◯31番(山本明久君) 私は、静岡市内の中小企業に対する支援策について質問します。
今、デフレからの脱却をどうするかというのが政治経済の中心ですので、少しだけ議論に加わりますけれど、安倍政権は、デフレはマインドの低下や固定化に要因があるという立場から、インフレ期待をつくり出せばものが売れるようになり、デフレを克服できると本気で考えているようです。病は気からというようなものですね。しかし、これは大きな誤りだと私は思います。デフレの真の要因は、やっぱり国民の所得が減って、消費が落ち込んでいるからです。ですから、このもとで幾らインフレ目標を掲げても、物を買うマインドが起きるはずはありません。所得の引き上げ目標こそ今必要だという立場です。
今の日本は、先進国の中で、長期にわたって国民の所得が減り続け、経済が停滞、後退するという異常な国になっています。内閣府のデータでは、1997年から、働く国民の雇用者報酬──これは賃金と事業主の保険料負担ですね、これが14年間減り続けて、88%に落ち込んでいると。同じ期間に、経済危機と言われる欧米諸国ですら、雇用者報酬は1.3倍から1.9倍にふえています。GDPで見ても、同じ期間、日本は90%に落ち込んでいるけれど、欧米諸国ではやはり1.4倍から1.8倍に、成長してきていると。企業はどうかというと、財務省のデータですけれど、同じ期間に、企業利益は1.6倍になっているわけです。
安倍首相は、企業の利益が上がればやがて賃金も上がると言っていますけれど、そうなっていないのが日本なんですね。普通じゃないんです。なぜかというと、寺尾議員も指摘したように、これは1つには、大企業が内部留保を利益としてため込んでいると。この活用が今、国会でもマスコミでも広く議論され始めていると。
もう1つの要因は、やっぱり日本では労働法制が規制緩和されて、非正規雇用が労働者の35%を占めるという異常なふえ方で、欧米諸国はそういうことをさせないルールがやっぱりあるということだと思います。
ですから、このデフレ脱却というのは、国の問題でもそうですが、静岡市内で身近に引き寄せて考えてみると、市内の大手企業の内部留保を調べてみると8,000億円ぐらいあるわけですね。これをその企業の労働者の賃上げに使ったり、その企業と取引のある中小企業の下請単価を上げたり、仕事づくりに内部留保を取り崩して回していけば、これはお金が回っていくわけですね。中小企業の賃上げにもやっぱりつながっていくと。中小企業の賃上げという場合は、当然、政府の支援が必要になってくると思いますけれど、そういうふうに考えてみると、今、デフレからの脱却という場合には、安倍政権には三本の矢を打たせてはだめだと私は思います。
そうしたことも踏まえて、質問のテーマに入っていきます。
1999年に中小企業基本法が改正されて、自治体に対して、中小企業政策の策定や実施の責務というのが課されました。中小企業の存在と役割というのは、自治体にとっても市民にとっても極めて大きなものがあるからですね。そうした経過から、この間、全国の県市レベルの自治体においては、地域の実情に合わせて中小企業振興条例の制定が進んできているわけですね。本市でのその条例制定については、党の代表質問に対して、直ちに必要ではないというような答弁でした。
この問題はまた後に聞くとして、その問題の前に、この間、本市として中小企業政策の策定と実施についてはどのように取り組んできたのか、また、市内の中小企業の現状と政策課題についてはどのような認識でいるのかということをまずお聞きしておきます。
◯経済局長(大場知明君) 中小企業政策の策定と実施、それから中小企業の現状と政策課題についてお答えいたします。
本市の中小企業政策の策定と実施状況につきましては、平成22年3月に、総合計画に基づく産業振興プランを策定いたしました。このプランに基づき、市融資制度における中小企業者の資金繰り支援、中小企業支援センターにおける経営改善に向けた相談、産学交流センターを中心とした産学官の連携、SOHOしずおかを中心とした創業支援などの施策を実施しております。
続いて、中小企業の現状でございますが、我が国の経済情勢は、一部に改善の兆しも見え始めておりますが、市内の中小企業につきましては、依然として厳しい状況に置かれているものと認識しております。
また、中小企業が抱える課題といたしましては、若年労働者の不足、製品開発におけるノウハウ不足、後継者不足などがあると考えております。こうしたことから、企業と学生との人材マッチング事業、新商品開発等の支援事業、事業承継、金融支援事業などを実施して、中小企業の振興に向けて取り組んでいるところでございます。
以上でございます。
〔31番山本明久君登壇〕
◯31番(山本明久君) 地域経済の活性化というのは、地域内で、賃金も上がって、消費が進んで、内需も拡大して、中小企業の生産が上向いて、企業の利益につながっていくと。そして、地域内で投資が拡大して、雇用も拡大して、人も物もお金も地域内の資源が地域で回っていって、拡大再生産が進んで、その結果、市の税収もふえていくと、そういう姿として描けるんじゃないかと思います。
そういうことを絵として描いた場合に、本市が取り組んできた施策が本当にそういう状況をつくり出してきているかどうかという検証がやっぱり必要じゃないかと思います。
確かにいろいろ施策は打ってきていますし、融資制度の拡充も提案されてはきています。一定の役割を果たしていることは間違いないんですが、しかし、やっぱりパンチがないんじゃないかと感じるわけです。
それは、中小企業が地域の経済を支えているもとで、地域の経済そのものが、これは当然、国の施策の関係もありますが、非常に厳しい状況に追い込まれていると。そのもとで、中小企業を主役に据えて、市民と中小企業ですね、行政は施策でしっかり実態に見合った支援をするということが、今、改めて必要じゃないかと私は思います。
ですから、市にこれから求めたいことは、具体的にそういうパンチある手を、現状を打破できるような手を打てるかどうかということで、私が提起したいのが、そういう市の課題を明確にするために、ここでこそ職員が現場に出かけて、市内の中小企業──中小企業といっても4人以下の従業員の場合が6割を占める実態ですので、こうした企業の悉皆調査をぜひ職員が足を運んでやってもらいたいと思うわけです。市は今、サンプル調査で景況調査を実施しているようですけれども、さらに実態を多面的に、しかもリアルに把握できるように、この調査自身を抜本的に強化し、充実させて行う必要がまずあると私は思いますが、どのように考えるか、これが1点目。
2点目は、具体的な中小企業支援の仕事づくりの対策として、我が党が代表質問でも求めたように、住宅リフォームへの助成制度が、私は、手としては大事だと考えるわけですけれども、代表質問での市の答弁は、活性化策としてそれは考えていないということでした。全国では、活性化策として効果があるということでこの助成制度が広がってきているわけですが、なぜ本市がそういう立場に立てないのかということなんです。
参考に、静岡県が実施している住宅リフォーム支援事業を見てみますと、高齢者世帯のリフォームに15万円、県産材を床や壁に使えば15万円助成が受けられて、併用すれば最大30万円だということなんですね。この制度の案内によれば、キッチンから浴室、リビング、ダイニング、間取り変更、全面改装というふうに、リフォーム事業というのは非常に裾野が広くて、工事の内訳も、解体から内装、建具、給排水、電気設備など、幅広い業者の仕事づくりになるということです。
県の今年度予算は、高齢者型が1,700件と県産材型が600件ということで、枠はもうすぐいっぱいになりそうだという状況なんですけれども、仮に合わせて2,000件の助成がされるとして、1件当たり15万円を活用したとして、リフォーム事業1件平均180万円とすれば、3億円の助成金で36億円の仕事が生まれると。12倍の仕事が助成額に対して広がっていくわけですね。重要なのは、さらにこれが波及効果を生んでいくということだと思います。
静岡県は木造住宅耐震補強の助成も実施していますから、この補強助成というのは、防災対策と経済対策という一石二鳥の対策なんですけれど、住宅リフォームもこれとセットで活用すれば、もっと大きな仕事づくりになって、それが雇用拡大にもつながって、賃上げや消費のプラスにもなっていくと。私は、この住宅リフォームの助成事業の効果というのはこういうふうに見ているわけです。
市は、経済活性化策としてはやらないという、現時点での立場なんですけれど、しかし、そうは言っても、県が行っているこうしたリフォーム助成制度の中小企業への仕事づくりだとか経済波及効果については、そもそもどういう認識でいるのか、これをお聞かせいただきたいと思います。
これで2回目です。
◯経済局長(大場知明君) 中小企業支援策に係る2点の御質問にお答えいたします。
まず、景況調査についてお答えいたします。
景況調査は、市内の景況をその都度迅速に把握するため、調査対象や調査内容の設定を適正に行う必要がございます。本市では平成23年度から、市内企業1,000社に対し、景況感や今後の見通し、経営上の問題等についてアンケート調査を実施しております。調査は、四半期に1回、年4回実施しております。毎回50%以上の回答を得ております。調査先は大企業から零細企業まで幅広く実施しており、市内景況を把握するために十分なデータが得られているものと考えております。したがいまして、当面、引き続き、現在の運用のまま調査を実施していきたいと考えております。
次に、静岡県が実施している住宅リフォーム助成制度の経済波及効果、そして、それに対する認識についてでございます。
静岡県は、住宅リフォーム助成制度の経済波及効果について、平成24年度分で約107億円の経済波及効果があると公表しております。同助成制度の目的は、市民の住環境の向上を図ることが第一でございまして、それに付随して地域経済の活性化が図れるものと認識しております。
以上でございます。
〔31番山本明久君登壇〕
◯31番(山本明久君) リフォーム助成制度についてです。
これは今、住宅リフォーム助成を実施する自治体が県レベルでは40を超えてきていて、市レベルでは500を超えて広がってきています。その理由は、経済波及効果が非常に高いということで、期間限定だったのを延長してということになってきているわけですね。助成制度は、やっぱり仕事づくりの呼び水の役割を果たしているということです。
市の県事業に対する評価は、目的が住環境の改善なので、107億円の波及効果は付随したおまけだみたいな認識でどうもいるような話なんですけれど、仮に付随してはいるにしても、今、資金繰りの面やら、仕事がなくて、本当に売り上げが3割、5割落ち込んで、存亡の危機に陥っているという中小企業がたくさんいる中で、打てる手は打っていこうという姿勢では、少なくとも、市の経済政策を担っているところの考えとしては、極めて不十分じゃないかと私は感じたわけです。
県の107億円に対する評価自身は言及がありませんでしたけれど、私たち党市議団も、仮に本市でこの制度を導入した場合に、経済波及効果がどうなるんだというのを試算してみました。仮に上限30万円の助成金として、この間、耐震補強工事、10年ぐらいで3,500件ぐらい進んできていますから、この件数を仮に施工したとして、1件当たり工事費の平均は、先ほど同様180万円としていけば、直接生まれる事業費は63億円ということになるわけですね。
この額から直近の2005年度版の本市の産業連関表に基づいて経済波及効果を試算していくと、第1次と2次の生産誘発効果として21億円が関連産業に広がって、合計94億円の生産誘発効果となっていきます。助成額は30万掛ける3,500件の10億5,000万円ですから、9倍の仕事づくりということになるわけです。
ここにとどまらずに、さらに、これを担った企業のもとに落ちるもうけですね、これが47億円。雇用者所得が32億円ふえて、雇用が6,000人生まれると。結果、市の税収は、法人市民税と個人市民税で約1億円と。これは数年かけてということなんですが、そういう波及効果がやっぱりあるわけですね。
単に目的の1つが住環境の改善、それはそれで必要なことですから、しかし、市が考えるべき今の中小企業の環境のもとで、打つべき経済対策として、こうした効果があるものも考えてみる必要はあるんじゃないかということなんですね。経済活性化策としてはやらないという考えなんですね。
ですから、ここは、住環境改善としてならやるのかというのはあるにしても、しかし、こうした意義と効果を実際リアルにつかめれば、これまでの考えを見直す踏み切りになるんではないかと私は思うわけです。本市で実施した場合に、どれくらいの経済波及効果とか需要拡大、中小業者の仕事づくりになるのかという経済政策として試算や調査もしてみればどうかと提起したいと思いますので、これについての考えを示していただきたい。これが、中小企業の仕事づくりの支援策の1点目です。
もう1つは、中小企業の支援策として重要なことは、やっぱり資金繰りを支援するということです。先ほど、実態調査でアンケートをやっていて、一定景況はつかまれているから、もうそれ以上はやらないという答弁でした。しかし、そんなことでは、資金繰りの大変さだとか、恐らくアンケートにあらわれない部分は絶対つかめないと思います。
市長、ここは、経済の担当部局がそういう考えであれば、市長自身が現場へ出かけろと言うなら、やっぱり中小零細企業のところへ職員が足を運んで、仕事の回り状況から、資金繰りから全部、生々しい声を直接見聞きするように促してはどうかと、その必要はあると私は思うんです。
政府は、中小企業金融円滑化法を3月で打ち切るということになってきています。金融庁は金融機関に対して、条件変更とか資金供給をできるだけこれまでと同程度にやりなさいという指導は、指導というか要請をしているみたいですが、しかし、市としても可能なことはこの面でやっぱりやるべきだという提起なんです。
ですから、具体的に聞いておきたいのが、この円滑化法がなくなるというもとで、市が行っている制度融資についても、従来の枠を広げるとか、中小業者を支援するという立場から、市税の完納条件を緩和するとか、利子補給の拡大ですね、これは私としては無利子化を求めたいわけですが、しかし、ともかくも、困っている人は、元金を払えずに利子の分だけということでやっていて、それも大変だということがあるわけですから、利子補給の拡大というのも大事な取り組みだと思います。
それから、さらに、信用保証がついていますから、信用保証料の助成なんかも思い切ってやっていただきたいし、市の制度融資と金融プロパー融資がもし一本化して、借りかえられることで企業が救われるなら、そういう一本化も、金融機関と協調して借りかえの制度をつくればどうかと思います。資金繰りは命綱ですので、これについての市の考えをお聞かせいただきたいと思います。
私も先日、ある中小企業の経営者から話を聞いたんですが、せっかく設備投資をしたんだけれど、売り上げが落ち込んで、もう払えないと、もうだめかもしれないという話をしていたんですね。円安で燃料費が高騰して大変なところもたくさんあります。こういうところを市としてもしっかりと、これまでの枠を越えた支援をすると。
最後に、中小企業振興条例の制定ですが、直ちに必要がないということなんですが、聞きようによれば、情報を集めて、必要だと判断するという時期が来る可能性があるというふうにも受けとめられます。中小企業の振興条例については、中小企業を支援する必要性があることや、姿勢を明確にすること、理念、方向性を明示するところに意義があり、効果的だと思いますから、条例制定についてどう思うか、お聞かせいただきたいと思います。
以上です。
◯経済局長(大場知明君) 中小企業支援策に係る3点の御質問にお答えいたします。
まず、住宅リフォーム助成を実施した場合の試算についてでございます。
地域経済の活性化を主眼に置いた住宅リフォーム助成制度試算については、現在のところ実施する予定はございません。
次に、中小企業金融円滑化法終了後の対応についてお答えいたします。
本市はこれまで、平成20年度のリーマンショックの経済危機に伴う景気変動対策資金を、また、平成23年度には、東日本大震災の発生に伴い災害関連融資制度を創設し、臨時的に特別な対応をとってまいりました。
このたびの中小企業金融円滑化法終了に際しまして、新たに経営力強化支援資金を創設いたしまして、みずから事業計画を策定し、意欲的に経営改善に取り組む中小企業者に対する支援を実施いたします。
なお、融資制度における対象者、利率等の諸条件につきましては、利用しやすい制度とすることを念頭に、金融機関や静岡県信用保証協会と協議しながら、適正に制定しているところでございます。
最後に、中小企業振興条例についてお答えいたします。
昨日も御答弁いたしましたが、現在、市では、定期的に開催している中小企業団体との意見交換会の中で、市としての理念、姿勢、方向性を含めて話し合いを行っているところでございます。中小企業振興条例を制定する場合は、市の責務とともに、中小企業者の役割や努力義務についても規定することが想定されます。その場合、中小企業の皆さんに、受け身ではなく主体的に取り組んでいただく必要があると考えており、今後とも関係団体との情報交換に努めてまいります。
以上でございます。