いじめ防止対策と全国学力テストについて質問

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DSC_0349◯39番(山本明久君) 私は、今、教育行政のあり方が問われている問題として、いじめ防止対策と全国学力テストについて質問を行っていきます。

日本政府が子どもの権利条約を批准して約20年になりますけれど、条約履行に関する第1回目の政府の報告書に対して、1999年に国連子どもの権利委員会が表明した「懸念と勧告」ではこう指摘しています。極めて競争的な教育制度が与えるストレスにさらされているため、子供が発達上の障害にさらされているとして、学校における暴力の頻発や体罰が広く用いられていることと、生徒間のいじめが多く存在しているという警告が発せられています。

本来なら、専門機関からのこの指摘を真摯に政府が受けとめて、抜本的な対策を講じる必要がありました。しかし、文科省は逆にこの後の2007年から、かつて競争が行き過ぎたということで廃止されていた学力テストを復活させましたが、そのときの文科大臣は、教育にはもっと競争が必要だという考えからでした。ですから、一層この競争主義が強められて、子供のストレスを増幅させて問題を深刻化させてきています。いじめも子供のストレスのはけ口として、ゲーム感覚やネットいじめなど、陰湿化したり、誹謗中傷で悪質化したり、携帯で24時間化するという、自殺に追い込むような深刻な事態を生んできています。これは社会の病理やゆがみの反映でもあると私は思います。

そうしたことも踏まえて、まず、いじめ対策についてお聞きしていきます。

こういう痛ましいいじめ事件が広がる中で、ことし9月から施行されたいじめ防止対策推進法では、いじめを禁止するとした上で、懲らしめるための懲戒、これが強調されて、いわば厳罰化されて、さらに、子供にも通報・相談の努力義務がこの法律で課される内容になっています。

これらの規定は、本来の学校での教育力、つまり子供同士や教師集団と保護者が力を合わせて、そして、地域社会全体の教育力などでいじめを解決する方向とは違って、学校は子供同士が監視し合い、通報し合うような暗い場になってしまうおそれがあるんじゃないかと、これはいじめの解決とは逆行するんじゃないかというふうに私は懸念するわけです。この点、教育委員会は、教育への影響について、これらの規定が本当に適切なものと言えるのかどうか、教育的な立場から考えをお聞かせいただきたいと思います。

次は、教育的立場から見ると、もう1つの危険な流れが広がっている全国学力テストの問題についてです。

文科省は、先週、来年からのテストにおいて、市町村教育委員会が学校別の結果公表をできるようにするという方針転換をしました。流れはあったわけですが、この間、毎年公表をすれば序列化は固定しないという意見だとか、大人社会に競争があるんだから学校でも競争が必要だというような意見が、いわば公表を合理化する意見が報道などされていますけれど、しかし、先ほど見たように、国連の専門機関から見た意見とは大きくこれらの意見は逸脱するものになっています。

もともとこのテストの目的というのは、児童生徒への教育指導の充実や学習の改善に役立てるというものですから、テスト結果を世間に公表するという必要性はそもそもないはずのものです。

そこで、お伺いしておきますが、市長や教育長はこれまでも、テスト結果は公表しないという立場を表明していますけれど、文科省のこの方針転換のもとでもこれまでどおり学校別には公表しない、学校にもさせない指導をするという原則を堅持していくのかどうか、この点について、まず、考えをお聞きしておきます。

 

◯教育長(高木雅宏君) 全国学力・学習状況調査結果の公表についての御質問にお答えしたいと思っております。市長と私の見解は同じであると認識をしておりますので、私が述べさせていただきたいと思っております。

調査の目的は、御指摘のとおり、調査結果を把握、分析し、教育活動の成果と課題を検証して、教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てることにあります。市町村別、学校別の点数による公表は、本調査で測定できるのは学力の一部であるにもかかわらず、市や学校全体の評価とみなされて、市や学校間の序列化や過度な競争を助長してしまうことが考えられます。その結果、市や学校と保護者、地域との信頼関係が失われてしまうことや、学校教育の目的がよい点数をとることのみに偏重されてしまうこと等の大きな弊害が出るおそれがあります。したがいまして、市町村別、学校別の点数による公表は行うべきではないと考えているところでございます。

ただし、各校では、今後とも調査結果をもとに課題を分析し、特徴的なあらわれや学習状況の改善にとって必要な内容については、メッセージを込め、家庭・地域に公表してまいる所存でございます。

以上でございます。

 

◯教育次長(望月和義君) いじめ防止対策推進法の教育への影響についてですが、いじめ防止対策推進法により、市、学校、保護者がそれぞれの責務を果たし、児童生徒が安心して学習、その他の活動に取り組むことができることなどを旨といたしました基本理念に基づいて指導してまいります。したがいまして、学校において厳罰化に傾くことはございません。

いじめは、どの子にもどこでも起こり得る問題でありますので、児童生徒みずからがいじめの問題について考え、いじめのない、よりよい学校生活にしようとする態度を育成してまいります。また、自分の人権とともに、他者の人権も守ろうとする児童生徒を育成していくことにより、いじめ防止対策の推進を図りたいと考えております。

今後も、いじめの未然防止、早期発見、早期対応、関係機関との連携を柱といたしまして、いじめ防止に努めてまいります。

以上でございます。

〔39番山本明久君登壇〕

 

◯39番(山本明久君) まず、いじめ防止対策についてです。

議員立法であったこの法律の審議の際に、日本弁護士連合会は意見書でこう指摘しています。いじめ防止対策として逆効果になりかねないと。今、教育委員会からも、厳罰化させない、みずから人権を守ろうとする子供を育てていくところに力点を置くということを言われていました。しかし、法律の規定では、先ほど指摘しましたように、通報の努力義務なども子供に課していくという危険な側面について、教育委員会は教育的な配慮をするという表明をしてほしかったんですが、そこはまた配慮していっていただきたいと思います。

それで、今回の法律の具体化については、今言いましたような危険な側面と、実効ある取り組みに活用できるような課題もあります。文科省はこの10月に、いじめ対策基本方針を策定して、自治体や学校にこの方針を参酌するように求めました。上から押しつけちゃいかぬという立場なんですが、具体的には、自治体による教員の配置、あるいは、専門的で適切な教員の養成、そして、研修の充実と実施計画の策定やいじめ防止方針の策定、さらには、いじめ防止対策連絡協議会の設置などを求めています。

これらについて本市としてどのように検討がされていて、具体化がされていくのか、進められていくのかについて明らかにしておいてください。

また、教員やスクールソーシャルワーカーや専門医師、法律家などとの協力体制の構築も大事だと思いますが、この点についてはどう考えているのかも示しておいていただきたいと思います。

これらはいずれも現場教師の意見や子供の意見などもしっかり聴取した上で、真に実効あるものにしていく必要があると私は思います。ですから、こうしたときこそ、先ほど述べた子どもの権利条約で規定されている子供の意見表明権というのを活用すべきだと考えます。

2点目は、全国学力テストについてです。

公表についての考えは、基本的に公表しないという方向での立場が表明されたと思います。

学力・学習の状況調査ということですから、学力の点数だけの問題では当然ありません。大事なことは、子供の基礎学力の向上にとって本当に必要なのかどうかと議論する場合に、求められるのは、今の教育基本法で規定されている教育の目的や教育の目標の実現にとって、求められる点は何かという観点をつなぐことが不可欠だと思います。

教育基本法では、教育の目的について、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた、心身ともに健康な国民の育成を期するというふうに述べられていて、そのもとで、目標として、幅広い知識と教養を身につけることや、個人の価値を尊重してその能力を伸ばす、創造力を培う、正義と責任や男女の平等などをしっかり達成するようなものだと規定されています。つまり、子供の発達段階に即して系統的に学習内容を提供して、教育目的の実現に必要な基礎的・基本的な知識などは特に時間をしっかりとって、どの子供にも身につけられるよう、つまり、理解できるように指導することが学校教育に求められていると私は思います。

しかし、結果を公表するという流れの中で、全国テストの結果が最下位だから、脱出するのが至上命題といって、テストのためのテストをするというような流れが一部ありますけれど、こういうことで競争序列化を、心配あるものを子供に押しつけるというのは私は間違いだと思います。

そこで、テスト結果を教育指導の充実や改善に役立てるというなら、その取り組みを具体的にどう進めているのかという点についてもお聞かせいただきながら、教育委員会が、この教育の目的・目標の実現にとって求められている学力というのはどういうものなんだというのもしっかり市民に示しておいていただきたいと思います。

以上、2回目です。

 

◯教育次長(望月和義君) 教育行政に係ります2点の御質問にお答えいたします。

1点目のいじめ防止対策推進法に規定されました、いじめ防止対策のさまざまな施策についてですが、まず教員の配置につきましては、25年度から、こころの教育推進事業として非常勤講師を配置しております。

次に、国のいじめ防止対策推進法を受けまして、静岡市いじめ防止等のための基本方針を3月をめどに策定をいたします。基本方針には、いじめに対応する教員の養成、研修等の実施計画を盛り込み、研修会を計画的に実施いたします。また、児童生徒の居場所づくりときずなづくりの2点をいじめ防止の重点といたしまして、教員の資質向上を図ってまいります。

いじめ防止対策連絡協議会の設置につきましては、既存の協議会を活用いたしまして、本市のいじめ防止などの対策について協議を行う予定でおります。

また、いじめの問題に組織的に対応できるよう、教員・スクールカウンセラー・医師・法律家などとの連携体制をさらに強化していきたいと考えております。

次に、2点目の全国学力・学習状況調査に係ります御質問です。

まず、全国学力・学習状況調査結果を教育指導の充実や改善に役立てる取り組みをどのように進めているのかについてですが、本市では、調査結果の課題に対しまして、各校で取り組むべき内容を示し、市内全ての担当者を集めて研修会を実施し、よりよい指導のあり方を周知しています。

また、教育指導の充実を図るため、大学教授と指導主事の分析をもとに、指導主事の学校訪問を通して、読み取る力や書く力の育成を中心とした教員の授業力向上を目指し、指導・助言を行っております。

さらに、各校では、調査結果の分析を行い、明らかになった課題について改善計画を立て、学力や学習状況の改善に努めております。

次に、教育の目的や目標の実現にとって必要な学力についてですが、学校教育法第30条第2項に示されております、基礎的・基本的な知識・技能、思考力・判断力・表現力等及び主体的に学習に取り組む態度の3つであると捉えております。

以上でございます。

〔39番山本明久君登壇〕

 

◯39番(山本明久君) いじめ防止対策ですけれど、教育委員会も言われたように、他人の人権を守るということが大事だという点におきましては、ある教育学者は、この解決の基本として、子供が自分自身を肯定すること、要は自分に価値があるということに気づかせることが大事だということ、これを教育活動の基本に添えるべきだという考えがありまして、私もそのとおりだと思います。それが他人の人権尊重というところに結びついていくと思います。

その点では、今、各地においていじめを防ぐ主役は子供だという取り組みが広がってきていて、これは非常に大事だなと私も思います。先週日経の報道がありましたけれど、ある自治体では、中学生が小学校に出前講座に出かけてみずからの体験を語ったり、別の県では、子供たちが出演したDVDを作成するということでいじめ防止をみずからが訴えている。

そういうように、いじめ問題の本質的な解決をしようとすれば、一人一人の子供が人として価値があり、大事にされるようにするために、子供自身による解決能力を向上させる取り組み、当然、地域社会がいじめをなくすという地域力の発揮も必要ですけれど、教育委員会は、その点どのように考えて取り組もうとしているのかについて、考えをお聞かせいただきたいと思います。

学力テストの問題ですが、これは当初から数十億円もかけて、集計は業者丸投げということでやられているわけで、子供に基礎的、基本的な知識を身につけさせる上で本当に有効かどうかという点を見れば、今、文科省が言うように、学校別に結果を公表して、教育委員会も心配されるような序列化競争を生むということになっていけば、非常に有害なテストになるということで、こうなれば私はもう廃止すべきだと、教育委員会も文科省に求めるべきだと思います。

大事なことは、どの子供にも求められる基礎学力を身につけさせるという上で、教育諸条件の整備というのが本当に不可欠です。そのための教育予算の増額というのは切実に求められています。

 

◯副議長(田形清信君) あと1分で終了してください。

 

◯39番(山本明久君)(続) ですから、全国学力テストを実施するよりは、この努力を自治体と教育委員会にぜひ要望しておきますが、1点聞いておくのは、一人一人に十分に目が行き届き、丁寧に指導するという点では、教員の増員や少人数学級にしていくということが求められてくると思います。先ほど、いじめ対策として、教員の増員を非常勤で配置するということですが、やっぱり正規職員で教員を配置するということが本当に必要だと思いますが、どうお考えになっているのか、考えを示していただきたい。

今、いじめ問題でも、学力テストの問題でも、首長による公表ということをきっかけに、教育委員会そのものを首長の下請け機関にしていくという動きが強まっています。この動きには厳しく批判をしておきます。

以上です。