生活保護行政と特別支援教育について

〇寺尾 昭 生活保護行政と特別支援教育、2つのテーマについて、今日はお伺いいたします。
 最初に、生活保護行政について伺います。
 コロナ禍の下、仕事が減り、商売が成り立たない中小商工業者や失業率が上昇している非正規労働者の方々をはじめ、多くの人々が苦しい生活を余儀なくされています。とりわけ低所得者層では、特別困難な状況が生じています。
 このような状況の下、静岡市においても、生活保護の被保護世帯が増加しております。生活保護受給者の自立を目指す就労支援も重視されているわけです。非正規労働者の失業率が高くなっていることが1つの特徴となっている現在、高齢者や障害者の就労の難しさが話題となっておりますけれども、被保護者の就労の困難さも例外とは言えません。
 そこで質問ですが、令和2年度における生活保護受給者に対する就業支援事業の内容はどのようなものか、また、このことによって就労された方がどのくらいいたのか、お伺いします。
 資料を事前にお聞きしました。本市における今年4月1日現在の被保護世帯は7,511世帯、4年前に比べ517世帯増えております。コロナが本格化した昨年4月との比較で150世帯増、実人員で約170人増であります。しかし、実際に現場で保護の業務に関わるケースワーカーは、4年前が77人、静岡市でです。現在は何人かといいますと78人ということですから、僅か1人増えているだけなんですね。ほとんど変わらない、こういう状況にあります。
 また、昨年同月比では、実は2人減っているんです、マイナス2。これで本当に保護世帯や受給者に対する十分な生活支援ができるのか、これは疑問と言わざるを得ないわけであります。
 もう1つの問題として指摘したいのは、今、職員の比率は、会計年度任用職員が生活支援課に非常に多いということなんです。本年度の職員録、最近になってできましたけれども、見てみました。各区の福祉事務所生活支援課の職員数を見てみました。葵区の生活支援課、55人中、会計年度任用職員は16人、駿河区では52人中16人、清水区では45人中13人。合計では152人中45人。その比率は3割となっております。
 会計年度任用職員の制度は、昨年4月にスタートしたもので、その任用や給与制度など、従来の非常勤職員から制度上の変更があったわけでありますけれども、その任用は1年ごとの雇用であり、非正規職員であることには変わりがないわけであります。もし会計年度任用職員がケースワーカーに代わってその業務を担っているとすれば、これは問題だと言わざるを得ません。
 そこで質問です。
 福祉事務所生活支援課における正規職員と会計年度任用職員の役割分担がどういうふうになっているのか、お聞きいたします。
 次に、特別支援教育について、現状と今後の対応策を伺います。
 本市教育委員会の資料によりますと、本年4月現在で特別支援学級の設置校は、昨年度との比較で小中合わせて5校増の84校になっております。学級数は18学級増の224学級と、この間もこういう話があったわけです。通級指導教室も11校に設置されております。
 質問でありますが、特別支援学級が年々増加している点について、その理由をどのように分析して対応しているのか、お伺いいたします。
 特別支援学級の子供たちが増え、学級数が増えれば、それに関わる職員の数はそれに応じて当然必要になってくるわけであります。クラスによって子供たちの状態はそれぞれ異なり、それに応じた対応が求められます。毎日の教育に携わる先生方、大変御苦労されております。
 教員の配置は、国の基準では子供8人に対して教員1人。とても目が行き届かないと、現場からは切実な声が上がっております。そのため、市は独自で支援員を配置しております。支援員は、本年度、市全体で226人、昨年に比べて27人増ということで、増やしていただいていることは確かです。しかし、国の基準が変わらない限り、それを補うため、これはやむを得ない苦肉の策とも言えるわけであります。それでもこの支援員は全ての学級に配置されているわけではありません。
 先日、ある校長先生に聞きましたら、特別支援学級は5学級あるけれども、支援員の方は2人しかいないというお話でありました。
 支援員ということですから、これは支援をするわけですね。つまりサポーターなんです。本来の教員の代わりになるというものではないわけであります。勤務時間もフルタイムではないわけであります。正規職員が配置されないなら、せめて支援員の配置はクラスに1人は必要じゃないかと思いますね。
 そこで、特別支援学級に携わる教員と支援員の配置についてどのように考えているか、配置基準をやはり改善すべきではないか、このことを申し上げたいと思います。
 まず1回目です。

◯保健福祉長寿局長 コロナ禍における生活保護行政に係る2点の御質問にお答えします。
 まず、生活保護受給者に対する就労支援事業の内容と就労された方の人数についてですが、令和2年度は3つの事業を展開しました。
 1つ目は、ハローワークとの連携による早期の就労を目的とした就労自立促進事業です。
 2つ目は、福祉事務所の就労支援員による面接同行などの求職サポートを行う就労支援プログラムです。
 3つ目は、参加者に就労体験をしてもらう就労体験・職業訓練プログラムです。
 そして、令和2年度にこれらの就労支援事業に参加された方は延べ626名で、そのうち就労された方は336名、就労率は53.7%となりました。
 次に、福祉事務所生活支援課における正規職員と会計年度任用職員の役割分担についてですが、福祉事務所生活支援課では、正規職員はいわゆるケースワーカーとして保護の申請に対する認定調査、保護費の算定、被保護者の生活状況の把握等を行っています。また、会計年度任用職員は、ケースワーカーの補助的な業務を行っています。

◯教育局長 特別支援学級に関する2つの御質問についてお答えします。
 最初に、特別支援学級が年々増加している理由とその対応についてですが、特別支援学級に在籍する児童生徒は、平成24年度には116学級、559人でしたが、令和3年度には225学級、1,265人になりました。
 本市の全児童生徒数の中に占める割合は、平成24年度の1.1%から令和3年度には2.8%と約2.5倍の増加となっています。この背景には、社会全体の特別支援教育に関する理解や認識の高まりが要因の1つであると考えており、この増加に対応して教員及び特別支援教育支援員の配置を拡充することで対応しております。
 次に、特別支援学級に携わる教員と支援員の配置についてですが、特別支援学級の教員については、国の配置基準に沿って児童生徒8人に対し1人の担任が配置されています。この教員に加え、本市独自の取組として、令和2年度より特に授業準備などの負担が大きい7人以上かつ4学年以上が在籍している小学校の自閉症・情緒障害学級について、非常勤講師を追加配置しています。令和3年度は6校に6人を配置し、学級担任と分担して授業を担当することで、自閉症・情緒障害学級の子供たちの学習指導体制の充実を図っております。
 また、特別支援教育支援員については、学校ごとの特別な支援が必要な児童生徒数などに応じて、本市の基準に従い配置しており、対象児童生徒の増加に伴い、支援員も増加しております。
 今後も特別な支援が必要な児童生徒一人一人に寄り添った学びの実現に向け、学校のニーズを踏まえながら、教員や支援員の配置について対応してまいります。
 

◯寺尾 昭 言いたいことがあるんですけれども、時間がありませんので続けます。
 生活保護行政について伺います。
 厚労省のホームページで、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください。」と呼びかけています。全て国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとした憲法25条の規定からすれば、ごく当たり前といえば当たり前ということになりますが、厚労省が言ったということについては、それはそれで意義があるのではないかなと思います。
 伺います。
 厚労省がホームページで、生活保護の申請は国民の権利と今申し上げたことを表示した。市はこのことについてどのように受け止めているか、念のためお聞きします。
 生活保護申請をためらう理由の1つに、扶養照会があると言われております。生活保護の申請に際し、民法で規定する扶養義務者が生活保護の申請者に対して生活費や精神的な支援をする意思があるかどうかを照会するという内容でありますが、これが保護決定の条件として取り扱われてきたのではないかという批判が実はあるわけです。
 申請者と扶養義務者が長期にわたって音信不通や没交渉、DV被害者の関係になっている例は少なくありません。申請者は、今の自分の状態を肉親に知られたくない、これはごく自然のことです。これまでその点への配慮が欠けており、関係者から扶養照会をやめてほしいという強い要望が出されておりました。今年の通常国会の参議院予算委員会で、我が党小池 晃書記局長の質問に対して、田村厚労大臣は、扶養照会は義務ではないと繰り返し答弁しているわけであります。
 質問ですが、扶養照会は義務ではないとの厚労大臣の国会答弁について、市はどのように受け止めておられるのか、これも改めてお伺いします。
 このような背景の下、厚生労働省は「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」の一部改正や「生活保護問答集について」の一部改正など、都道府県、指定都市などに事務連絡を行っております。
 これらの改正を踏まえた運用上の留意点について、令和3年2月26日付で厚労省社会・援護局保護課から、「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」で事務連絡が行われております。この中で、扶養照会は保護の条件とは異なること、つまり扶養義務者から金銭的扶養が行われた場合、それを被保護者の収入として取り扱うだけのことであって、保護の要否の判定に影響を与えないと言っております。さらに、扶養義務の履行が期待できないと判断される扶養義務者には扶養照会は行わないと明確に言っております。また、扶養義務履行が期待できない者に準ずるものとして、扶養義務者に借金を重ねている、相続をめぐって対立関係にある、縁が切られている、音信不通、夫の暴力など、こういう具体例を挙げております。
 このように、扶養照会可否の判断基準について明確に示されたことを実際に保護行政を担っている職員がしっかり理解して日常業務に生かしていけるかが課題だと言えると思います。
 質問です。
 厚生労働省の今の事務連絡、「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」をどのように福祉事務所と共有して適切な運用を行うのか。
 次に、特別支援教育について伺います。
 通級指導教室は、言語障害、発達障害、肢体不自由の子供たちの教室として、小学校に8校、中学校に3校、計11校に設置されているということであります。昨年度と同数です。特別支援学級と異なり、普通学級に通いながら通級指導教室にも通う子供にとっても、保護者にとっても負担の大きいものです。設置校数が少ない上に、11校全てに必要な科目がそろっているわけではない。通学距離が長くて送迎にも苦労する。また教員の配置基準も、子供13人に対して1人という基準です。
 このような状況を背景にして質問ですが、通級指導教室の課題と今後の方向性についてどのように考えているのか、お伺いいたします。
 県が特別支援学校を設置しております。専門職を配置し、より高度で専門的な教育を目指していることで啓発され、学ぶことが多いと聞いております。特別支援学校との連携はどのように行っているのか、お伺いしたいと思います。
 特別支援教育に携わっている職員には、担当する教員や支援員のほか、特別支援教育コーディネーターという方もいらっしゃいます。現在130人が配置されているということであります。このコーディネーターの存在や役割は、実はあまり知られていないという状況にあるのではないかと思われます。
 そこで質問ですが、特別支援教育コーディネーターの役割はどのようなもので、どのような教員が務めているのか伺って、2回目とします。

◯保健福祉長寿局長 生活保護行政に係る3点の御質問にお答えします。
 まず、厚生労働省がホームページで、生活保護の申請は国民の権利であることを表示したことについての市の受け止めについてですが、本市としましても、従来より生活保護の申請は国民の権利であると認識しています。
 次に、扶養照会は義務ではないとの厚生労働大臣の国会答弁についての市の受け止めについてですが、本市としましても、従来より扶養義務者による扶養は保護の要件とは異なる位置づけのものと考えております。
 最後に、扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等に係る厚生労働省の事務連絡について、どのように福祉事務所と共有し、適切な運用を行うのかについてですが、今回の事務連絡では、扶養は保護の要件ではないとする従来方針の再確認がされたこと、また扶養照会を行わないこととなる判断基準が変更されたことが主な内容となっています。こうした事務連絡や通知については、福祉事務所へ速やかに情報を伝えるとともに、研修等により制度の理解を深めることや、事務の実施状況を確認することで、適切な運用を図ってまいります。

◯教育局長 最初に、通級指導教室の課題と今後の方向性についてですが、通級指導教室は、特別な支援を要する児童生徒が、ふだんは地域の通常学級に通いながら、それとは別に週に1回程度、各区にある通級指導教室、例えば駿河区では大里中学校や南部小学校などにありますが、そこに通い、子供それぞれの障害に応じた指導を受ける仕組みとなっております。
 運営上の課題としましては、児童生徒の通学距離の問題とともに、通級指導教室で指導に当たる教員のスキルの向上が挙げられます。毎年度の教員の人事異動に伴い、初めて通級指導教室を担当する教員が配置される場合も多く、児童生徒の障害に応じた指導ができる教員の育成が重要となります。このため、障害特性の理解や指導方法に関する研修を行っております。こうした課題への対応も含め、通級指導の在り方について今後も検討を進めてまいります。
 次に、特別支援学校と小中学校との連携についてですが、本市には県立の特別支援学校が7校、国立の特別支援学校が1校あり、これらの特別支援学校は、学習指導要領により地域の特別支援教育のセンター的機能を担うことと定められております。このため、本市でも日常的に各特別支援学校と小中学校との間で連携を進めています。
 具体的には、特別な支援を必要とする児童生徒の特性や支援方法などについて、学校からの依頼を受けた特別支援学校の教員が各小中学校の教員に対し、専門的な助言を随時行っています。また、児童生徒についても、特別支援学校の児童生徒が近隣の小中学校を訪れ、その学校の児童生徒とともに授業を受ける交流授業を行っています。
 最後に、特別支援教育コーディネーターの役割とどのような教員が務めるかについてですが、特別支援教育コーディネーターは、各学校で1名ずつ校長が指名しており、多くの学校で特別支援学級の担任や生徒指導の担任を経験してきた教員が務めています。その役割としては、特別支援教育に関する指導の取りまとめや他の教員への研修、関係機関・学校との連絡・調整、保護者の相談窓口などが挙げられます。
 今後も特別支援教育コーディネーターを中心に、教員全体の特別支援教育に対する理解と認識を高め、学習面、生活面での指導力の向上を図ってまいります。
  

◯寺尾 昭 意見・要望ということになるわけですけれども、まず生活保護行政の件ですけれども、先ほど生活保護申請は国民の権利ということで、これは明確であるという旨の答弁がありましたから、それはそれで受け止めたいと思います。そして、またもう1つ、扶養照会についても、厚労省の事務連絡の趣旨に従ってやっていくというお話がありました。ただ、実際、今、窓口などで行われているといいましょうか、実際の問題として生じていることを聞いてみますと、例えば車を持っていたら生活保護申請はできませんだとか、自分の家がある、いわゆる持家の方は生活保護は受けられませんだとか、そういうことで窓口でもうシャットアウトするという、そういう状況も声としては聞いております。
 時間がなくなりましたけれども、そういう状況があるということもしっかり受け止めていただいて、今後の窓口の改善などをぜひ図っていただきたいということを最後に強調しまして、今日の質問とします。