水道料の値上げについて

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◯12番(杉本 護君) 通告に従い、質問をします。
 市は、本議会に水道料金を14.8%値上げする条例案を提案しました。具体的には、水道利用世帯の約9割を占める一般家庭向けの口径の場合、基本料金が税込みで月額352円、年間では4,224円の値上げです。市の説明は、全長2,600キロの水道管を耐用年数83年で更新するのに多額の費用が必要となり、不足分の負担を市民にお願いするものです。
 大切な水を安定的に供給するため、水道管の更新は重要な事業だと考えています。しかし、この値上げは、給水普及率が99%を超える中、ほとんどの市民が影響を受けます。経営戦略のパブリックコメントには、月額300円でも値上げはきつい、税金で賄ってほしいとの意見が寄せられています。消費税が10%に増税され、暮らしが一層厳しくなっているときです。市は、こうした意見に真摯に向き合い、値上げ回避のためにあらゆる努力をすべきです。
 まず、基本姿勢について伺います。
 水は、生きていく上で欠かせません。それゆえ、水道事業は高い公共性を持っています。とかく企業会計は赤字を出してはいけないと経済性が強調されますが、地方公営企業法第3条の経営の基本原則は、常に企業の経済性を発揮するとともに、本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならないと規定しています。
 さらに、本市の施策に取り入れているSDGsの目標6の中のターゲットの1つに、全ての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ公平なアクセスを達成するとあります。
 そこで、2点お聞きします。
 1つ目は、経営の基本原則を規定した地方公営企業法第3条について、とりわけ公共の福祉の増進についてどのように捉えているか。2つ目は、SDGsを推進する市として、今回の値上げ案についてはどのように捉えているのか。以上、お答えください。
 次に、水道事業の計画性についてお聞きします。
 水道管の耐用年数に伴う更新時期は、初めから分かっていることです。今回の経営戦略は、何か急につくられた感があります。他都市と比べ更新率が低く、早急に対応しなければならない老朽管が200キロもある状況は、計画的な更新作業を怠っていたのではないかとさえ感じます。
 市は、旧静岡市と旧清水市の合併時の事業として渇水対策の北部ルートなどの事業を優先したことで、財政的な問題から更新作業が遅れたかのように言っています。合併時の約束なら、市全体が取り組む事業であり、一般会計からも財政措置をすれば更新作業はもっと進んでいたのではないかと思います。
 そこで、お聞きします。
 1つは、経営戦略を策定する前は、水道管の更新をどのように考えていたのか。もう1点、北部ルートなどの事業に係る費用について、当初、一般会計からの補助などを検討したことがあるのか。以上、1回目とします。

◯上下水道局長(森下 靖君) 水道料金の値上げに関連した4点の御質問にお答えいたします。
 まず、地方公営企業法でいう公共の福祉の増進についてですが、同法第3条で、「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」とあります。水道事業においては、市民の生活に必要不可欠で代替のきかない水道水を安全かつ安定的に届け続けることが公共の福祉に寄与するものであり、この業務運営に当たっては、企業としての経済性を発揮して効率的な経営を図ることが求められていると考えております。
 次に、SDGsと値上げとの関連についてですが、このたびの料金改定は、水道管や水道施設の老朽化対策などを加速させ、持続可能な水道事業を実現するためにお願いするものであります。全ての人に安全な水を届けることができ、かつ安定的で持続可能なサービスを確保できることを目標とするSDGs目標6の安全な水とトイレを世界中にや、目標11の住み続けられるまちづくりをなどの理念に沿うものと考えております。
 次に、経営戦略を策定する前の水道管の更新についてですが、高度経済成長期であった昭和40年代以降に大量に布設した水道管が更新時期を迎えつつある中、水道管の老朽化対策にも取り組んでまいりました。
 しかしながら、静清合併に伴う南部ルート、北部ルートの水の相互運用事業、さらには老朽化の著しかった蒲原第1浄水場、由比第1浄水場などの施設の更新事業を優先すべきと判断し、経営資源を投入してきたところです。平成30年度に経営戦略を策定する中で、改めて水道管の更新を課題と捉え、更新事業を加速させていくことといたしました。
 最後に、北部ルート事業への一般会計からの補助についてですが、水道事業は、地方公営企業として独立採算制により運営しており、一般会計からの補助は検討いたしませんでした。
  〔12番杉本 護君登壇〕

◯12番(杉本 護君) 2回目です。
 SDGsの目標6の中には、安価なとあります。安い水を提供する、これもSDGsの精神です。しかも、まさに北部ルート等を優先したことが遅れた原因だということも今はっきりしました。
 さて、水道事業において、市民に命の水を安く提供するための財政運営は、水道料金以外で収入を増やし、無駄な経費を削減することしかないと思っています。パブコメでも国の補助や税金の投入などを求めていますが、市は、これまでどのような努力をしてきたのかをお聞きします。
 1つ目は、国や県からの補助、市からの出資、借入金の借換えなど水道事業の財源確保への取組について。2つ目は、補助金の確保や財政措置の拡充など国に対してどのような要望活動を行っているのか。以上、2点お聞きします。
 次に、地方公営企業法第17条の3について伺います。
 これは、特別の理由により必要がある場合は、一般会計からの補助金を認めるものです。特別の理由には様々な解釈がありますが、1つの例として、仙台市高速鉄道事業会計への一般会計からの補助金の裁判で、必要性と合理性があれば、赤字補填の補助金を出すことを認める判決が出ています。
 そこで、お聞きします。
 老朽化した水道管の早期更新のため、一般会計からの補助金について、地方公営企業法第17条の3にある特別の理由により必要がある場合を活用できないのか、また市の判断で補助した場合、何らかの罰則があるのか、伺います。
 次に、市民の理解への努力についてお聞きします。
 水道料金の値上げについては、経営戦略の発表以降、議会や委員会で議論され、多くの議員の方々からも市民の理解が得られるよう丁寧な説明を求めています。私は、広報紙やホームページへの掲載だけでは不十分だと思っています。
 そこで、お聞きします。
 市民の理解を得るために、この間どのように取り組んできたのかを伺って2回目とします。

◯上下水道局長(森下 靖君) 同じく4点の関連する御質問にお答えいたします。
 まず、水道事業の財源確保への取組についてですが、国や県からの補助金については、国から生活基盤施設耐震化等補助金及び社会資本整備総合交付金、さらに県から地震・津波対策等減災交付金を受けており、要件を満たす補助金などは活用しております。
 次に、市からの出資金についてですが、出資は、一般的に地方公営企業の財政的基礎の充実を図るため、建設改良等の目的で一般会計などから出されるもので、公営企業として独立採算での経営努力を行っている本市水道事業では、これまでに実績はありません。
 次に、借入金の借換えについては、平成19年度と20年度に、補償金を支払わずに繰上償還できる公的資金補償金免除繰上償還の制度を活用し、高金利の企業債を低金利のものに借り換えております。
 そのほか、不要な土地の売却や資金運用、さらに来年度から上下水道局庁舎の来庁者駐車場の貸出しを実施するなど、財源の確保に努めてまいります。
 次に、国に対する要望活動についてですが、例年、全国市長会や東海市長会などのほか、水道分野では、独自に大都市水道事業管理者会議や日本水道協会を通して、大量に更新時期を迎える老朽化した水道施設の更新・改良等のための新たな補助金・交付金制度の創出や公的資金補助金免除繰上償還制度の復活など、財政措置に係る制度の拡充を要望しております。
 次に、特別の理由により必要がある場合、一般会計からの補助を活用できないかについてですが、地方公営企業法第17条の3で、「地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には、一般会計又は他の特別会計から地方公営企業の特別会計に補助をすることができる。」とありますが、特別な理由とは、災害に準ずるような事態であり、平常時における水道管の更新に対しては活用できないものと判断しております。
 なお、市の判断で補助した場合、罰則の規定はございません。
 最後に、市民の理解を得るための取組についてですが、まず、平成30年度に経営戦略を策定する過程で実施したパブリックコメントにおいて、令和2年度から料金改定が見込まれていることについて市民の皆様から御意見を頂き、それらを反映させた経営戦略について、平成31年4月に上下水道局広報紙「くらしと水」で周知させていただきました。
 今年度に入り、公募市民や学識経験者などで構成される上下水道事業経営協議会において御審議いただく一方、市内各区の自治会連合会やプール事業者、ロータリークラブなどの各種団体に対し、料金改定の必要性について説明させていただきました。
 さらに、来庁された市民の皆様へ周知するために、各区役所のケーブルテレビで放映するとともに、報道機関に情報提供を行い、新聞やテレビで多数取り上げていただくことができました。
 今後は、本定例会にて料金改定の条例案が議決された際には、料金改定について周知するための「くらしと水」5月臨時号を作成し、市内全戸へ配布する予定です。
  〔12番杉本 護君登壇〕

◯12番(杉本 護君) 3回目は、意見・要望として、質問もします。
 今回、水道料金の値上げを抑えることができないかとの観点からいろいろとお聞きしました。この間、市もそれなりの努力をされていることが今の答弁で分かりましたが、地域からの声を聴くと、多くの市民は十分な理解をしているとは言えません。そして、そうした状況の下で、料金の値上げを抑えるには、一般会計からの補助を行うしかないようにも思います。
 先ほど一般会計からの繰り出しについて災害並みの事態と言いましたけれども、市の判断で補助した場合の罰則はないとの答弁もありました。国は、市の判断に委ねるということも意味していると思います。要するに、市の政策的な判断によって可能だということです。
 私は、不要不急の事業など真剣に見直せば、財源の確保はできると思っています。昨日、市長は、答弁の中で法令が合わない場合には変えて、解釈を変えればいいというような答弁もなさいました。この繰入れについては、そういう解釈をすればいいのではないかと私は思います。
 また、市長は、市民目線ということも強調しました。ぜひ考えていただきたいと思っています。目の前で暮らす市民の暮らしを支えるのが市の責務です。消費税増税、減り続ける年金、医療費の負担増など国の悪政で暮らしづらくなっている今、大いなる決断が必要です。さらに言えば、安くてうまい静岡の水は、全国に誇る静岡らしさの1つではないでしょうか。そして、人口減少対策の王道である暮らしやすいまちづくりにつながります。
 そこで、最後の質問です。
 料金値上げは凍結し、再検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。
 この点をお聞きして、質問を終わります。

◯上下水道局長(森下 靖君) 水道料金値上げの凍結・再検討についてですが、水道料金の改定を凍結し、老朽化した水道管等の更新を先送りすることは、市民生活に直結するライフラインが危うくなり、大規模災害時はもとより、日常生活にも大きな影響が出ることが懸念されます。このため、今回の料金改定を凍結・再検討することは考えておりません。