◯市川 正 共産党の市川 正です。
私は、市のスポーツ施策について伺います。
文部科学省は、3月、第3期スポーツ基本計画を発表しました。スポーツ推進の体系は、スポーツ基本法という法律に基づき、国がスポーツの総合的で計画的な推進を図るためにスポーツ基本計画を策定し、それを受けて地方公共団体がスポーツ推進計画を策定するということが努力義務とされています。静岡市も、5年に1度改定される国のスポーツ基本計画に基づき、スポーツ推進計画を策定しております。
スポーツ基本法は、スポーツは世界共通の人類の文化である。スポーツは、国民が生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠なもので、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利であり、全ての国民が日常的にスポーツに親しみ、そしてスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならないというふうに明記され、長年にわたって国民やスポーツ関係者、そして日本共産党も含め、スポーツは国民の権利と求めて運動してきたことが初めて国の法律に書き込まれたものであります。
平成27年にはスポーツ庁が発足し、基本計画の策定は、今はスポーツ庁の管轄となっています。そこで、私なりにスポーツ基本計画の第1期から第3期まで、いま一度目を通してみました。
第1期スポーツ基本計画では、スポーツは、これを通じて幸福で豊かな生活を営むことは人々の権利であると明記され、国、独立行政法人、地方公共団体及びスポーツ団体は、スポーツを通じて国民が健やかで明るく豊かな生活を享受することができるよう、スポーツに対する国民の関心と理解を深める、そしてスポーツに対する国民の参加、支援を促進するよう努力する、このようにはっきりと掲げております。
第3期スポーツ基本計画を見てみますと、これは当然ですけれども、スポーツの主役は国民であり、する、見る、支えるという様々な場面で自発的な参画を通じて楽しみや喜びを見いだすというように、個人の努力によるとの方向性を打ち出すとともに、民間の参入を進めてスポーツ市場を拡大し、スポーツ市場規模5.5兆円を2025年までに15兆円に拡大する、このように述べられています。スポーツの産業化も見据え、もうかるスポーツへの変身も見え隠れしているというのが第3期スポーツ計画です。このように、スポーツ政策の公共的な役割からの後退が見られると感じます。
こうして見てきたように、第3期スポーツ基本計画では、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利と記した部分がぼかされて、基本法の精神から後退しているのではないでしょうか。地域経済活性化とともに、そこに暮らす人が健康で生き生きと暮らせるよう施策を講じることがスポーツ基本計画の原点でもあります。
そこで、静岡市は、次期計画において、スポーツの原点であるスポーツ基本法をどのように踏まえて策定していくのか、伺います。
2番目に、令和3年8月にスポーツ活動市民意識調査を静岡市は実施いたしました。12月に調査結果を発表しております。この中の設問では、この1年間において、運動・スポーツをどのくらいの頻度で行っていますかという問いがありますけれども、この1年間、運動・スポーツを全くしないと答えた方が29.0%と最も多かったということに私は衝撃を覚えました。次いで、週1日、2日が19.1%、週3~4日が16.8%と続きます。
よく行う運動・スポーツとしては、ウオーキングが44.3%で最も多く、日常生活の中で意識的に体を動かすこと、これは通勤で歩いたり自転車を利用することも含めてですけれども、こうした体を動かすことが31.8%となっていて、ふだんの生活の中で工夫しながら健康維持のため体を動かすことを心がけている、こういう様子がよく分かります。
基本計画では、成人で週1回以上スポーツをする人を70%に引き上げるということを目標にしておりますけれども、スポーツ実施率を引き上げるため、静岡市スポーツ推進計画でどういった施策を行うのかを明確にすることが求められるのではないでしょうか。
市民意識調査の中で、スポーツができない理由としては、仕事や家事、育児などが忙しくて、そうした時間が取れないというのが38.4%と最も多くなっています。スポーツの機会は女性が圧倒的に少なくなっているというのが実態です。その一方、運動・スポーツを行う理由としては、健康のためが65.6%、運動不足を感じるというのが45.1%でした。
健康のために運動はしたいが、その時間が取れないという状況がよく見てとれます。若い世代を中心に非正規労働が増え、低賃金が押しつけられるという異常な労働環境の下で、国民、市民からスポーツをする時間とお金、意欲を奪っているというのが実態ではないでしょうか。こうしたスポーツ阻害要因に切り込まないことには、せっかくのスポーツ推進計画が生きてこないのではないかと思います。これは一部の局だけの取組で実現することではありません。
さきにも触れたように、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利です。よりよい人間関係を築き、生き生きした社会生活につなげる力があります。こうしたスポーツの持つ力を生かしたまちづくりを進めるため、市民意識調査の結果をどのように分析し、計画に反映させていこうとしているのか、伺います。
以上、1回目といたします。
◯観光交流文化局長(望月哲也君) 静岡市スポーツ推進計画に関する2点の御質問にお答えします。
まず、次期静岡市スポーツ推進計画において、スポーツ基本法をどのように踏まえて策定していくのかについてですが、まず、スポーツ基本法の前文には、議員御指摘のとおり、スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利である、そして、日常的にスポーツに親しみ、スポーツを楽しみ、支える活動に参画する機会が確保されなければならないとうたわれております。
そこで、次期計画では、基本法の前文を踏まえ、スポーツが持つ力で、誰もが健康で豊かな生活を実現することを基本理念とし、誰もが楽しむことができるスポーツの推進、スポーツを日常的に親しむための環境整備、スポーツを通した人々の交流による地域の活性化の3つを基本方針として掲げ、策定作業を進めております。
また、スポーツには、するだけではなく、スポーツ観戦のような見る視点、大会ボランティアのような支える視点も含まれております。次期計画には、スポーツ庁のスポーツ・イン・ライフの考え方を発展させ、する、見る、支えるが互いに融合することで好循環を生み出す静岡型スポーツ・イン・ライフをスローガンとして、さらなるスポーツの推進を図ってまいります。
次に、次期計画において、市民意識調査の結果をどのように分析し、計画に反映させていくのかについてですが、主な調査結果として、16歳以上でスポーツを週1日以上実施すると回答した人は55.9%で、現計画の指標である68%に達しませんでした。また、スポーツを全くしないと回答した人は29%で、世代別に集計しますと、30代と40代の女性が多いという結果でした。その一番の理由は時間がないということから、スポーツをされない女性や働く世代の皆さんをターゲットとした事業の実施がスポーツ実施率の底上げにつながると分析いたしました。
そこで、次期計画では、誰でも気軽に参加できる健康増進教室を充実させてまいります。また、働く世代も含めて、スポーツ庁が提唱する日常的にスポーツを取り入れるという考え方を周知し、通勤や買物を徒歩や自転車利用に置き換えるといった、生活の中で無理なく始められる身体活動の推奨や、自宅でできる軽運動メニューを紹介します。
スポーツには人や地域を豊かにする力があると考えております。そのような力を生かし、市民の皆さんの誰もが自分らしく生き生きと輝けるよう計画に取り入れ、推進してまいります。
◯市川 正 それでは、次に、中項目の(2)、誰もがスポーツに親しむための環境整備について伺います。
最初に、市内体育館等の利用についてです。
「令和4年11月1日より、お子さんの付添いや見学者の方も利用料金が発生しますので、券売機にて利用券をお買い求めください」、市内の体育館の発券所に突然こういった貼り紙があり、びっくりしました。見学者や付添いの方も利用料金が発生するというふうな貼り紙です。
一人でも多くの人がスポーツを楽しみ、スポーツを通じた健康増進や生き生きとした生活を実現するというのがスポーツ基本計画の趣旨であります。昨年度のスポーツ施設の個人利用者数は、清水区では約10万6,500人、葵・駿河区では21万8,000人と、多くの市民が利用しております。この中には、健康づくりとして何かスポーツに触れてみたい、触れさせてあげたいと訪れる人も多いのではないでしょうか。さきの貼り紙は、せっかく訪れた人のスポーツ向上の気持ちも機会もシャットアウトしてしまいかねません。
付添いや見学が、つい手を出すこともあろうかと思いますけれども、施設の利用にさほど支障があるとも思えませんし、付添いや見学などは大いにどうぞ、一緒に来てくださいとやったらどうでしょうか。その上で、一緒にやりたいと思った方にはぜひ利用券を買ってもらうというふうにお勧めすればいいんです。頭から、施設に入るにはお金がかかりますというのは、市民感覚に合わないと私は思います。
推進計画に基づきスポーツ施設の利用を拡大する上で、静岡市がどのようなスタンスでいるのかというのがかいま見えますけれども、この点について、個人利用における見学者等の利用料金の設定はどのようになっているのか、伺いたいと思います。
次に、9月23日の台風15号による集中豪雨で、安倍川河川敷のスポーツ広場は、濁流に洗われ利用できなくなっています。
こうした広場は、市民の野球、サッカー、グラウンド・ゴルフなどの競技場所として広く利用されていますけれども、スポーツの秋と言われる最適な期間に大会等を断念せざるを得なくなったスポーツ団体も多くいらっしゃいます。
本市のスポーツ広場の昨年度利用実績は約21万2,000人ということですけれども、今般の台風15号によるスポーツ広場閉鎖での影響はどのようだったのか。そして、今後、激甚災害指定により国庫事業で復旧させると聞いていますけれども、一日も早く復旧させることが求められます。台風15号によるスポーツ広場の被害状況と今後の復旧見通しはどのようになっているのか伺って、2回目といたします。
◯観光交流文化局長(望月哲也君) 誰もがスポーツに親しむための環境整備に関する2点の御質問にお答えします。
まず、個人利用における見学者等の利用料金の設定についてですが、本市におけるスポーツ施設では、団体などが大会や練習で体育館のアリーナ等を借り切る専用利用料金と、市民の皆さんが個人で卓球場、屋内プール、トレーニング場などを利用する個人料金の大きく分けて2つの料金体系を設けております。
議員御指摘の卓球場や屋内プールなどを利用する個人料金は1人ごとの料金設定となっておりますが、これまで見学者などを施設利用者と判断する施設としない施設が混在しておりました。そのため、公平性を考慮し、他都市の類似施設の運用状況を参考にするなど、本年11月から、競技実施の有無にかかわらず、卓球場、プールサイド、トレーニング場などに入室される場合は施設利用者とすることに統一いたしました。その結果、現在は、見学者や指導者なども競技実施者と同様の料金を頂いております。
次に、台風15号による安倍川河川敷スポーツ広場の被害状況と今後の復旧の見通しについてですが、今回の台風により、安倍川河川敷スポーツ広場33か所のうち、19か所のスポーツ広場で冠水し、グラウンドの陥没、土砂及び倒木の堆積が発生いたしました。また、サッカーゴール等の工作物も多数被害を受け、施設が利用できない状態となりました。
そのうち、被害が軽微であった3か所の広場については復旧済みであります。残り16か所のうち、3か所は、令和5年2月から使用できるよう現在、整備をしており、そのほかの13か所については、同年5月から8月頃の復旧を見込んでおります。
なお、利用者ニーズを踏まえ、優先順位をつけて整備を実施し、完了したスポーツ広場から順次、再開していく予定です。
◯市川 正 3回目は意見・要望といたします。
スポーツ基本法の理念は、スポーツは基本的権利です。昨今の社会情勢では、労働者の非正規雇用や給料が上がらないなど、現役世代を中心にスポーツは二の次とされる傾向があるのを大変寂しく感じております。私は、スポーツ推進計画は、市民が心身ともに健康で生き生きした生活をとの観点が第一に捉えられるべきだと考えております。そうしたことから、スポーツをする場が急速に失われている実態を大変憂慮しています。
そうした意味からも、先ほども答えがありましたけれども、市民がスポーツ施設に入場する際の見学だとか付添いだとか、そういったところで子供さんを健やかに育てたい、あるいは情操を教育したい、そして気持ちよくスポーツに親しめる環境をつくっていきたいというふうなことで来られるお客さんを窓口でシャットアウトしないような、そうした人も気持ちよく取り込めるような施策が静岡市に求められるのではないかと考えております。
スポーツ庁の調査では、1996年に約6万5,000か所あった公共スポーツ施設が、2018年度には5万1,000か所に激減しております。本市でも、来年度から三保体育館が老朽化を理由に閉鎖すると聞いております。「スポーツは国民の権利」に本気で取り組むならば、そこで輝いていた市民を支援するためにも、簡単な結論は出せないのではないでしょうか。私はそう思います。スポーツ施設を安全で使いやすいよう拡充していくことが求められております。ぜひこういったことを今後のスポーツ施策の中に生かしていただくことを要望いたしまして、質問といたします。ありがとうございました。