◯37番(内田隆典君) 日本共産党静岡市議会議員団を代表して、ただいま議題となっています議案第149号静岡市清水庁舎の移転新築計画に関する住民投票条例の制定について、賛成の立場で討論を行います。
市長は、本条例の制定について反対の意見書をつけました。市長は、本当に清水庁舎を津波浸水想定区域に移転することについて市民の理解が得られると思っているのでしょうか。今回提出された住民投票を求める署名が法定数の約5倍に達したこと、署名を通して伝わった市民の声が、移転に疑問が圧倒的多数であったことなど、市長のこれまでの説明ではこれらに対してどのような考えがあるのか示されておらず、事業推進を強行することへの説得力は全くありません。
清水庁舎の移転計画は、2011年3月11日に発生した東日本大震災を受けて現清水庁舎の耐震診断が行われ、倒壊する危険性は低いがかなりの被害を受けることが想定されることが判明しました。また、地下にある電気設備などに被害を受ける可能性があることも明らかになりました。
市は診断結果を受け、現地建て替え、現庁舎の大規模改修、移転建て替えの3案の検討に入り、議論の末、出した結論は、清水駅東口公園への移転新築です。しかし、この計画案に対しては、なぜ建て替えするのにわざわざ津波浸水想定区域に庁舎を移転させるのか、多くの市民の中で不安と疑問が広がっていきました。
市は計画に対し、清水まちなかタウンミーティングを8回、市民ワークショップや市民アンケート2,000人、自治会・地元経済界・公募市民等で構成する清水庁舎建設検討委員会で2年にわたって11回の議論を開催し、市民の意向を確認・集約してきたとしています。
しかし、建設検討委員会の委員の、もっと地震問題等を議論したかったとの発言に見られるように、地震津波対策や津波浸水想定区域に庁舎を移転することの是非を含め、議論が十分であったか疑問であります。また、パブリックコメントでは828件の意見が出され、その中で一番多かったのが、津波浸水想定区域への庁舎移転計画について疑問視する声が134件でありました。
市長は、こうした事実結果を無視し、いろんな場面において市民の意向を確認・集約し、計画を進めていると繰り返しますが、市民からは意見の集約の中で一度たりともこの庁舎建設についての賛否は確認されていないことが、8月4日、総務委員会の中でも改めて明らかになりました。市長の考えを優先させて、事業を強引に推進してきたのが庁舎の移転計画であります。
このように、市民の意見を全く聞こうとしない市長に対し、今回、住民投票を求める直接請求が出されてきたのであります。署名は、2か月という限られた日程の中で5万2,300筆が集められました。清水区では衆議院選挙4区補欠選挙があり、また、新型コロナウイルスの感染拡大という問題もあり、事実上1か月しか取り組めなかったにもかかわらず、3万1,421筆、有権者比で15.7%の署名が集められました。
この数は、市長が言うように市民のまちづくりに対する関心の高さという単純なものではなく、市民の意向を全く聞こうとしない市長への怒りとともに、議会に対する期待の表れではないでしょうか。
市議会は、8月3日本会議で質疑、4日、総務委員会で請求代表者の意見陳述、質疑が行われました。意見陳述では、6名の請求代表者から意見表明が行われました。共通して出された意見は、住民の意向を正確に反映しない中、一旦決めた計画は何が何でも修正しないとした市の姿勢についての不信と疑問、なぜわざわざ津波浸水想定区域に庁舎を移転するのか、100億円もかかる事業について慎重に判断すべき等、市の計画推進に対する傲慢な姿勢に対する不満、怒りが語られました。
市長は、これまで事あるごとに市民に対し十分な説明をしてきたと繰り返していますが、市民の理解は現在でも得られていません。アリバイづくりと言わざるを得ません。
こうした中で、政策決定、事業の推進に対しては、現在でも庁舎移転計画に対し、不安、疑問が払拭されていません。静岡市が市の憲法と位置づける静岡市自治基本条例では、大事な問題は市の一部幹部だけで決定することなく、十分市民の意見を聞き、その意見を聞くだけでなく政策に反映するよううたっています。今回の庁舎移転計画は、市自治基本条例に違反をしています。市民が施策遂行決定に参画し、間接民主主義を補完する住民投票は、市民の市政への信頼を高めることに決定的な役割を果たすことに疑いありません。
昨年9月議会において、予算、庁舎移転場所の条例を採択したとはいえ、市民世論が紛糾している事態、現状を鑑み、本議会として、住民投票によって集約を図ることを決めていただくよう心からお願いいたしまして、賛成討論とします。