな観点から取り組んでいます。
例えば人材確保の観点では、保健福祉長寿局と静岡商工会議所等との連携により、シニア世代のさまざまな働きたいというニーズと企業の人材ニーズとのマッチングを行う「NEXTワークしずおか」を本年6月に静岡庁舎に開設し、これまでの5カ月間で100名以上の就労につなげています。
また、将来の担い手の育成の観点では、教育委員会、地元ホビーメーカーとの連携により、小学校でのプラモデルづくりの体験や静岡ホビーショーでの見学支援を行い、子供たちのものづくりへの理解と職業観の醸成を図っています。
さらに、販路等の拡大の観点では、東京事務所との連携により、本市が入居するコミュニティ型ワークスペースWeWorkの持つ連携や交流機能を生かし、本市の中小企業に関する情報発信や会員企業とのビジネスマッチングを促進する事業を実施しています。
また、市民局とは、女性が開発に貢献した商品を「しずおか女子きらっ☆」ブランドに認定し、PRする事業を行っています。
このような本市の庁内外での取り組みをさらに進めることで、本市の中小企業・小規模企業の持続的な成長と発展を支えてまいります。
最後に、小規模企業の経営課題の解決に向けた取り組みについてですが、小規模企業が事業活動を継続していくためには、企業の成長段階などにおけるその企業が置かれた状況に応じた支援が効果的であると考えています。
そこで、創業期から成長期については、窓口相談や専門家派遣による事業計画の作成や磨き上げ、資金調達や新商品開発におけるマーケティング手法の提供などの支援を行っています。
そして、経営の安定期や持続的な発展に向けては、静岡商工会議所と連携し、構造的な労働力不足に対応するためのIT導入による生産性向上支援のほか、後継者不足に悩む事業者に対し、経営改善から後継者とのマッチングまで、寄り添った事業承継支援を進めています。
また、緊急的な支援も必要であり、現在、サクラエビの不漁に伴う喫緊の課題に対応するため、加工業者等を対象に、円滑な資金調達を支援する融資制度や新商品開発など経営の多角化に対する助成制度を創設し、事業活動の継続はもとより、雇用の維持にもつなげる取り組みを進めているところです。
小規模企業は地元に密着し、地域社会に貢献していただいている存在であることから、今後も課題やニーズを把握しながら経営課題の解決に向けた支援を進めてまいります。
◯杉本 護
3回目は意見・要望です。
今回、まず静岡市場を質問に取り上げたのは、主に青果物を扱う小売業者からの市場に買いたい物がそろわないといった声からです。
今回の業務条例の改正の方向で、その解決の方法を探ってきました。しかし、卸売市場の第三者販売は自由化の方向で本当に市場の集荷量がふえていくんでしょうか。
卸売業者は利益が上がると見込めば、市場外の取引を拡大し、本来するべきである市場内のニーズに応えた商品をそろえる、そういった努力が弱まるのではないでしょうか。現在でも集荷量が減っているこの状況の解決にはならないのではないかと考えます。
小売店は市場を頼りにしています。市場に来れば欲しい物が手に入り、消費者のニーズに応えられる。こうした静岡市場を望んでいるのです。
また、卸や仲卸、小売とつながることで、地域の経済循環をつくることもできると思います。業務条例を改正する方向については、今、パブコメによる幅広い市民の声をしっかりと受けとめると同時に、市場にかかわる各分野の専門業者の声も、先ほど幾つかの関係機関と協議したと言っていましたが、もっと広く深く聞く機会を設けるべきだと思いますので、ぜひその点は御検討ください。
静岡市中小企業・小規模企業振興条例について、施行されてまだ半年余りですから、多くの課題を望んでも 申し訳ないかと思います。
しかし、小規模企業の経営は大変厳しく、そして消費税増税によってその厳しさは増しています。この10月の売上高も、前回消費税増税と比べて減少率が、より多いと。7.1%という数字も出ています。そういった状況に、今、置かれているのが小規模企業者です。
自治体の役割は住民の福祉の増進ですが、それを支えているのが経済であり、そして、その本流は中小企業・小規模企業であるはずです。ぜひ条例を生かした、そして実効性のある取り組みを今後ともさらに推し進めることを切にお願いして、私の質問を終わります。