◯寺尾 昭
今日は2つのテーマで質問いたします。
最初は、中学校の部活動についてです。
部活動は、学校における学習、勉強とはまた別次元の活動として、子供たちの学校生活の意義を一層高めてきたものとして、それを経験した人の一生に様々な影響を与えるとも言えます。思春期の中学生にとっては、人格形成にも大きな影響をもたらしていることは否定できません。中学校の部活動は、2017年度にガイドラインの検討が始まって、若干の経過を経て、2019年度から本格実施されております。その意義について、「部活動のあるべき姿を明確にし、生徒にとって一層有意義な活動とするための指針として、」策定したと、その趣旨を述べております。それから約6年間、このガイドラインに基づいて、部活動が進められてきております。
そして今、再び部活動が大きく変わろうとしている。これまでの部活動ガイドラインは生徒にとって何がよかったのか、教員の負担は本当に軽減されたのか、その趣旨が生かされなかったのか等について明らかにしておく必要があるのではないかと思います。
そこで質問ですが、部活動ガイドラインの実施状況がどのようになっているのか、お聞きいたします。
もう1つのテーマです。
今年4月から介護報酬の改定が行われました。その一環として、訪問介護の基本報酬が2%から3%引下げられたわけであります。近年の訪問介護の利益率が全サービスの平均を上回ったこと、あるいはまた、介護職員以外の職種の待遇改善が優先されたことがその理由となっております。訪問介護の利益率が上がったのは、実は都市部の比較的規模の大きな全国チェーンの事業所であり、多くの小規模・零細規模事業所は、ヘルパーの成り手も少なく、苦しい経営を強いられているのが実情です。これらの事業所は、大手チェーン企業が敬遠する利益の少ない生活援助の訪問介護や独り暮らしの認知症の人を支える困難ケースを引受けているということで、実はこういう方々が介護基盤を支えているわけであります。
東京商工リサーチによると、今年1月から8月までの介護事業所の倒産は114件、これは前年同期の1.44倍で、そのうち訪問介護事業所が約半数の55件、これは前年同期の125%になっております。介護基盤の崩壊の危険が迫っているということが言えるのではないでしょうか。
本市における状況についてお伺いいたします。
引下げ後の市内の事業所の状況はどうなっているのか、実態調査をする考えはないか、まず伺っておきます。
◯教育局長(青嶋浩義)
部活動ガイドラインの実施状況についてですが、令和元年8月から全面実施した部活動ガイドラインでは、部活動を人間形成のための魅力ある教育活動の一環として位置づけ、週3日程度の適切な休養日の設定や生徒の主体的かつ意欲的な取組を支援するための指導基準等について教育委員会が示し、各学校ではこれに基づき取り組んでいます。
ガイドラインの運用以前に大きな課題として上げられていた長時間に及ぶ活動については、毎月、各学校に対して活動予定表の提出を求め、実際の活動日数や時間の管理を行い、適切な活動量であることを確認しています。大会前など週末に時間をかけて練習を行う場合は、次の週の練習量を減らしてしっかり休養を取るなど、生徒の健康を考慮した活動に変わるとともに、顧問の教員の負担が軽減され、働き方改革につながっています。
また、令和6年度の抽出校10校の生徒を対象にしたアンケート調査では、自分の主体性を伸ばすことができたと回答した生徒が9割に達しており、ガイドラインの指導基準に沿って、生徒が自ら目標を見つけ、自分で考えて取り組む活動が進んでいることを確認しました。
◯保健福祉長寿局長(山本哲生)
令和6年度の訪問介護の基本報酬引下げ後の市内の訪問介護事業所の状況と実態調査についてですが、まず、市内の事業所の状況は、基本報酬が引下げられた本年4月1日時点の事業所数は168で、引下げ前の令和5年4月1日時点の169と比べ、ほぼ増減はありません。また、本年4月から8月までの新規指定と廃止の事業所は、いずれも5事業所で、廃止の事業所のうち3事業所が職員不足を廃止の理由としています。
次に、実態調査についてですが、現在、国が実施している令和6年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査において、国が自ら報酬改定による影響を十分に調査、検証するとしているため、本市が独自で実施することは考えておりません。
◯寺尾 昭
2回目であります。
まず、シズカツについてであります。
教育委員会は、中学校の部活動を学校から切離して、地域活動、いわゆるシズカツに移行する計画を進めております。これまでの部活動は、御承知のとおり学校ごとに進められてきております。これからは単独校としてではなく、一定のエリア内に複数校が合同で活動するエリア制も導入される。資料によりますと、現在、学校単位の部活動43校、約430部の部活があるわけですが、これを学校の枠組みを超えて市内15エリア、約200クラブを展開するとしております。部活動は教育の一環として、学校内で顧問である教師の指導の下で行われてきた活動ではなくなるということであります。
質問です。
シズカツへ移行する主な理由は何なのか、またこれまでの教育の一環であった部活動の意義はどうなるのかを伺います。
学校と切離して、部活動を地域活動に移行するとなると、休日を含め、日常の運営責任は誰が持つのか。重大な事故が起きた場合の責任の所在はどうなるのか。こういう点についても明確ではありません。子供のけがや死亡事故などもないことはありません。地域の指導者にお任せだから、学校や教育委員会には責任はないというわけにはいかないわけであります。
質問です。
以上のような点から、シズカツの運営体制はどのようになるのか、伺います。
シズカツ移行後の学校と教員の関わり方についても疑問が残ります。学校としては、地域にお任せだから一切無関係ということにはなりません。そこまでには至らないかもしれませんが、部活動は学校としての活動であるとの意義が薄らいでいくということは否定できないのではないでしょうか。教員にとって負担軽減に連動することは期待できます。学校の授業以外の部活動の場で、教師と子供たちの触れ合いが信頼関係を高め、人間関係を築いてきたことは、多くの人が経験するところであります。シズカツでは、情熱はあっても一定の余裕がある教員でなければ、関わることができなくなってしまうのではないかと危惧されます。
質問ですが、シズカツへの学校と教員の関わりはどうなっていくのか、お伺いいたします。
エリア制になるということであります。エリア内の学校の子供たちが1か所に集まって活動するということになるわけであります。放課後や休日に学区外のほかの学校に行くことが必要になってくるわけです。それでは、その際の交通手段はどうするのか。保護者に頼らざるを得ないことが考えられるわけです。地域への移行は、新たな地域の指導者が今度は指導することになるわけであります。指導者への報酬は全額公費で賄われるのか、保護者への負担はないのか、これもまた危惧されます。
お伺いいたします。
保護者の負担については、どのように考えておられるのか。
エリア制になれば、学校単位ではなく、数校の生徒で1つの種目を行うことになり、今までチームが組めなかった学校の生徒も参加できるようになるというメリットがうたわれております。反面、山間地の学校の生徒が日常的に同じエリア内で活動することが困難であるということも予測されます。山間地ではないエリアでも、学校間の距離に差があります。特に、夕方が早いこれからの冬の季節などには、1か所で活動をやることに大変苦労が伴うということで、これも心配されます。
そこで伺いますが、学校規模や場所に左右されない活動をどのように考えているのか。
次に、訪問介護事業所の実態と支援についてであります。
市内においても倒産した事業所があるのではないかということです。その原因は分からないということでありますが、これをしっかり明らかにしていく必要があるのではないかと思います。これからも地域の介護基盤を支える役割を果たしていけるような支援が望まれるわけです。
そこで質問ですが、市として訪問介護の事業所に対して支援を検討していくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
訪問介護の基本報酬の引下げは、とりわけ小規模あるいは零細規模事業所に深刻な経営危機をもたらし、ひいては地域の介護基盤を崩壊させる危険もあるわけであります。地域の実態を国に伝えるのは、自治体の役割でもあるわけであります。
そこで伺いますが、訪問介護の基本報酬の引下げ撤回を国に求めるべきではないかと思いますが、この点をどのように考えているのか、お伺いいたします。
以上、2回目です。
◯教育長(赤堀文宣)
シズカツに関する幾つかの御質問のうち、私からはシズカツに移行する理由、部活動の意義はどうなるかについてお答えいたします。
令和2年9月に文部科学省から、学校の働き方改革を踏まえた部活動改革として、生徒にとって望ましい持続可能な運動部活動と学校の働き方改革の実現について、指針が示されました。これを受け、本市の現状を整理し、次の3点が課題として上がりました。
1つ目は、少子化に伴い、部員数の減少が進み、チームとして仲間と充実した活動がしにくいこと。2つ目に、競技経験のない顧問教員の割合の増加に伴い、専門的な指導が受けにくいこと。3つ目に、顧問教員の負担が大きいことです。これらの課題の解決のため、本市ではシズカツに移行する検証を始めました。
シズカツは、市、学校、教員、関係団体、地域人材など、静岡総がかりで将来にわたって中学生がスポーツ、文化芸術に親しめる環境を支えていこうとする取組です。学校管理下の部活動から学校管理外のシズカツへ移行されても、部活動の持つ教育的な意義である、目標に向けて自分で考え行動する力である主体性や、挑戦する力や自らを信じる力である可能性、様々な人や集団とつながる力である社会性といった3点を育むことは、大切に引継ぎ、その実施方針などで示してまいります。
◯教育局長(青嶋浩義)
シズカツに関する4つの御質問にお答えします。
最初に、シズカツの運営体制についてですが、シズカツは、部員数の減少や専門的指導の不足など、現在の部活動の課題を解決するため、エリア制の導入と地域指導員の配置の2つの方策により展開します。
1つ目のエリア制の導入は、複数校を活動単位とし、部員数の確保や選択肢の拡充を実現するもので、2つ目の地域指導員の配置は、種目指導の専門性のみならず、教育的な資質を併せ持つ地域人材を育成、配置するものです。
令和5年度と6年度は、市内3エリアの運動系4種目について、休日の活動を教育委員会から複数の民間事業者に業務委託し、シズカツの運営体制の確立に向けた実証を行いました。この中で、高い専門性を有し、日々の活動の中で生徒を直接指導する地域指導員の確保とともに、学校との連絡調整やエリア内の運営を統括する地域マネジャーを新たに配置し、その有効性等について検証しました。
今後、議員御指摘の生徒のけがや事故が発生した場合の対応等も含め、実証の成果や課題等を整理し、シズカツの本格実施に向け、事業の詳細について決定してまいります。
次に、シズカツへの学校と教員の関わり方についてですが、シズカツは学校管理外の活動になるため、原則、学校や教員が運営に直接携わることは想定していません。学校は、シズカツが円滑に運営できるよう、グラウンドや体育館等の学校施設の開放等について協力します。また、教員はこれまでの部活動のように、教員業務として従事することはありませんが、自主的に指導を希望する場合は、兼業の手続等を経た上で、地域指導員として活動できる体制を整えてまいります。
次に、保護者に生じる新たな負担と学校規模や場所に左右されない活動について、一括して答弁いたします。
シズカツを推進する上で、生徒や保護者に生じる新たな負担として、移動、送迎に係る負担と経済的な負担の2つを想定しています。
まず、移動、送迎の負担については、特に中山間地域等では、小規模校の生徒がサッカーやバスケットボール等の団体スポーツに参加できるなど、選択肢が広がる一方で、活動拠点となる会場への移動に時間がかかることが課題として想定されます。これについては、遠距離の会場に移動しなくても、例えばICTを活用することでオンラインによる地域指導員の指導を受けるなど、移動の負担軽減について引き続き研究してまいります。
次に、これまで学校の教員が担っていた指導を外部人材を中心とした専門性を有する地域指導員が行うことにより、新たな経済的な負担の発生も想定されますが、これについても、現在の部活動での負担状況を参考にしつつ、検討を進めてまいります。
◯保健福祉長寿局長(山本哲生)
訪問介護事業所の実態と支援に係る2点の御質問にお答えします。
まず、本市として訪問介護の事業所に対して支援を検討する考えはないかについてですが、現在、本市では既に介護事業所から運営上の基準など、幅広い相談に日常的に対応しているほか、加算取得の要件を満たしているにもかかわらず、事業所の知識不足等の理由により、本来取得できる加算を取得していない事業所に対して、運営指導等の中で取得に向けた周知や助言を行っております。
また、今回の報酬改定において、職員の賃金改善や職場環境の整備を図るための処遇改善加算が拡充されたことから、加算を取得していない訪問介護事業所に対し、加算取得について周知を図るとともに、取得に向けた支援を行っています。
今後も、事業所からの声を丁寧に聞き取り、事業所が円滑なサービス提供ができるよう支援してまいります。
次に、訪問介護の基本報酬の引下げ撤回を国に申し入れる考えはあるかについてですが、本市としては、国において多くの議論を経て決定した介護保険の基本報酬について、撤回を申し入れる考えはありません。ただし、本市でも基本報酬引下げ後に事業者から厳しい現状を訴える声が届いていることから、本年7月に本市の提案により、今回の報酬改定の影響を丁寧に検証し、今後、その結果に基づき、諸所の実情に応じたきめ細やかな報酬体系の構築を検討するよう、大都市民生主管局長会議を通じて国に要望を行いました。また、近日中に大都市介護保険担当課長会議からも、訪問介護員の担い手不足の現状を踏まえ、持続可能な報酬水準とするよう要望を行う予定です。
◯寺尾 昭
3回目は、意見・要望といたします。
まず、シズカツについてでありますが、目的の1つに教員の多忙化解消、負担軽減があるわけです。シズカツにすれば、これが全て解消されるということでは決してないと思うんです。教員の負担軽減という点については、様々な要素があるということでありますから、ほかの要素についても、ぜひ負担軽減のために対策を進めていただきたいと思います。やっぱり、何といっても教職員が足りないと、不十分な状況だということは、今までたびたび私どもも発言してきたところです。やっぱり教職員の増員を基本的に考えていくことが必要であります。
そして、シズカツの趣旨などが答弁されたわけでありますけれども、今、若い方々は新たなスポーツ、ブレイキンだとかローラースポーツだとか、オリンピックでも活躍があったわけで、若い人たちのニーズが非常に多様化しているという点があるわけであります。こういう若い人たちのニーズにどう対応していくのか、シズカツがこれに応えていけるのか、こういう問題もあると思いますので、これからも課題になっていく。そして、このシズカツはスポーツ、運動部の関係がかなり中心になっていると思います。吹奏楽だとか美術部というのが例にもありましたけれども、いわゆる文化系の部活もたくさんあるわけでありまして、そういうところがシズカツの中ではどうなっていくのか。ここはまだ、必ずしも明らかにされていない。ここについても検討が必要ではないかということであります。
そして、中体連ということで、毎年、競技が行われています。中体連は、全国大会まであるわけです。種目としては、20種類ぐらいあると言われております。こういう点で、この中体連をどうしていくのかというところも、シズカツとの関わりが出てくると思いますので、これらも課題としてあるということを指摘しておきたいと思います。
訪問介護については、答弁にもありましたが、中小というより、小規模・零細規模事業所が大変苦労するということであります。市としても、やっぱり引き続きといいますか、しっかり実態調査をして、必要な支援を行っていくことがどうしても必要だと思いますので、この点も指摘しておきたいと思いますし、引下げではなく改善が今こそ必要だということを強調して、私の質問を終わります。