◯市川 正
議案第156号令和5年度静岡市農業集落排水事業会計補正予算(第1号)及び議案第157号、議案第158号損害賠償の額の決定についての質疑を行います。
農業集落排水施設の死亡事故について伺います。
昨年9月の台風15号により、静岡市域において大規模な停電が発生しました。葵区平野の平野地区農業集落排水処理施設において、市からエンジンポンプの給油要請を受けた作業員がこの施設に出向き死亡するという事故が発生しました。改めて哀悼の意を表明いたします。
報告によりますと、死亡事故の直接死因は溺死であるが、その原因はエンジンポンプから排気される一酸化炭素中毒とみられるとの説明がありました。こうした類似事故は絶対に起こしてはならないという強い信念から、原因究明と再発防止に全力で取り組むことが求められていると考えます。
後の詳細見分でエンジンポンプのマフラーに腐食による穴が見つかったことから、市は施設管理の不備による瑕疵があったと認め、損害賠償に応じるとしたものであります。人の命が失われた重大事案であり、速やかな賠償はもとより、原因究明と再発防止に全力で当たる、これが大切と考えております。
事故の原因は、エンジンポンプ及び附属機器の整備不良とされておりますけれども、停電により排気装置が作動せず、室内換気が十分でなかったこと、事故当時、複数での対応が言われていたものの、当該施設に出向いたのは死亡した本人だけだったのはなぜか、そうした要因が重なり、重大事故となったものであり、市の施設管理における対応についても十分な検証がなされるべきと考えております。
そこで伺います。
平野地区農業集落排水処理施設の供用開始から事故までの設備更新履歴はどのようだったのでしょうか。
設備の維持・点検が適切に実行されていれば本設備のマフラーの腐食も容易に見つかり、事故前に交換することもできたのではないかと大変悔やまれます。本設備の非常用エンジンポンプについて、どのような内容の点検を行っていたのか、また、なぜその点検ではマフラーの腐食による穴を発見できなかったのか、このことについてお伺いします。
3つ目は、本件死亡事故の発生について、どのような要因があり、どこに瑕疵があると考えておられるのか、市の見解を伺って、1回目といたします。
◯農林水産統括監(大村 博)
損害賠償に関わる3点の質問にお答えいたします。
最初に、平野地区農業集落排水処理施設はいつ供用開始したかについてですが、本施設は平成元年に事業採択を受け、平成5年5月に供用開始しました。
次に、非常用エンジンポンプの更新状況についてですが、作動点検や機器点検の結果などにより、老朽化や機能に大きな問題が発見された場合に更新しています。
本施設では、供用開始から事故発生までに平成15年度及び23年度の2回更新しております。
続きまして、どのような内容の点検を行っていたのかについてですが、施設の安定した機能維持を目的に、民間事業者に業務委託しており、オイル漏れ、充電電圧等の点検と試運転を行う、2週間に一度の作動点検、異音、振動、ポンプの運転確認等の点検を行う、年に1回の機器点検を実施しています。
次に、なぜマフラーの腐食による穴を発見できなかったのかについてですが、点検業者への聞き取りでは、腐食穴のあった箇所は、設置した状態では目視で確認しづらい場所であったため、点検で発見することができなかったとのことです。
最後に、本件死亡事故の発生の要因と瑕疵についてですが、死体検案書によれば、直接死因は溺死、その原因は一酸化炭素中毒です。非常用エンジンポンプの分解調査でマフラー下部に腐食による穴が確認されており、事故現場の地下室に非常用エンジンポンプ以外に一酸化炭素を排出するものがないことから、腐食穴が発生の要因です。
市が、設置から約11年経過し、老朽化した機器であることを認識し、適切に管理できていなかったことが問題であり、公の営造物の管理に瑕疵があります。
◯市川 正
それでは、2回目に移ります。
本件は、本来、業務外の作業であったにもかかわらず、台風15号のさなかであっても市の出動要請に誠実に対応された被害者の身に不運にも起きてしまった事故であります。なぜ人が死なねばならなかったのか、その原因をしっかり究明し、教訓を今後に生かすことが本市に求められています。
今の説明でもエンジンポンプが目視で確認しづらい場所にあったがためにマフラーの腐食穴が見つけられなかったというふうな報告がありました。そうした管理を行った市に責任があるというふうな言い方だったと思うんですけれども、本設備はエンジンポンプが機械装置のカバーの内側に取付けられ、マフラーの腐食が目視によっても確認しづらい位置にあった。点検基準に分解整備などの項目はなかったのか。あるいは当時、当該施設に出向いたのは死亡した本人だけだったとのことでありますけれども、複数で対応されていればこうした異変に素早く対処できたのではないかと大変悔やまれる事例でもあります。
停電時に非常用発電機に切り替えるような市の管理する類似施設の維持管理において─非常用発電機は一酸化炭素を常に排出するということなんですけれども、こうした類似施設の維持管理において人の配置など教訓とすべき点がたくさんございます。
そこで、本事故における再発防止策として、点検基準に分解整備などの項目を加えるべきと思います。
また、地下室の無窓階に設置される当該設備あるいは類似設備においては、維持管理上、複数で対応する、そうしたことで死亡事故は防げたとも考えられますけれども、報告によりますと、その複数人員対応という点は明記されていないのではないかと思います。複数の対応についても明記すべきではないでしょうか。
そこで、今後の再発防止に向け、何を実施したのか、今後の再発防止対策はどのようにしていこうと考えているのか、お伺いいたします。
次に、本設備において、非常用エンジンポンプの給油は、被害者の業務範囲外とのことでありました。台風による全く突発的な事故でありました。これまでの説明で、事故の原因はエンジンポンプ及び附属機器の整備不良とのことでありますけれども、台風による停電で排気装置が作動せず、室内換気が十分でなかったとの説明もありました。施設管理の瑕疵によるもので災害関連死にならないとの説明もありましたけれども、本件死亡事故がなぜ台風による災害関連死とならないのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
以上で質疑を終了いたします。
◯農林水産統括監(大村 博)
今後の再発防止に向け、何を実施したのかについてですが、事故後、市内全ての農業集落排水処理施設の点検を行い、その結果、5施設に排気処理の不具合を確認したため、穴の補修や排気管の修繕等、安全対策を実施しました。そのうち老朽化等による更新が必要な施設が2施設あり、今月中に更新作業が完了します。
あわせて、農業集落排水処理施設の点検項目及び維持管理の運用面の見直しを行いました。
点検項目についてですが、非常用エンジンポンプのマフラー及び排気管の劣化状況の把握を重点点検事項に位置づけ、2週間に1回の作動点検と年に1回の機器点検の中で、目視確認が困難な排気漏れを発見するために非常用エンジンポンプ周辺の一酸化炭素の濃度測定を行うことで、安全面の点検を強化しました。
次に、維持管理の運用面についてですが、エンジンポンプの運転中または運転後に地下室に入室する際に一酸化炭素・酸素警報機を携帯し、安全確認を徹底します。また、各地元の日常管理組合員に対しては、停電時には建物に入室しないこととしました。
今後、二度とこのようなことが起こらないように再発防止を徹底してまいります。
◯市民局長(市川靖剛)
本件死亡事故が災害関連死にならないのかについてですが、国の通知によれば、災害関連死とは当該災害による負傷の悪化、または避難生活などにおける身体的負担による疾病により死亡し、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、災害が原因で死亡したものと認められたものと定義されています。
本件死亡事故の直接の原因は、施設の管理の不備による瑕疵であることから、災害が原因で死亡したものではないため、災害関連死には当たりません。