◯4番(鈴木節子君) 私は、日本共産党市会議員団を代表して、上程されております議案第187号静岡地方税滞納整理機構規約の変更の協議について、反対の立場で討論を行います。
まず、滞納整理機構そのものの問題点を指摘しておきます。
この機構は、地方税の徴収強化を目的とし、県と県内すべての自治体が参加をして、昨年1月設立をされ、滞納税金の回収を各市町から引き受け、催告や財産調査、債権差し押さえなど、滞納処分と徴収の研修を共同で行うための団体です。
設立の背景には、政府が三位一体の改革で地方交付税を削減し、地方公共団体財政健全化法の制定により、地方財政の監視を徹底し、さらに地方自治体が徴収を強化するよう促す機械的な徴収強化の誘導策によるものです。
問題の第1は、日本国憲法の原則からの逸脱という点です。滞納整理機構設立の効果として、移管予告効果が上げられていますが、滞納者に対して滞納税金を払わないと機構に回す、それでもいいのかと、催告書の通知を送りつける、おどし効果です。移管予告効果は、徴収実績の9割にも及んでいます。地方自治法第1条の2は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」とうたっています。憲法のもとにおける徴収行為は、人権を保障する内容でなければなりません。住民を催告書で威圧し、おどすような行為は、滞納者の人権を侵害し、住民の福祉の増進を図る行政の責務からも逸脱しています。
問題の第2は、滞納者の生活を著しく困窮させている問題です。地方税法は、滞納者に次の1つでも該当する事実があると認めるときは、滞納処分の執行を停止することができるとしています。
1つ、滞納処分をすることができる財産がないとき。2つ、滞納処分によって生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき。3つ、所在と滞納処分する財産がともに不明のとき。以上3点です。
この要件を充足しているにもかかわらず、執行停止をせず、安易に滞納整理機構に取り立てを依頼することは、自治体として行政の不作為にも当たります。
本市の処理実績は、平成20年度移管された150件のうち執行停止は66件、全体の44%です。本来なら、整理機構に送る前に滞納世帯の生活実態を十分調査し執行を停止した上で、事業の継続や生活再建に向けた援助を行うことが行政の責務です。
しかし、執行停止要件を充足しているかどうか見きわめもせず、安易に整理機構に送る行為は、滞納世帯の生活を脅かす行為です。滞納整理機構への事案引き継ぎに際しては、市長は滞納処分の執行停止の3要件を満たしていないということに責任を持つべきです。
問題の第3は、徴収強化のやり方です。移管された150件のうち債権や不動産の差し押さえは101件、67%が差し押さえられています。まず、差し押さえありきの強権的姿勢で、経済不況に苦しむ住民や、払いたくても払えない住民への配慮がないばかりか、納税者の保護を厳格に守るべき行政の姿勢は、見受けられません。
以上のように、滞納整理機構は、納税者の立場で対応を考える知識も時間も与えず、滞納処分など強制執行を進め、税収を上げることのみを目的とした徴収強化の機構です。
今回の議案は、研修内容を徴収以外の課税にまで広げ、徹底した滞納処分、差し押さえを強行するための規約変更です。
研修を受けた職員は自治体の職場に戻った後、課税の根拠から折衝の仕方など、徴税強化のためのノウハウを関係部署に広める役割を担い、徴税強化に拍車をかけることにつながります。
また、軽自動車税と自動車取得税まで業務対象を広げることも認められません。
構造改革により、格差と貧困が広がるもと、年収200万以下のワーキングプアは、1,000万人を超えています。かつ、昨秋の経済危機により、解雇・失業も広がり、中小零細業者の倒産・廃業も進んでいます。
また、低所得世帯や高齢世帯への増税が次々に行われ、これらの方々が新たに課税対象に広がっています。低所得世帯に対する課税強化は、国保料・介護保険料にも二重、三重の負担強化になりました。滞納世帯は、地方税だけが滞っているのではなく、国保料や水道料金など、公共料金も払えない事態が広がっています。担税力を超えた重い負担は、どんな制裁措置を加えられても払えません。
行政が行うべきは、徴税強化ではなくて憲法25条に保障された生存権達成のために、憲法30条の納税義務を保障する、あるべき行政事務に立ち返ることが必要です。
大企業には減税の一方で、庶民への大増税により、住民は収入減少と負担増で、納税能力が急速に減退し、貧困による滞納が後を絶ちません。
今必要なことは徴収強化ではなく、滞納者の生活再建と納税の資力を回復させる業務への転換こそ必要です。
今、自治体が行うべきは滞納整理機構に送るのではなくて、滞納世帯の納税能力を判定し、支払い能力があるものと支払い能力のないものの区別を明確に区分し、徴収緩和の方向へ行くのか、滞納処分の方向か、適切な判定をする業務へ転換することです。このことこそ、住民福祉を増進する自治体としての責務です。
そのためにも、滞納者であっても一人の住民として、配慮ある対応で、生活実態を踏まえた適切な滞納整理を行うための地方税法や国税徴収法など、専門的知識を身につけた正規の税務職員の増員が自治体には求められております。
住民の生存権保障、納税者の権利保護を厳格に守る行政へ転換すべきと主張し、反対討論といたします。