◯杉本 護
それでは、通告に従って質問します。
まず初めに、学校給食費の無償化についてです。
このテーマは、4年前、私が初当選したときに共産党が公約したテーマです。この間、共産党市議団は、この質問を本会議で5回質問していますが、公約が実現するまで粘り強く取り組んでいきたいと思います。
さて、憲法第26条第2項は、義務教育はこれを無償とすると定めています。ところが、実際には様々な費用がかかっています。その1つが給食費です。学校給食をどう捉えているか、ここが問題です。
そこで質問ですが、学校給食は教育の一環と考えますが、どのように捉えているのか、伺います。
さきの6月議会で、宮澤議員が給食費の無償化を提案した際に、当局は無償化しない理由の一つとして学校給食法の第11条を挙げています。この第11条は経費の負担を定めていて、学校給食の実施に必要な施設及び設置に要する経費と運営に要する経費は、設置者負担とし、それ以外を保護者負担としています。市は、これをもって受益者負担の原則に立ち、無償化しないとしています。
しかし、学校給食法は、全国全ての小中学校に適用され、その下で既に多くの学校が無償化を実施しています。もし第11条をもって給食費は保護者負担でなければならないのなら、文科省から何らかの是正指導があるのではないかと思います。
そこで、質問です。
学校給食費を無償化している自治体に対し文部科学省から是正の指導などが行われたか把握しているのか、お伺いします。
もう1点伺いたいのは、市の判断です。学校給食を実施する指針である学校給食執務ハンドブックでは、学校給食費の保護者負担に関する質疑応答において、法の趣旨は、設置者の判断で保護者の負担を軽減もしくはなくすことも可能とされている、さらに負担軽減の方法に制約はないとしています。このことから、財源問題は別として、学校給食法第11条があっても、市の判断で給食費を無償化することは可能と考えます。
そこで、質問です。
学校給食法第11条の規定について、学校給食費は保護者負担であるべきと解釈しているのか、お伺いします。
次に、行政のデジタル化についてです。これは4次総にも関わる課題です。
政府が推し進めるデジタル社会の下で、行政のデジタル化は、国や自治体が保有する大量の個人情報を企業などに開放することにつながると考えます。デジタル化により便利になる点も確かにあると思います。しかし、そこにはプライバシー権の侵害、利益誘導・官民癒着の拡大、行政の市民サービスの後退、国民への徴税強化、給付削減を押しつけるマイナンバー制度の拡大といった多くの問題点があると考えます。
そこで、今回は、行政のデジタル化が自治体にどのような影響を及ぼすのか、懸念される問題についてお聞きします。
まず第1に、対面サービスの後退につながらないかという問題です。
国は、自治体の窓口業務についてオンライン申請を推進し、住民の利便性の向上と業務の効率化を図るとしています。そのため、総務省は、全国の自治体で実証実験を行っていますが、その一つに深谷市があります。実証実験では、申請に紙を使わず、タブレットで顔認証や文字確認を行って証明書を交付する試みを行い、その結果を自治労連の地方自治問題研究機構がまとめています。実験結果では、申請書の作成時間では年配者は増えていますが、全体として短縮したとされています。また、費用対効果では、3年で投資額が回収できるとしています。しかし、顔認証では、なりすましや偽造が防止できないことや情報漏えいのリスクがあることも明らかになったとしています。そして、窓口業務は、オンライン化と対面を併設することが現実的と述べています。
これは1つの事例ですが、先ほど述べたように、今後の行政デジタル化におけるオンライン申請の推進は、全面的な導入ではなく、必要に応じた対面手続によるサービスの継続が必要であると考えます。
そこで、質問です。
デジタル化が進むことによって窓口での対面サービスはどのようになっていくと考えているのか、お伺いします。
2つ目として、自治体リストラの懸念です。
総務省は、半分の職員数でも担うべき機能が発揮されるスマート自治体への転換を目指すとし、あからさまにデジタル化による職員削減を求めています。しかし、行政のデジタル化で職場が改善され、市民のサービスが向上しなければ意味がありません。
市は、常に職員の適正配置に努めていると言っていますが、実際には職員不足で長時間過密労働をせざるを得なかったり、あるいは業務に支障を来している現場もあると聞いています。そうした中で、精神疾患で長期休暇、休職する職員が何十人もいるというのが今の現実です。
そこで、質問です。
デジタル化による行政運営の効率化に伴って、新たに人員を生み出すことができると思いますが、このことを踏まえた職員の適正配置についてどのように考えているのか、お聞きします。
次に、静岡市の障害者雇用についてです。
この問題は、ここ数年、本会議などでも取り上げられている課題です。市は、その都度、雇用率の向上に向けて取り組んでいくと答えていますが、現状は法定雇用率2.6%を達成していません。昨年6月1日時点の市長部局の雇用率は1.9%、政令市で1%台は、静岡市のみで最下位です。
障害を持つ人とそうでない人が共に助け合いながら生きるのが共生社会であり、SDGsの目標8、働きがいも経済成長もの中で障害者の雇用と働きがいのある人間らしい仕事の達成が示されています。SDGsハブ都市である本市の現状は、恥ずかしい状況です。
さらに、静岡市人事委員会は今年の9月、職員の給与等に関する報告及び勧告で、初めて障害者の活躍推進として、市が率先して障害者を雇用することが重要であるとの報告を行いました。この人事委員会は、労働基本権が制約されている職員の適正な処遇を確保することを目的として設けられ、毎年、市長、議長に直接報告及び勧告をする重要な機関であり、この報告は重く受け止めなければなりません。
そこで、質問です。
本市の障害者雇用率の低さについてどのように受け止めているのか、お聞きします。
以上、1回目です。
◯教育局長(青嶋浩義)
学校給食に関する3つの質問にお答えします。
最初に、学校給食をどのように捉えているかについてですが、学校給食法第2条では、学校給食を実施するに当たり、義務教育諸学校における教育の目的を実現するため、適切な栄養の摂取による健康の保持増進、食生活や食文化への理解など7つの目標を掲げ、達成されるよう努めなければならないと規定されています。当該規定にありますように、本市においても学校給食は教育の一環として捉えております。
次に、文部科学省からの是正の指導等の把握についてですが、学校給食費の無償化に関しては、政令指定都市では大阪市が、県内の自治体では御前崎市及び小山町が実施しています。これらの自治体に確認したところ、文部科学省から是正の指導等はなく、また文部科学省にも併せて問合せし、無償化している自治体に対し是正の通知や指導等は行っていないことを確認しております。
次に、学校給食法第11条の解釈についてですが、議員御指摘のとおり、学校給食法第11条では、学校給食に係る施設及び設備に要する経費並びに運営に要する経費は設置者である市が負担し、それ以外に要する経費については保護者負担とされています。
当該規定は、学校給食に係る経費について、設置者である市と保護者の負担区分を明らかにしたものであって、設置者である市が保護者に代わって学校給食費を負担することを禁止するものではないと認識しています。
◯デジタル統括監(猪鼻信雄)
デジタル化が進むことによる窓口での対面サービスがどのようになっていくかについてですが、今後のデジタル化施策における重点的な取組としまして、電子申請を利用した窓口での手続に対するオンライン化を進めてまいります。将来的に、この電子申請によるオンライン手続が浸透することで御自宅などから手軽に申請が可能となり、利用される市民の皆さんの利便性が向上するとともに、窓口における混雑解消につながることが期待されます。
この一方で、窓口における手続の中には、将来的にもオンライン化が難しい対面を要する業務もあります。これらの業務については、これまでどおり適切に対応を行ってまいります。
◯総務局長(渡辺裕一)
行政のデジタル化についてと本市の障害者雇用についての2つの御質問にお答えいたします。
まず、デジタル化による行政運営の効率化に伴う職員の適正配置についてですが、窓口業務のオンライン化など今後のデジタル化の進展により、さらなる行政運営の効率化や職員の生産性の向上を図ることが可能となります。本市では、現在、貴重な経営資源である職員を有効に活用すべく、増員すべきは増員し、減員すべきは減員するという考え方に基づき職員の効果的・効率的な配置をしているところです。
今後も、デジタル化など社会情勢の変化を踏まえながら、市民サービスの向上や新たな行政需要等に対しては必要な職員を確保するなど、成熟・持続可能な行政運営の実現に向け、職員の適正配置に取り組んでまいります。
次に、本市の障害者雇用率の低さについての受け止めについてですが、地方公共団体は障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき、法定雇用率2.6%を達成することが義務づけられております。
本市市長部局の毎年6月公表時の障害者雇用率は、令和元年度1.81%、2年度1.90%、本年度2.14%と毎年増加しておりますが、依然として法定雇用率を下回る状況となっております。
法定雇用率を達成するための課題として、離職の問題がございます。本市市長部局で働く障害のある職員は約90人ですが、年間を通して随時採用試験を実施することで、毎年20人程度の新規採用を行っております。一方で、毎年10人程度の離職者が生じており、これが法定雇用率を達成できない要因となっております。
離職の主な理由には、本人の希望と実際の職務との相違や体調不良などが確認されております。そのため、法定雇用率を達成するには、障害のある職員が働きやすい職場環境を整備し、離職を防止することが大切であると考えております。
◯杉本 護
それでは、2回目、質問を続けます。
まず、学校給食費の無償化ですが、先ほどの答弁で、少なくとも学校給食法の制約はないことがはっきりしたと思います。つまり、市がその気になればやれるということです。
そこで、財源の問題が出てきます。全額市が賄えば小中学校合わせて毎年約23億円の費用がかかり、本市としても決して少ない金額ではないとも思います。
そこで考えてほしいのは、やはり憲法の要請です。本来国において実施されるべきと考えますが、今の自公政権はなかなかやってくれません。そうした政府の姿勢を変えていくためにも、地方自治体から実施に踏み切り、国に制度化を迫っていく必要があります。
また、子育て世帯の経済的支援、少子化対策、さらに消費を喚起し、トータルで見れば、学校給食の無償化は市の活性化につながるものと考えます。
全国では、特定の学年を無償にしたり、第2子以降を無償にするなど財政事情も考慮しながら踏み出しています。
そこで、質問です。
学校給食費は無償化するべきと考えますが、当面半額など補助はしないのか、お聞きします。
次に、行政のデジタル化についてもう1点、自治体情報システムの標準化・共通化についてお聞きします。
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律では、全ての自治体に対し国が決めた基準に適合したシステムの利用を義務づけています。その下で、標準化法第8条第2項により、自治体が住民の福祉に資すると考えて設計した独自の業務フローやデータ仕様を情報システムに実装させることは例外的にしか認められなくなるのではないのか。また、新システムへの既存データの移行では、国庫補助の対象は新システムへの移行分だけで、独自にシステム変更が必要な費用は出さないため、自治体は、財政的な理由などから国の基準に合わせるようになるのではないか、そうした懸念があります。
本市も国が示す標準化対象事務に含まれない市民のための独自施策を行っている分野がありますが、そうしたことは今後も守られていくのでしょうか。
そこで、質問です。
国が示した標準仕様書に準拠したシステムは各自治体が共通で行う業務を想定していると思いますが、自治体独自の施策についてはこのシステムでの対応は可能なのでしょうか、お聞きします。
次に、障害者雇用についてです。
本市は、毎年1年計画で障がい者活躍推進計画を策定し、雇用の促進を図っています。障害者を雇用し、活躍できるように体制の整備や職務の選定・創出、環境の整備、人事管理など多岐にわたって取り組んでいることは承知しています。
そこで質問ですが、静岡市障がい者活躍推進計画の実施状況と、令和3年12月31日時点の障害者雇用率の見込みはどうなっているのでしょうか。
以上、2回目です。
◯教育局長(青嶋浩義)
学校給食費への補助についてですが、議員御指摘のとおり、学校給食費の無償化や一部補助は子育て支援、定住人口の増加などへの効果が期待できるとの考え方もございますが、本年6月議会で答弁したとおり、学校給食費の無償化に関しましては現在の本市の財政状況から非常に困難であり、学校給食費の半額負担などの補助についても現時点では実施が困難であると考えております。
なお、経済的な理由で学校給食費の負担が困難な家庭につきましては、就学援助制度により補助を行っております。
本市としましては、学校給食は食育を通して食の大切さや携わる人々への感謝の心、地産地消を通した郷土愛の育成など重要な役割を担っていると考えており、魅力ある学校給食の提供に力を入れるとともに、学校給食施設及び設備の充実などにも取り組んでおります。今後も引き続き、安心・安全でおいしい学校給食の提供に努めてまいります。
◯デジタル統括監(猪鼻信雄)
標準準拠システムの利用による自治体独自の施策の対応についてですが、今回の標準準拠システムにおける独自施策の対応については、国において既に想定されております。その手法として、業務の処理方法をパターン化しシステム内で個別に設定する方法や、別のシステムと連携する方法などにより対応可能と示されております。
本市における福祉系手当など独自施策の対応につきましては、業務内容を精査した上で費用対効果も含め適切な事務処理を検討してまいりたいと考えております。
◯総務局長(渡辺裕一)
本市の障害者雇用についての御質問にお答えいたします。
初めに、静岡市障がい者活躍推進計画の実施状況についてですが、同計画の柱となる3点の取組を御説明いたします。
1つ目は、支援体制整備の取組で、障害に関する職場の理解促進のため、障害のある職員が配属されている所属の職員を対象に研修を実施し、共に働く職員としての意識変化を促すように取り組んでおります。
2つ目は、職務の選定・創出に関する取組で、障害のある職員の配属に当たっては、各所属へのアンケートを基に職務内容を確認し、それぞれの障害特性に配慮した職場への配置を行っております。
3つ目は、職場環境整備の取組で、働きやすい職場環境づくりのため、令和2年度から人事課に障害者業務支援員を配置し、障害のある職員との随時面談や職場での業務支援を実施しております。面談などで出た声を受け、職場入口の扉の自動ドア化や車椅子に対応した事務机を配備するなど、一人一人に寄り添った支援を実施しております。
本市では、これらの3点の取組を柱として、障害のある職員の職場定着に総合的に取り組んでおります。
次に、本年12月31日時点の本市市長部局の障害者雇用率についてですが、2.28%となる見込みです。
今後も、早期の法定雇用率達成を目指し、障がい者活躍推進計画に基づき障害者雇用の推進に取り組んでまいります。
◯杉本 護
3回目は、意見・要望です。
時間がありませんから、行政のデジタル化についてのみ述べたいと思います。
今回は国がデジタル社会を目指す下での行政のデジタル化に関わる懸念の一端についてお聞きしました。
当局からはちょっと分かりづらい答弁だったんですが、私の解釈からすると、必要な対面窓口はなくさない、現状の独自施策もこのまま維持していく、そしてデジタル化の成果を職員体制の充実につなげる趣旨の答弁だと理解しましたから、ぜひそのように取組をしていただきたいと思います。
しかし、今後この行政のデジタル化を進めていけば、個人情報データを本人の同意なしに流用し、国民監視と民間企業の営利目的に活用されることが予想されます。また、デジタル化を進める上で専門家を民間から登用した場合、行政の公平性は確保できるのかといったことも心配されます。まだまだ様々な懸念がありますが、この問題については今後の質問で明らかにしていきたいと思います。
そして、デジタル技術というのは、これからの社会には必要な技術と思っています。ぜひこういった技術を住民と自治体職員のために正しく活用することを求めて、質問を終わりたいと思います。