◯12番(杉本 護君) それでは、日本共産党市議団を代表して、議案第149号静岡市清水庁舎の移転新築計画に関する住民投票条例の制定についての質疑を行います。
3人目となりますから、類似した質問もあるかと思います。しかし、一つ一つ誠実な答弁をお願いしたいと思います。
田辺市長は、静岡市の有権者5万2,300人が求めた住民投票条例の制定について、反対との意見をつけて本議会に付議しています。
この住民投票条例案は、清水庁舎の移転新築計画に関して、住民の意思を反映させることで市政の民主的かつ健全な運営を図ることを目的とし、清水庁舎を解体して清水駅東口公園の土地に移転新築することに対して、住民投票で賛否を問うものとなっています。そして、その結果については、市議会及び市長に尊重することを求めています。
現在の地方自治制度は、有権者が知事や市町などの首長や地方議会の議員を市民の代表として選挙で選び、選ばれた者が地方政治を行うという間接民主主義が原則となっています。
しかし、このような間接民主主義では、時として選んだ市民の意見を正確に地方政治に反映できない場合があります。例えば、非民主的な市政運営であったり、あるいは、市長や議員が選挙で選んだときと考え方が変わることさえあり得るからです。
そうしたことに備えて、市長が意見書で述べているとおり、間接民主主義の補完的制度として、広く住民の総意を的確に把握するために、住民投票条例の制定をはじめとする直接請求制度が定められています。
その一方、市民自身が市長や議員を選挙で選んでいるわけですから、行政運営の良否も市民自身の責任でもあります。そのために、直接請求も少数の市民の意見ではできません。条例の制定を求める直接請求は、有権者の50分の1以上の署名簿による住民の連署が必要です。
今回提出された連署は5万2,300人分で、法定必要数の4倍以上の署名が集まっています。このことは、多くの市民が政治への関心を高めて、住民投票によって市政への参加を求めているあかしであり、そうした市民の思いを無にしては政治不信が広がります。
そこで、質問いたします。
住民投票を求める連署が5万2,300人分も集まったということについて、市長はどのように受け止めているのか、お答えください。
住民投票の実施に当たっては、本市の自治基本条例の第25条で「市長は、市政の特に重要な事項について、広く住民の総意を把握するため、条例で定めるところにより、住民投票を実施することができる。」とされています。
田辺市長は、住民投票条例の制定に反対する市長意見の中で、清水庁舎整備等事業については、その意思決定に係る経緯において、基本的な方針策定の段階から広く市民の意見を反映し、または直接に対話の機会を設ける手続を取った点において、市民の意見の集約が十二分に図られたものであり、その意見の集約を踏まえて、市議会における意思決定が既になされている案件というふうに述べている。すなわち、民主的なプロセスで意思決定したものだから、改めて住民投票で市民の意向を確認する必要はない、こういう旨の考え方を示しています。
しかし、その意思決定を行った昨年9月議会までの間に、清水庁舎移転新築計画に関して本当に十二分に意見の集約がなされたのか、移転新築の必要性や安全性について正しい情報を市民に発信したのか、さらには、移転新築計画は市民の意見が正しく反映されたものとなっているのか、この点が、今回、住民投票を求めた市民の皆さんとの意見が決定的に違うところとなっています。
本市は、意見書の中で新清水庁舎整備に係る意思決定に至る経緯を述べていますので、その中で幾つかお聞きします。
まず、方針決定についてです。
意見書の中で市は、清水庁舎の整備について、市民への情報提供や幅広い意見聴取を行いながら、時間をかけて検討を重ねてきたとしています。そして、その1つとして、新清水庁舎建設検討委員会を11回、全て公開の下で開催し、市民に開かれた議論を重ねてきたことを取り上げています。
そして、この委員会の中では、清水庁舎を清水駅東口公園に移転新築することについて、防災面、コスト面、まちのにぎわいづくりなど多方面にわたってさまざまな意見が出されていたことは皆さんも承知のことと思います。
そこで、質問です。
新清水庁舎建設検討委員会の総意として、清水庁舎の清水駅東口公園への移転を決めたのはどのような段階だったのか、伺います。
市は、新清水庁舎の建設に当たって、南海トラフ巨大地震や津波に対する防災機能として、建物は免震構造でピロティ形式にし、耐震性能を最高水準にしたと述べています。そして、このピロティ形式については、建物の下の部分が柱となって空間ができるため、津波を一定、受け流す効果があるとしています。
その一方で、阪神・淡路大震災の経験では、1階に空間を作って駐車場となった建物の多くは1階部分がぺしゃんこになったことは事実として記録されています。私も震災直後に泊まり込みのボランティアに行きましたが、道路脇の建物の2階が軒並み1階になっている、そうした光景は今でも脳裏に焼きついています。
また、津波は瓦れきや車、建造物などさまざまなものを押し流し、建物にぶつかることでかなりの損害を与えると同時に、瓦れきなどが建物への進入を妨げるなど、これは東日本大震災での経験から明らかです。
そこで、質問します。
意見書で触れられている新清水庁舎の耐震性能とピロティ形式の津波への有効性について、これまで市民にどのような説明をしてきたのか、伺います。
市は、津波浸水想定区域に清水庁舎を建設するため、防災機能強化の1つとして、ペデストリアンデッキや立体駐車場を同時に整備することで約1万2,000人が避難できるとしています。
新清水庁舎建設基本構想では、南海トラフ巨大地震での震度は6強から7の揺れを想定し、津波については1メートルから3メートルの浸水深、到達予想時間は15分以内を想定しています。
そこで、質問します。
意見書ではペデストリアンデッキが緊急避難場所の役割を担うとしていますが、その安全性について、これまで市民にどのような説明をしてきたのか、伺います。
以上、1回目です。
29◯市長(田辺信宏君) 私からは、冒頭の5万2,300人の署名が集まったことの受け止めについてお答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、今回の住民投票条例の制定を求める本件については、地方自治法にのっとった適切な請求であります。これは、清水のまちづくりについて高い関心が寄せられたものであると受け止めております。
また、清水区はもとより、葵区、駿河区からも署名があったことは、今後、ともによりよい清水のまちをつくっていきたいという思いの表れであると考えています。
あとは局長から答弁させます。
◯企画局長(松浦高之君) 3つの御質問にお答えいたします。
まず、清水駅東口公園への移転の決定はどの段階だったのかについてですが、平成29年度に新清水庁舎建設基本構想を策定する際に、新清水庁舎建設検討委員会において、移転建て替え、現地建て替え、現庁舎の大規模改修の3案の比較検討や移転場所等について御議論いただき、清水駅東口公園への移転建て替え案が優位であるとの評価をいただきました。
その検討委員会での評価を受けて、市は新清水庁舎建設基本構想案を作成し、パブリックコメントで市民の皆さんからの意見聴取を経て、清水駅東口公園への移転建て替えを方針とする新清水庁舎建設基本構想を平成30年3月19日の経営会議において決定いたしました。
次に、新庁舎の耐震性能とピロティ形式の津波への有効性及び市民への説明についてですが、新庁舎の耐震性能については、想定される大地震にも耐え、業務継続ができる水準とすることを説明してまいりました。
ピロティ形式の有効性については、国の指針等において、津波荷重が小さくなる構造形式としてこのピロティ形式が示されております。
仮に、津波による瓦れきなどが建物に接近したとしても、まずは周囲に高木等を植樹することで建物への接触を防ぎ、さらに、漂流物が建物の柱に衝突したとしても、柱の外装仕上げをそれに耐えられる構造としていることなどで、建物の安全性を確保していくことを説明してまいりました。
これらの内容については、市長ミーティング室などを活用し、清水区の自治会連合会や経済団体などに市長自らが説明を行ったほか、担当職員による清水区の全ての自治会への事業説明や、当事業に関心を持たれている市民の皆さんと面談を重ねてまいりました。
加えて、令和元年9月号の広報紙では、新庁舎の防災機能について詳しい記事の掲載を行ったほか、SNS等を活用した情報発信をすることにより、広く市民の皆さんに御理解いただけるよう努めてきたところです。
次に、ペデストリアンデッキの安全性についてですが、ペデストリアンデッキの設計においても、建物と同様、国等が示す基準や指針に基づき適切に設計していくことにより、ペデストリアンデッキの安全性を確保していくこととしております。
それらの内容についても、先ほどの新庁舎の耐震性能とピロティ形式と同様に説明を重ねてまいりました。
◯12番(杉本 護君) 2回目です。
答弁いただきましたが、結局、さまざま発信したと言いながら、その中身は市民に伝えたと言いつつ、市民はそれに納得していないということがはっきりしているんではないでしょうか。
質問を続けます。市民との対話についてです。
市は、基本構想及び基本計画の策定に当たり、多くの市民意見を集約し、その結果を反映してきたとして幾つかの事例を紹介しています。
その一方で、住民投票条例の制定請求の趣旨の中に、市が事例に挙げている市民アンケートやパブリックコメントに寄せられた意見や、あるいはマスコミの世論調査を取り上げて、市民は移転新築に納得していないとしています。ここに大きな食い違いが出ているわけです。
そこで、質問です。
意見書で言っている清水まちなかタウンミーティング、市民ワークショップ、市民アンケート、パブリックコメント、こういったことを実施していますが、多くの市民意見を集約したとあります。それぞれの意見にはどのような傾向があったのかを伺います。
市民との対話について、もう1点お聞きします。
田辺市長は、平成29年2月から3月にかけて、清水のまちなかタウンミーティングを開催して以降、清水庁舎建設に関しての全市民対象の説明会や意見交換会の場を設けておらず、さらには、清水のまちづくりを真剣に考えて、清水駅東口公園への移転に反対の立場を取っている市民団体の皆さんとは会おうともしていませんでした。このことについてお聞きしたいと思います。
改めて聞きます。意見書では市民から直接の意見聴取も実施したとありますが、清水まちなかタウンミーティングを開催して以降、なぜ市長は誰でも参加できるような形での集会、そして要望を受けた団体との面会を行わなかったのか、そこの真意を伺います。
最後に、田辺市長が市長意見の結びで、清水のまちづくりについては、引き続き市民との対話を重ねて、港町の歴史と自然に向き合いながら、世界に誇れる国際海洋文化都市の実現を目指していきたいとの考えを示している点についてです。
清水の将来ビジョン、明日の清水のまちづくりの策定時や新清水庁舎建設検討委員会での議論の終了時、そして静岡市都市計画マスタープランの策定時、さらには経営会議での清水庁舎の建設を決定したそのとき、いずれのときも新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の暮らしや経済がここまで大きな打撃を受ける事態が来るということは誰も予測はしていませんでした。
田辺市長は、6月の定例議会の初日に、コロナ禍の下で5大構想の中枢を担う海洋文化施設、新清水庁舎、歴史文化施設という3つの大規模事業を一旦停止する判断をしたことの説明を行いました。
市長は、その中で、人々の意識や世界全体の在り方がコロナ流行前とは大きく変わろうとしている。状況の変化や新たな価値に積極的に対応して、コロナと共存していく新しい時代における発展の姿を描いていかなければならない、このように述べています。そして、このような時代認識を踏まえて、めどが立ったものからリスタートさせる、こういった考えを示しました。
市長の言うとおり、市民の意識や世界全体の在り方が大きく変わろうとしています。すなわち、清水庁舎の建設についての市民意見についても変化があるということになるわけです。
そこで、質問いたします。
住民投票という手法を含めて、市民の意向確認について今後行う考えはあるのか、以上を伺って質疑を終わります。
◯企画局長(松浦高之君) 3点の御質問についてお答えいたします。
まず、パブリックコメントをはじめとした市民意見についてですが、平成28年度に8回開催した清水まちなかタウンミーティングでは、1,760人の方から2,442件の御意見をいただき、平成29年度の基本構想策定時に実施した2,000名の市民を無作為抽出した市民アンケートでは、839件の御意見をいただきました。
また、パブリックコメントについては、基本構想、基本計画策定時に合計2,533件の御意見をいただきました。
これら以外にも、幅広い世代の方が参加した市民ワークショップを実施したほか、子育て、障害者支援などの団体からヒアリングも行いました。
さまざまな手法で聴取した御意見の全体的な傾向としては、地震や津波などの防災面について懸念する御意見がある一方、市の計画に対し施策がよりよくなるための御意見や、移転による庁舎建設によりまちの活性化に期待する御意見もいただきました。
次に、要望を受けた団体等との面会を行わなかったことについてですが、清水まちなかタウンミーティング以降は、市長自らが清水区の自治会連合会や経済団体など、清水のまちづくりについて関心の高い市民の皆さんと対話を重ねたところです。
また、担当職員は、清水区の全自治会に順次出向いて事業説明を行ったほか、当該事業に関心を持たれている市民の皆さんと面談を重ねるなど、事業に対しての意見聴取を広く行ったところです。
次に、今後の市民の意向確認についてですが、当事業については、その意思決定に係る経緯において、基本的な方針策定の段階から広く市民の意見を反映し、または直接的な対話の機会を設ける手続を取った点において、市民の意見の集約が図られたものであり、その意見の集約を踏まえて、意思決定が既になされている案件です。
したがって、当事業に関し、改めて住民投票による市民の意向確認を行う考えはございません。