◯寺尾 昭
私は、台風15号による災害復旧の現状と、土木行政における道路の維持管理、地籍調査とあまり派手ではないんですけれども、今日は大項目2つ、テーマ3つということでお伺いいたします。
昨年9月の台風15号災害から5か月がたったわけであります。この間の復旧に向けて、市民の皆さん、市の職員の皆さん、多くの関係者の御努力に改めて感謝を申し上げたいと思います。
復旧の現状は、これまで伺ったところ、学校施設や子育て施設、あるいは福祉施設などはほぼ復旧が終わったとお聞きしております。平常の活動を取り戻しているということであります。比較的小規模の災害は復旧も完了しているということでありますが、大・中規模の災害の爪痕はまだまだ市内各地に残っておりまして、市民は一刻も早い復旧を望んでいるわけであります。
そこで伺いますが、市が所管するインフラ施設である道路・河川、河川は先ほど報告もあったわけですけれども、改めてお聞きします。
それから、農道・林道、上下水道の3部門について、災害復旧における進捗、さらには今後の見通し及びこの間、行われてまいりました国の災害査定の結果はどのようになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
次に、土木行政についてであります。
特に、今日は身近な生活道路、あまり大きな道路じゃないということでありますが、この身近な生活道路について伺っていきたいと思います。
ちょっとおさらいの意味で申し上げます。
道路法は、道路について国道、県道、市町村道というものがあります。その管理権限はそれぞれ国、県、市町村ということになっております。御存じのとおりです。そのほか、高速道路や道路法以外の道路であります農道、林道など、私たちが利用している道路は多種多様と言えるわけであります。
さらに、これらに属さないけれども、私たち市民生活に大きな関わりを持っているのが、いわゆる法定外道路と言われるものであります。国道でもない、県道でも市町村道でもない道路、道路法の適用がないから、つまり法定外道路と言うわけであります。多くの幅員4メートルに満たない狭隘道路と言われる身近な道路がこれに当たるわけであります。その多くは、赤道と呼ばれるものが多いわけでありますが、以前は国有財産でありました。所有権が市町村に移管されまして、管理権限は原則、市町村ということになったわけであります。
しかし、実態として日常的な維持管理がほとんど行われていないという状況です。その多くが、言ってみれば放置されているという現状です。市民からは、雑草の処理、清掃、ごみをそういうところにたくさん捨てられてしまうというようなことで、様々な要望も寄せられているのも現状であります。現況、道路の形態を取っており、公共用に供している道路であっても、個人名義のままになっている、そういう道路も実は多く存在しております。
さて、今度は建築基準法に関わる問題でありますが、建築基準法は、家を建てる場合の条件の1つとして、その敷地が4メートル以上の道路に2メートル以上接しているということが必要であるとしています。接している道路が4メートルに満たない場合は、道路境界線から後退して、道路の幅員を確保することによって、言ってみれば4メートルの幅員を満たすことができるわけでありますが、所有者にしてみれば、自分の土地を道路に提供するということにもなるわけです。建築基準を満たす目的での道路後退ですが、道路になれば個人名義のままであっても、公共用に供されるということになるわけであります。民有地のままの道路を建築基準を満たすため、道路の位置指定という方法があるわけであります。この場合も未舗装のままの位置指定道路も存在するということになります。この部分の管理を誰が行うかということも問題になるわけです。皆さんもいろいろそういうことで相談を受けることが多いんじゃないかと思います。
至近の例を挙げれば、藤枝市が2022年4月、昨年4月から位置指定道路の舗装については全額補助を行うということを決めているわけであります。
そこで質問ですが、建築基準法に基づく道路後退により生じた個人所有のままの土地や個人所有である位置指定道路の舗装整備は誰が行うのかということであります。市からの補助制度などもあるのかどうなのか、改めてお伺いしておきます。
道路について、維持管理そのほかの課題について伺います。
国道、県道、市町村道は、道路法で認定されている道路、先ほど言ったとおりです。その所有者はおのおの国、県、市町村ということであります。ところが、これらの認定道路、国道であっても県道、市町村道であっても、実はまだまだ道路内に個人の名義の土地がたくさん残っているんです。原因は何だということになるわけですが、様々であります。過去に土地買収を行ったけれども、あるいは寄附を受けたけれども、何らかの理由で所有権移転登記がされなかったということが考えられます。様々な理由があるわけでありますが、所有権は個人のままであっても、道路法上、道路の認定には実は支障はないんです。これが法の建前になっておりますが、決して望ましいものではありません。当然であります。そして、放置すればするほど、相続などが複雑になっていきますから、権利の移転ということは一層困難になっていくということになるわけです。
そこで質問ですけれども、道路法上の道路内に残る民地の処理はどのように進めているのか、お伺いします。
3つ目は、地籍調査と言われるものです。
本市では、令和4年2月、昨年2月に第2期静岡市地籍調査基本計画を策定しております。来年度予算では、地籍調査について、今年度の2倍以上の金額が計上されている。姿勢の表れということは評価したいと思います。今後、推進していこうとの姿勢の表れと受け止めておりますけれども、まだまだこの事業への市民の理解が進んでいるとは言えないのではないかというふうに危惧されます。
そこで質問ですが、地籍調査の必要性と静岡市の取組の状況はどのようになっているのか、改めて伺っておきます。
1回目であります。
◯建設局長(池谷 誠君)
道路、河川の復旧の進捗と今後の見通し及び国の災害査定結果についてですが、まず道路については、1,184か所が被災し、うち1,104か所で復旧が完了しております。残りの80か所については、本復旧に向けた発注作業を進めており、36か所は今年度内に発注し、44か所は令和5年度の発注を予定しております。このうち、被災規模が特に大きな箇所を除く55か所については、5年度末までに復旧が完了する予定です。
次に、河川については、先ほどの市川議員への答弁のとおりで、845か所が被災し、うち574か所で復旧が完了しており、残りの271か所については、5年度末までに復旧が完了する予定です。また、公共災害として国の災害査定を申請した箇所は、道路、河川を合わせて103か所で、申請額約56億8,000万円に対して99.8%の査定結果となっております。
◯農林水産統括監(川崎 豊君)
農道、林道の災害復旧についてですが、農道は320路線が被災し、うち152路線で対応が完了しております。残り168路線については、順次対応しているところです。林道は110路線が被災し、うち31路線で対応が完了、残り79路線については順次対応しているところです。
今後の復旧見通しについてですが、農林業の生産基盤である農道、林道については、生産活動に支障が生じないよう配慮しながら復旧工事を進めており、河川部の渇水期施工など、施工時期に制限を受けるものを除き、5年度末までの完了を目指しております。
また、公共災害として国の災害査定を申請した箇所は、農道、林道を合わせて26か所で、申請額約7億8,000万円に対して99%の査定結果となっております。
◯上下水道局長(服部憲文君)
続きまして、上下水道についてですが、まず水道は19施設で被災し、いずれの施設もこれまでに応急復旧を完了し、給水への影響は解消しております。このうち9施設は既に本復旧が完了し、5施設は年度内に完了する見込みです。残り5施設のうち4施設は、現在、本復旧に向けた発注作業を進めており、令和5年度末の完了を予定しております。
また、宮嶋橋に隣接の水管橋については、他部局との調整の上、本復旧を実施いたします。
なお、災害査定については、3施設で約2億3,000万円を申請し、この3月に査定結果が判明する予定です。
次に、下水道は4施設で被災し、いずれの施設も直ちに応急復旧を実施し、施設の運転に影響がないよう対応しました。現在は、本復旧に向けて全ての工事を発注しており、令和5年度末までに完了する予定です。
なお、災害査定には4施設で約6,700万円を申請し、100%の査定結果となっております。各施設ともできる限り早い本復旧に向けて、引き続き取り組んでまいります。
◯都市局長(八木清文君)
議員の御質問であります建築基準法に基づく個人所有のままの道路後退部分の土地や個人所有である位置指定道路の舗装整備は誰が行うかについてですが、どちらの場合も原則、その土地の所有者が舗装整備を行うこととなります。
次に、舗装整備に対する市からの支援制度はあるのかについてですが、道路後退部分の土地については、市への寄附を前提とした狭あい道路拡幅整備事業を活用することにより、道路後退部分の舗装整備やその後の維持管理を市が行います。また、位置指定道路については、議員は藤枝市のケースをお話しされましたが、本市においても、付近の公道の舗装状況など、必要な要件を満たせば、その土地の所有者が自ら行う舗装整備に対して、舗装費用の一部を助成する建設局所管の私道整備補助金がございます。
◯建設局長(池谷 誠君)
道路の維持管理に係る課題と地籍調査の2つの御質問にお答えします。
まず、道路法上の道路内に残る民地の処理についてですが、いわゆる道路内民地は道路整備などにより、土地所有者の承諾のみで工事を進め、所有権移転登記をしないまま供用開始したことなどが原因となっております。道路内民地の処理については、現在、土地所有者から寄附の申出があった場合や道路整備などに合わせて所有権移転登記を実施しております。また、登記の手続においては、土地所有者が必要書類の準備や関係者との連絡調整などを行っていますが、相続関係が複雑などの事情により、手続に時間を要しているのが現状であります。このため、市としても円滑に手続が進められるよう、必要書類の取得や相続関係者への戸別訪問、連絡調整のほか、対象土地の調査など、できる限りのサポートを行っております。
近年では、市道の供用開始前に所有権移転登記を実施することを徹底しておりますが、今後も引き続き、道路内民地の処理に努めてまいります。
次に、地籍調査の必要性と本市の取組状況についてですが、地籍調査は国土調査法に基づき、1筆ごとの土地について所有者や地目の調査並びに境界や地積に関する測量を行い、地籍の明確化を図るもので、土地の有効活用の促進や公共事業の効率化などの効果が期待されます。また、東日本大震災では、家屋の全壊、流出等で土地境界の確定が困難になることがあり、地籍調査の成果が迅速な復旧・復興に寄与したことから、その必要性や重要性が再認識されております。
現在の取組状況としては、国や県の第7次国土調査事業十箇年計画に合わせ、議員御発言のとおり、令和4年2月に第2期静岡市地籍調査基本計画を策定しました。この計画により、沿岸地域に都市機能が集中する本市の特性も踏まえ、津波浸水想定区域を優先調査地区と位置づけ、11年度末の調査完了を目指すとともに、継続的に実施している清水区蒲原地区なども含めて、迅速かつ効率的に事業を推進していきます。
また、進捗状況としては、令和3年度末時点の優先調査地区の進捗率は21%で、11年度末には100%となる見込みであり、市域全体の進捗率は3%で、11年度末には3.9%となる見込みです。
〇寺尾 昭
地籍調査について申し上げます。
地籍調査については、今、お話がありましたように、国土調査法が根拠となっております。この法律は、昭和26年ということですから、実は随分昔の成立であります。以来、地籍調査は約70年間取り組まれてきているわけであります。事業としては大変歴史のあるものでありますし、全国では、実はかなり進んできております。
ところが、自治体間ではこれが大変大きな格差があるんです。都道府県の比較では、北海道、東北、中国、四国、九州、中央部分を除いて東西と言ったらいいでしょうか、南北と言ったらいいでしょうか。ここでは100%に近い県、実際、100%のところも実はあるんです。その他の都府県では、ちょっと低いんです。静岡県の進捗は、県全体としては25%ということです。そして、県内自治体間でもやはり格差が非常に大きいということであります。御前崎市、菊川市、牧之原市、吉田町では100%終わっていると。小山町91%、磐田市80%というのがこれに続くわけであります。
先ほど、答弁がありましたように、静岡市は市全体とすれば今、3%という状況です。そういう点では非常に大きな格差があるという現状です。同じ政令市で浜松市はどうかというと、28%ということであります。どうしてこんなに大きな格差が生まれてしまったのか。急激な都市化など地勢的な要因はあるとは考えられますが、やはり自治体間の取組の姿勢に起因しているのではないか。また、それは市民の理解や様々な事業執行に向けての予算額にこれが反映されてきているのではないかと私は思うんです。
そこで、地籍調査について、なぜ静岡市はなかなかこれまで進まなかったのか、低い理由、そして、今後、やはり進捗率を向上させていかなければいけないと思うんです、私は。そのためにどう取り組んでいくのかということについて、改めてお伺いしておきたいと思います。
◯建設局長(池谷 誠君)
本市の地籍調査の進捗率が低い理由と、進捗率向上に向けた今後の取組についてですが、進捗率が低い理由としては、市域が広大な面積を有している上に、その7割以上を森林が占めていること、また、土地一つ一つの所有者や境界などを明らかにしていく作業には、多大な労力と時間に加え、費用を要することが主な理由であると認識しております。
今後の進捗率の向上に向けた取組については、地籍調査基本計画に基づき、地籍調査を加速化させるため、令和4年度より調査工程を見直し、これまでの3年から2年に短縮するとともに、事業費も拡充し、当初予算の対前年度比は4年度が170%で、5年度は230%を予定しております。また、地籍調査の効率的な推進の観点から、これまでも道路事業や土地区画整理事業などの測量の成果の活用を進めてきましたが、今後は開発行為等の民間事業者による測量成果のさらなる活用の促進を図るため、対象となる事業費の一部を補助する静岡市地籍整備推進調査費補助金を創設し、本年4月から施行する予定です。
今後も引き続き、地籍調査の加速化や効率的な推進を図り、進捗率向上に向け取り組んでまいります。
◯寺尾 昭
答弁がありましたけれども、意見・要望を申し上げますので、ぜひ今後も積極的な取組をお願いしたいと思います。
まず、災害復旧についてでありますが、災害対策本部は昨年12月28日に廃止されたということであります。災害復興本部に移行したということであります。1月31日に第1回の会議が開かれております。同日現在の先ほど答弁がありましたような河川、道路、農道、林道、治山の復旧状況がこの会議資料として公表されているわけであります。
ところが、今回の質問で明らかになったのは、復旧の全体の状況をまとめて発信している部署がないということなんです。今、それぞれの局長から答弁があったように、災害復旧の状況を全体として統括しているところが実はないということなんです。これはやっぱり、いわゆる情報の一元化という点からすると問題ではないかと。市民の側に立ってみると、それぞれの部局に聞かないと分からないという状況になってしまうんです。やっぱり、ここはしっかり情報の一元化をしていく必要があるんじゃないかと、思うんですが、市長、ぜひ改善をお願いしたいと思うんです。
先ほどの答弁では、小・中規模災害については、ほぼ復旧が完了しているということでありました。大規模災害については、これからが本格的になるわけであります。災害査定で認められた国の補助金もかなりの高率であったということは復旧に弾みがつくということになります。市民は一日も早い復旧で日常を取り戻すことを望んでおります。復旧の現状の情報を一元化して、逐次、市民へ提供していくシステムをつくっていくということを要望したいと思います。
法定外道路の維持管理に関わっての要望です。
道路法の適用がないということで、道路行政において重要視されていないのではないかと、私は危惧するわけです。しかし、私たちの身近に多く存在し、生活を営んでいく上で大きな関わりを持っております。その維持管理は所有権者である市が行うべきでありますが、事実上、放置されていると。付近の住民が除草などを行っている例も見られます。市としては、やっぱりこの維持管理計画というのを策定してほしいと私は思います。
それから、所有権が個人名義のままの道路の維持管理、これは先ほどお話がありましたが、原則、個人の責任だということであります。実は、これも日常的には公共用に供されているんです。個人名義であるけれども、そこには運送屋さんも来ます。郵便屋さんも来ます。牛乳屋さんも来ます。一般の人もたくさん通行するんです。実際は、公共用にもう既に供されている。しかし、個人名義だということで個人の責任ということになるわけです。やっぱり、そこはちょっと私はおかしいんじゃないかなと思うんです。改善の方向をぜひ示していただきたいと思います。これも今後、検討してほしいと思うんです。
そしてまた、認定道路内の民地、いわゆる道路内民地ということであります。答弁にありましたように、所有権移転登記をしないまま供用開始ということになってしまったのが原因ということであります。相続関係などが複雑で、手続に時間を要するということでありますが、これは相続関係が続いていけば続いていくほど、将来に先送りすればするほど、さらに困難になると。当然であります。ですから、これはやはり、1つ私は思うんですが、こういう例というのは全国的にもう共通しておりますので、法的な解決というようなことも、やはり国に要望していく必要があるんじゃないかなと思いますし、現状では、大変ですけれども、やはり計画的に進めていくしかないと思うんです。
それから、先ほどの答弁で、土地所有者が必要書類の整備や関係者との連絡調整を行っており、市はそれをサポートしていくという考え方だということでありますが、所有者任せでは、やはりこれは進まないと思うんです。市が主体的に取り組んでいくということをぜひ考えていただきたいと思います。
さらに、これはやはり、こういうものを取り扱う団体、行政書士会、土地家屋調査士会、測量協会、司法書士会、様々な団体があるんです。こういうものこそ、やはりこういう民間団体の皆さんの力を大いに活用していく必要があると思いますので、その点も検討していただきたいと思います。
地籍調査についてであります。
意義と必要性ということは答弁があったとおりですが、静岡市の進捗率が3%、理由は山岳地帯、森林地帯が多いというような話がありましたが、これは静岡市特有だということであっても、ほかのところでも同様の条件はあるわけです。優先 地域を決めて、これから取り組んでいくということでありますけれども、これもぜひ、もっと力を入れていただきたいと。いつ東南海地震が来てもおかしくないという時期を今、迎えておりますので、そういう点では、やっぱり悠長なことを言っているときではないと思います。私たちはやはり、しっかり東日本大震災の教訓を生かして、この重点的な取組が必要であるということを強調したいと思います。
市長がこの4月で退任ということですけれども、市長ともいろいろ議論させていただきました。ありがとうございました。